表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
250/384

4-32

 あわただしく駆け回る宝石人の女性たち

 恰好から察するに兵士のようだった


「何かあったのか?」


 走る兵士を一人捕まえて話を聞いてみる


「裏が魔物に襲われてるんです! このままでは王女様が!」


 兵たちはすぐに裏へ行くための準備を始め、転送装置を作動させる


「私たちも行きましょう!」


 四人はルーナの転移の力によって裏の国へと飛んだ

 神覚醒したことにより、魔力ではなく自らの神力で自由に転移できるようになっている

 ただし覚醒はまだ完璧ではなく、世界から世界へ渡るにはやはり魔力の補助が必要だ


「ここが、裏」


 裏の国ではすでに王女を助けるために兵が集まっている

 裏の兵たちと協力して魔物と戦っているようだが、いたずらに犠牲者が募っていった

 彼女らは一撃殴られただけで砕け散り、死んでいった


「助けなきゃ!」


 いなみは自分にかかった変化を解除するとすぐに魔物を蹴り上げた

 一撃で魔物は首を飛ばされて消滅する


「え、援軍?」


 下半身が砕け、かろうじて息のある兵が救いの女神を見て安心しながら安らかな死を迎える

 群がっていた魔物たちは次から次へとルーナ達によって倒され、やがて静かになった

 しかし、国の様子は悲惨なものだった

 生き残りに話を聞くと、突如壁を壊して魔物がんなだれ込んできたそうだ

 光学迷彩で消えていた街にたまたま巨大な魔物がぶつかり、壁の一部を壊した故の悲劇だった


「それで、王女様は!?」


 四人の姿は既にこの世界の宝石人たちとは全く違う元の姿に戻っている

 それでも魔物を倒してくれた四人をよそ者として警戒する人は皆無だった


「王女様は、城の方です。 お願いします、どうか女王様、を」


 話を聞いた兵はどうやら背中に魔物が放った棘が刺さっていたらしく、そこからひび割れ、粉々に砕けてしまった


「城へ向かうぜな」


 破片になった兵の女性を地面に置き、城へ走った

 魔物はここまで侵入しており、残党を蹴散らしながら城の内部へ侵入すると、兵が固まって守る部屋へ行きついた。 すでに何人か犠牲になったと思われる破片がそこかしこに散らばり、兵たちもすでに数人まで減っていた

 すぐに助けに入るが、戦っていた魔物は様子が違っていた

 今まではただ力任せに暴れていただけの魔物、しかしこの魔物は動きを予測し、カウンターを撃つなど頭脳的に行動していた


「こいつ、魔人になりかけてるぜな。 今倒しておかないと、この世界の住人じゃ対処しきれなくなるぜな」


 魔人になりかけていた魔物だったが、相手が悪かった

 いともたやすくリゼラスによって切り捨てられた


「大丈夫ですか?」


 倒れたまだ息のある宝石人に回復の力を使って今にも割れそうな体を元に戻していった


「まさか、死を待つばかりの私の体が…」


 奇跡と言わんばかりにルーナに感謝する宝石人の兵たち

 彼らが守っていたのは王の間の扉だった

 中では王と思われる女性と王子と思われる少女が腕の欠け落ちた王女マテラトラを守るように立っていた

 助けに来たことに安堵したのか、王子は意識を失って倒れる

 彼女も魔物に攻撃されたのか、肩口が欠けて重症だった


「早く手当てを!」


 王の前へ走り、王子と王女を治療した

 なんとか割れてしまう前に二人の治療が終わり、無事命をつなぐことができた


「ありがとうございます。 あなたたちのおかげで王子と王女は救われました。 それにしても、あなた方はどこから来られたのです? この世界の住人ではないのでしょう?」


 王は異世界の存在を知っているようで、ルーナ達を見ても不思議がることはなかった


「私たちは世界を渡って旅をしています。 たまたまこの国が危ないと聞いたので手助けできないかと来ました」


「そうですか、きっと神が遣わした方々に違いない。 もし王子と王女が死んでいれば、この世界は破滅していたことでしょう」


 王の話では、王子と王女は次の世代へ命をつなぐ大切な存在だったらしい

 二人が婚礼し、子をなすことで宝石人たちへそのエネルギーが流れ、同じように子が作れるようになるのだという


「お助けいただきありがとうございました」


 王子は目を覚まし、四人に頭を下げた

 王も王子も見た目はどう見ても女性だが、この国は古くからそういう役割の者が治めていたため立場上は王と王子である

 しばらくすると王女も目覚めた


「あれ? 私…」


「よかった、マテラトラ、本当によかった」


 美しい宝石の涙を流しながら王子はマテラトラに抱き着く


「アルメスト王様、メルレスト王子、魔物はどうなったのですか?」


「この方たちがすべて倒してくださったのよ」


 四人を見つめ、目を見開く


「あなたたちは! ここの商人じゃなかったの? それにその姿…」


「異世界の方たちです。 さぁマテラ、あなたもお礼を言いなさい」


 王に促されてマテラトラもお礼を言う


「ありがとう異世界の友人さんたち。 ねぇ、いろんな世界を旅をしているのなら話を聞かせてくれないかしら?」


「その前に国を復興しなくては。 それまでしばらく街の住人を裏に移そう」


「そ、そうですね。 さすがアルメスト母様!」


「これ、母様はおやめなさい。 ここでは王と」


「そうだった。 ごめんなさい王様」


 どうやらマテラトラの両親は女王と王で、王子とは姉妹だそうだ

 先に生まれたメルレストが王子、後に生まれたマテラトラが王女

 王と女王の間に生まれる子供は必ず双子で、先に生まれた方を王子、後に生まれた方を王女と定めるらしい


「復興は俺様が手伝うぜな。 もっと強固な壁を作ってあげるぜな。 当然裏もな」


 パリケルの提案に王たちは喜んだ

 その働きに褒賞を渡そうとしたが、一同は満場一致で断った


「え? 褒賞がいらないのですか!?」


 パリケルに更に感謝し、次の日から復興が開始された

 復興は恐るべき速さで進められ、たった一週間でより強固な街が完成した

 それもパリケルの技術によるもので、魔物が来た場合自動で撃退する装置まで設置された

 しかもその装置は完全な魔人となった魔物だろうといとも簡単に撃退できるほど強力なものだった


「何とお礼を言ってよいやら」


「どうか、これを受け取ってください」


 感謝の証として二つの国が大切に保有していた巨大な宝石を渡そうとしてきたが、パリケルは頑として受け取らなかった

 感謝を返しきれないまま、ルーナ達は突如として姿を消してしまった


「やはり神の使いだったのでしょう」


「ええ、神に感謝しなくては」


 王と女王は頭を垂れ、その信仰心を神にささげた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ