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ボロボロの大剣を持ち、赤く輝く鎧には自らの血と、対峙する相手の血が付着している
盾は砕け散り、その後ろでは仲間だろう者たちが息も絶え絶えに、しかし力強く敵を見つめる
「こうなるなんて思わなかった」
大剣を持つ少女はゼェゼェと息荒く敵に語り掛ける
その敵はゆっくりと歩みを進める
少女が斬りつけ、叩き上げ、刺し貫いた傷は既に癒えているようだ
敵は右手をスッとあげ、少女に向けると、その手からは光があふれ始めた
光は剣となって右手に握られる
一瞬の瞬きの内に目の前の敵の姿が消えた
少女は慌ててボロボロの大剣を盾に自分の右方向から迫る光の剣を受け止めた
パキンとひびが入り、大剣は砕け散った
それと同時に少女の右腕は宙を舞い、切り口から血が吹き出る
「ああああああああ!!」
痛みに朦朧とするが、それでもまだ倒れるわけにはいかない
「4号!」
後ろで倒れていた少女の声がした
その少女の傍らでパキパキと音を立てて立ち上がるカラクリのような人形が自分の右腕を外し、投げた
外れた右腕は今しがた手を失った少女の右腕に癒着し、彼女の手としてなじんだ
ヒュっとカラクリの右腕を振ると一振りの刀と成った
まだ、戦える!
“聖剣 陽天の彼方”を組み込んだカラクリの腕はキーンと音を立てて振動し始める
超振動でさらに切れ味を増す
もはや少女の手には神剣や神具はない
この聖剣で敵に傷を与えれるのかもわからない
それでも、少女は痛みを無視して敵に挑んだ
少女によろよろと近づく仲間の少年
彼は少女を自身の最後の力を使って癒す
痛みが引いた
それと同時に少年から命の火が消えていくのを感じる
彼のことが好きだった
そんな彼がゆっくりと倒れ、その命を散らす
流れる涙をぬぐい、敵に振動する聖剣を向けた
そして一気に踏み込み、敵の胸元に聖剣を突き刺した
驚くほどあっさり剣は胸に沈んでいった
まるで敵は受け入れているかのようだ
「おね、がい、これで死んで!」
さらに奥深くに突き入れる
敵は少女より小さな体をゆっくりと歩み進め、少女に抱き着いた
「…ごめん、なさい」
敵が言った一言に思わず聖剣を引き抜こうとした
しかし敵は聖剣をグッとつかみ、自分の胸――心臓にさらに刺し入れていく
敵はニコリと笑い、口からゴボッと血を吹き出した
「・・・ちゃん」
その敵の本来の名前を呼ぶ
少女は敵である小さな女の子の体を抱えた
敵の少女から力が抜けていくのがわかる
いくら圧倒的な力と再生能力を誇る体であっても、自ら受け入れたため再生ができないようだ
敵の少女はそのまま崩れ落ちるように倒れた
少女の体から聖剣を引き抜くと、周囲に電撃と稲妻が走り始めた
それは集約し、倒れた少女の体に集まり始めた
バシュンという音と共に、少女の体は消えた
残された少女は聖剣をしまうと死した少年に近寄る
「終わったよ…」
「全部、終わったんだ」
少年が目を開くことはない
もう、二度と
そっと口づけする
全てが終わったこの世界にはすでに神はいない
神のいなくなった世界ではやがて新たな神が選出され、世界を管理し始めるだろう
何事もなかったかのように
これは今ではない時間、先の先の先の先の時間
いずれ来るかもしれない未来だった
・・・