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レライアは一人で世界を歩き回っているようだ
長い間一つの世界にとどまり続け、傷を癒していた彼女は、数千年前と様変わりした様々な世界が珍しく興味が尽きないのだ
「レライア様、帰ってきませんね」
「自由に動けるのが嬉しいんだと思うよ。 まぁそのうち帰って来るって」
ルーナ達は今雲の上にある街にいた
この世界には地上がなく、雲がその役割を果たしていた
「ちょっと寒いぜな。 ほれ、これでも着るといいぜな」
パリケルが四号の収納から取り出したのは、今まで倒してきた魔物の皮などで作った防寒着だ
街が雲の上にあるため標高は驚くほど高く、空気は冷たい
それでも街の人たちはその寒さを物ともしていないようだ
長い間雲の上で暮らしていたため体がそれに適応した進化を果たしたのだろう
さらに言うと、この世界の住人には必ず翼があるようで、ルーナといなみは堂々と歩けたのだが、パリケルとリゼラス、レライアには翼はない
そのためルーナが変化の神の力を使って三人の翼を付けた
「それにしてもこの翼というのは、なんとも落ち着かないな。 それに痒い時はどうやってかけばいいんだ? すでに翼の先が痒いんだが…」
「私がかきますよ。 私の場合痒い時は長い棒を使ってます」
「僕もそうかな。 確かにかきにくいよね」
そういった翼あるあるのような話を語りながら街を散策する
安全面で言うと、たまに空の魔物が来る程度で特に危険はない
空の魔物にしても討伐隊で十分対処できるレベルだ
平和そのものである
「あ、あそこ、綿あめ売ってますよ!」
ルーナは大好きな甘いお菓子を見つけて一直線に向かう
「強いと言ってもやはり子供だな。 可愛いものだ」
綿あめを購入してほっぺに付けながらかぶりつくルーナ
その横でいつの間にかパリケルも綿あめに貪りついている
「んまいまい。 甘くてうまいぜな」
「僕たちも買おっか」
「ん、あぁ、そうだな」
リゼラスといなみも綿あめを買って千切りながら食べ始めた
そこにようやくレライアが戻ってくる
「ただいま~。 ほい、お土産!」
どさっと地面に放ったのは各雲の国の特産品のおかしばかり
どうやらレライアは甘いものに目が無いようだ
「買いすぎですよレライア様」
「そう? っていうかさ、その様付けて呼ぶのやめてくんない? あたいのことは呼び捨てでいいっての」
「で、でも神様ですし」
「それはいなみもだろ? いいからレライアって気楽に呼んでってば! じゃないと絶好する」
子供の用に駄々をこねて、友達のように呼んで欲しいと主張する
仕方なく四人は彼女のことを呼び捨てにすることにした
「うん! それでいいの! あんたらとは友達でいたい! ずっとずっとね! まぁいなみはあたいの姪っ子ってことになるんだけどね」
レライアはいなみを照れくさそうに見ている
その目からは愛情が伝わって来た
「さて、色々観光もできたし、そろそろ次の世界に行かないの? あたいはいつでも大丈夫!」
すでに世界中を回って満足したのか、レライアは次の世界へ向かう準備をし始める
「待ってくださいレライア、まだベクト様の指針が反応してないです」
「ん? それはつまり、どういうこと?」
「転移できないということだな」
「あ、そうなの? だったらあんなに急いで観光なんてするんじゃなかった。 それじゃぁあたいはもう一回り行ってくるね!」
そう言うとレライアは一瞬にしてその場から消えた
雷の粒子となって移動したのだ。 その速さは光の速さに匹敵するほどだ
「激しい女神様だ。 それに落ち着きがない」
「でも、良い女神様ですね。 私、大好きです」
四人は竹を割ったような性格のレライアの魅力にほれ込んでいた
時折人を振り回すような所はあるものの、彼女は優しく人当たりもいい
かつて神々の間で戦争が起きていなかった時代には、エイシャも彼女のことが大好きだった
「レライアが戻って来るまで私たちもくつろぐとするか。 あっちに雲のベッドというエステ店があったのだが、行ってみないか?」
「いいですね! 行ってみましょう!」
満場一致でエステ店へと向かう四人
そこではまさしく雲で出来た布団やまくらに寝かせられ、まさに天にも昇るようなマッサージを受けて四人は大満足のうちに店を出た
丁度レライアも二度目の観光を終えて戻って来たようで、エステ店の入り口で鉢合わせた
「お、あんたらもここに来たの? あたいもこれから入ろうとしてたとこ。 この国の人が一度は受けた方がいいって紹介してくれたんだ」
入れ違いに店に入るレライア
ルーナ達は彼女を外で待ってから夕食へ向かうことにした