想像で創造する女神1
私のお父さんとお母さんは下位世界の創造主だった
本を書き、その中に世界を創造するという力を持った創造主
私を生み出すときに全ての力を私にくれて消えてしまった
私は両親に会ったことがない
でも、その愛を知っている
メシア様から送り出されて数日、私は輝かしい太陽が三つある世界に立っていた
灼熱のような暑さだけど、私の力の前にはその熱も心地よい風になる
「クリエイト、冷風」
熱波を冷たいそよ風に変えて吹かせた
肌をじりじりと焼いていた熱波は私をさわやかに包み込む風となった
「さてと、ルーナって子を探さなくちゃ。 問題はこの世界にいるかどうかなのよね」
誰に言うでもなく自分への確認のための独り言
「クリエイト、水」
空気中からわずかな水分を集めて作り出した水
この辺りではすぐに蒸発するみたいだけど、私の作り出した冷風で水は蒸発することなくとどまる
空中に浮いたその水の玉をすすりつつ歩みを進めていく
「街、見当たらないなぁ。 生き物の気配も小動物くらいしか感じないし」
そう、この灼熱の大地には生き物の気配が乏しかった
滅多に雨が降らないのかもしれない
それにあの真上にある三つの太陽がこの地を焼いているせいで、水分はすぐ蒸発する
とても生き物が住める環境じゃないもの
「クリエイト、地図」
ここはこの世界の地図を作り出しておきましょう
自分の力ながらどういう理屈か分からないけど、地図を想像して創造するとその世界でのちゃんとした地図になる
範囲は半径3キロ、歩くたびに地図自体が書き換わっていく便利な機能付き
「うーん、もうちょっと歩かないといけないかな? クリエイト、機械馬」
機械馬とは私が想像で作ったその名の通りの機械で出来た馬
私の力はまだまだ弱いから生物を作ることはできても数分と持たない
ただ、その生物は消えるんだけど、もう一度作り出せばその時の記憶、性質を持って再び生まれてくれる
そう、私の創りだす生物はちゃんと成長もしてくれるの!
でもこんな熱い砂の上に生物なんて出したら可哀そうだもん
だから暑さを全く感じない機械馬を出したの
「あ、何か近づいてきてる」
改めて目を落とした地図には何か大きなものがこちらに向かって急速に接近しているのが見える
多分巨大生物。 魔力は感じないから魔物じゃない
「襲って来るなら…」
やがて地面が揺れ始めてその生物が姿を現した
巨大なワーム型の生物で、大きな顎をキシキシと打ち鳴らしている
世喰いに比べたら全く怖くない
「おねがい、引いてくれないかな? 言葉は分からなくても直接響いてるよね?」
ワームは顎を鳴らしてうねると出てきた穴に再び戻ってどこかへと行ってしまった
「よかった。 知恵持つ生き物だったみたいね。 おとなしく引いてくれてよかったわ」
ワームと別れて再び歩く
相も変わらず熱波は押し寄せているが、冷風はそんな熱波を完全い防いでくれている
それにしても街が見つからないなぁ
かれこれ半日は機械馬を走らせてる
およそ800キロは走ったはずなのに
「やっぱり生物はいないのかな? あ、そうだ。 前に行った世界に面白そうな機械があったんだったっけ。 創ってみましょ」
私は以前メシア様と共に行った世界にあった特殊な機械を思い出す
「クリエイト、ドローン、モニター」
プロペラの付いた機械と画面を創り出す
ドローンは映像をこのモニターに飛ばしてくれるみたい
実は救世界にあるモニターも、映像を撮るドローンも私が創ったのでしたドヤァ
一人で何してるんだろう私
でもこのドローンがあれば世界中を探索できる
「頑張ってねドローンちゃんたち」
あの世界で見たドローンは可愛くなかったけど、私の創ったドローンは可愛い動物の顔をしてる
メシア様はこれを見て苦笑いしてたけど、可愛いさはいくらメシア様でも譲れない
うんうん、私のドローンちゃんたち可愛い!
そういえばオルザ様にはとても個性的だねって言われたけど、ほめてくれてるんだよ、ね?
ドローンから送られてきた映像であっさりと城、そしてそれを取り囲む大きな城下町が見つかった
「遠いわね。 ありがとうフレドリカちゃん」
この機械馬ちゃんの名前はフレドリカ
フレドリカって名前は今私が付けた。 また呼んだ時に呼びやすいように
城までは空を飛んで行くからここで一旦お別れ
「クリエイト、機械大鷹」
人が数人乗れそうな大きさの機械鳥を創りだして乗せてもらう
この子の名前は…。 ファルフィにしましょっと
私はファルフィに乗ってその街まで一気に飛んだ
クリエイトって掛け声は気に入ってます
いかにも創り出せそうじゃないですか?