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電撃の嵐吹き荒れる世界
少し歩けば肌に静電気が走り、目の前に雷が落ちる始末
雷から身を守るためにルーナは常に結界の力を張って防いだ
「視界も悪いな。 生物などいないんじゃないか?」
「いえ、微かですが生命力を感じます。 地下、からですね」
ルーナは地面に手を当ててその生命力の源を探る
「地下なら俺様に任せるぜな」
パリケルは四号を変形させてドリルへと変える
地面を掘ろうと稼働させたが、そのドリルはガキンと音を立てて十センチほどしか掘ることができなかった
「硬いぜな。 一体どんな金属で出来てるんだぜな?」
パリケルの四号はオリハルコンとヒヒイロカネ、ミスリルの合金でできている
硬度は世界で最も高いはずだったが、そのドリルが欠けないまでも、全く歯が立たない
「これはどこか入り口を見つけた方がよさそうだね」
いなみが的確な判断を下し、入り口を探すことにした
「段々激しくなるな、この嵐」
「結界の中なのにピリピリしますね」
段々と激しくなる嵐だが、ルーナの結界はぶれることなく張られ続ける
「見てあれ、建物が見えるよ」
前方向に見える小さな建物、扉があり、中に入れそうだった
「行ってみましょう!」
扉には鍵がかかっておらず、あっさりと中へ入れた
その中には下へと通じる階段があった
「なるほど、地下へ繋がる階段だぜな」
四人はゆっくりと階段を降りる
やがて行きついた場所には発展した世界が広がっていた
地下なのに太陽が照らしているかのように明るく、電気で動いていると思われる車やロボットがそこかしこにあふれていた
人間もいたが、その他にも獣人などと言った亜人も数多く暮らしているようだった
その全てが幸せそうに笑っており、ここでの生活には何ら苦がないように思える
「取りあえず、探索してみるか?」
四人はその街の様子を見て回る。 別段おかしなところもなく、住人も明るい
上があれだけの嵐であり、人が住めなくなった分、こちらでの生活に適応しているようだった
「金って換金できるのかな?」
「そういえば、換金できそうなところが見当たらないな。 今までだったら街に必ず一か所はあったはずなんだが」
「ここではお金が要らないのかもしれないぜな。 あの宝石人の世界みたいにそういう世界もあるみたいだし」
確かに、街の住人がお金を持っている様子が見受けられない
どうやら仕事は全てロボットたちがしているようだ
「じゃぁ泊まるのもお金いらないのかな?」
「そうなんじゃないか?」
ひとまずホテルらしき建物に入り、フロントで値段を聞いてみたが、お金自体が分からないらしく、首を傾げられた
「どうやら大丈夫みたいだな」
そのホテルを取り、平和そうなこの世界での観光を楽しむことにした
「まずはこの世界の現状を知る必要があるな。 幸せそうに見えて実は、なんてこともあるだろう」
「そうですね、まず情報収集をしましょう」
二手に分かれた四人はすぐに情報収集に走った
その結果、その日のうちにこの世界の実情がつかめた
まずこの嵐は数千年前から続いているらしく、住人もすっかりこの嵐に慣れたようで、地下から地上に出る者はもはやいないそうだ
そのため地下はこれほどまでに発展した
次に現状、この世界では戦争らしき戦争は起こっていないが、種族同士のちょっとした小競り合いは相変わらずあるそうだ
ただ、そういった小競り合いも暴力ではなく、ゲームで決着をつけるらしい
「どうやら今一番流行っているゲームがこれみたいなんだけど」
いなみが手に持っているのはゲーム用デバイスだった
まるでサイコロのような四角い装置で、いくつかのボタンがついていた
「ここを押すと起動だよ」
スイッチを押すと、装置が展開していってボードゲームのようなものに変形した
「どうやるのこれ?」
持ってきた張本人が使い方を別っていなかった
「説明書とかついていないんですか?」
「あ、うん、そういえばついてないね」
「取りあえず触ってれば使えるんじゃないか?」
そこから一時間ほど触ってみたが、何の反応もしない
「しょうがない、これは後に回そう。 で、私の聞いた話では、この嵐の原因のようなものがいるらしい」
「いるってことは、生命体かぜな?」
「どうやらそのようだな。 だが、ここの住人が地下での暮らしに満足して地上を取り戻そうとはしていない」
「じゃぁほっとくぜな。 彼らはこれで幸せなんだから、わざわざそれを崩す必要もないぜな」
「それは、そうかもしれないが」
現状でここの住人は一切困っていない
それを部外者が壊す必要などないと四人は判断した
しかし、その夜のこと、その事情は変わってしまった