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魔物を倒してさらに先へと進むルーナ達は一つの道のような場所を見つけた
どう見ても人工的に整えられ、舗装された道だ
「やはり知識を持った生命が存在するようだな」
道は地平線の彼方まで続いているかのようにまっすぐと伸びている。 先に何があるかは分からないが、二人はまっすぐと歩き続けた
どれだけ離れようともパリケルの通信機器のおかげで連絡は取れる
しかし、歩けど歩けど終わりが見えず、もはや道ではなくただの地面にできた模様だったと考え始めていた
そこに、突如として輝く街が現れた
「な、一体どこから現れた? 急に目の前に…」
ルーナが恐る恐るその街を囲む壁に触ってみる
「本物、ですね。 でもなぜ見えなかったのでしょう?」
二人が不思議に思いながら街を見ていると、中から美しい青い宝石の体を持った女性が門から出てきた
「あら? あなたたち、どこから来たのかしら? もう一つの国は裏側にあるはずなのに…。 もしかしてあなたたち、はぐれなの?」
その女性は優しく二人に語り掛けてきた
「はぐれ?」
「違うの? じゃぁ裏からきたのね? 遠いところまでお疲れ様」
話を聞くと、彼女はこの街、この国の女王の娘でマテラトラという名前。 今から裏へと渡ってその国の王子と婚礼の儀をしに行く予定だったそうだ
一人で一国の王女が遠い場所まで旅することに疑問を持ったが、この世界では犯罪をする者がいない
というよりも犯罪という概念が無いようだった
この世界の住人は全ての者が平和主義で、誰かを傷つけるという考えがなかった
しかしそこで問題になっていたのが魔物だった
魔物は強く、宝石人ではとてもではないが勝てる見込みがない。 そこで築かれたのがこの壁だった
この壁はダウルコンゴウという超硬度金属でできており、魔物では破壊不可能だった
そしてもう一つ、光の屈折を利用したことによって光化学迷彩を国全体に施すことが出来るようになったのだ
「で、最後になるんだけど、私の持ってるこの装置、転送装置と言って、裏側まで一瞬で転送してくれるの。 ただ国の外でしか使えないから今出てきたってわけなのよ。 でもこれ、一般人に配られてないから、あなたたちもしかして商人かしら?」
「あ、ああそうだ」
「そう、じゃぁ私が帰ってきたら商品でも見せて頂戴ね」
この世界には国が二つしかない
それぞれが裏とよび、まさしく星の表裏となっていた
彼女の持つ転移装置は国の重要人物、もしくは商人や使者など、国同士を行き来する者しか持たない
そのことから商人だと思われたようだ
「それじゃぁ、もう行かなきゃ。 また会いましょうね」
そう言って彼女は消えた
「気さくな王女様だったな」
「はい、取り合えずパリケルさんたちと合流してから入国してみましょう」
ルーナはパリケルと連絡を取り、しばらく壁にもたれかかって座って二人を待った
しばらくしていなみに運ばれて二人が飛んできた
「おーい、やっと見つけたよ。 街なんてないじゃない」
二人には町の前で待っていると伝えたが、どうやら女王が行ってからしばらくするとまた光化学迷彩が発動したようだ
「すまん、まさかまた消えるとは思っていなかった」
「でも困りましたね。 これではどうやって国に入るのか分かりません」
壁があると思われる場所に手を突いてみた
すると街が輝きながら再び現れた
「あ、簡単に入れそうですね…」
門を抜け、恐ろしく簡単に入国する。 そこには眩いばかりの景色が広がり、光によって輝く人々がゆったりとした生活を送っていた
「すごくきれいなところですね」
ルーナの言葉に同意し、目に映るもの全てが輝く街を堪能しながら歩いた
そして気づく。 この世界には女性しかいないことに
「あれ? でも裏の王子と婚礼の儀を執り行うってマテラトラさん言ってましたよね?」
「あ、ああ、もしかして、こっち側が女性だけで、裏が男性だけなのではないか?」
あれこれと予想を交わしたが、結局結論は出ず、リゼラスがふとマテラトラの言っていたことを思い出した
裏側から来た商人と二人のことを判断していた
二人は女性
「つまり、この世界には女性しかいないってことじゃないかぜな? 裏側の王様が王と王子という役目、こちら側の王様が女王と王女、って感じじゃないかぜな?」
パリケルの仮説に一同は納得した。 そしてそれは正解でもあった
この世界は女性だけで成り立っており、子孫の増やし方は、愛し合う二人が寄り添うことで互いの体から一部が分裂し、それらが混ざり合って子ができるというものだった
しばらく街を散策し、宿をとった。 貨幣という概念もこの世界にはなく、どの宿もただで止まることができた
食事も鉱物で出来た料理だったが、不思議なことに普通の食事と何ら変わらない味と食感だった
そして宿のベッドで久しぶりの安眠を貪り、夜が明ける頃に事件は起こった