闇と始まりのカタカムナ4
ウエツの気配のする世界は燃えるような灼熱の世界だった
暑さや寒さを感じないコシコデン達にとってはどうということはないが、闇の二人は暑さにやられ、すでにフラフラだった
「熱い…。 ウエツはどこにいるんだよ」
「もう、ダメ」
アシキは倒れ、動けなくなった
「貴殿たちではこの環境に適応できぬか。 仕方なし、我の中に入るがよい」
タミアラとミヨイが二人を自分たちの体の中へと収納した
中は涼しく、快適だった
「どうじゃ、わしの中は。 わしとミヨイは体内に空間を持っておってな。 その中を自由に変えることができる。 今は適温にしておるわけじゃ」
タミアラとミヨイは優しく二人を包み込み、カタカムナの後をついて歩いた
「この辺りに気配があるのだが、何かに覆われていまいち位置がつかめんのぉ」
「カタカムナが探知できぬとは、なかなかに厄介なところに囚われたものよの」
カタカムナとホツマは周囲を探して歩き回る。 その間タミアラとミヨイはずっとお互いに愛し合っている
「中に僕らがいるの忘れてるのかな?」
「知らないわよ。 あと怒らせたら怖いんだから余計なこと言わないで」
その後もタミアラとミヨイがいちゃつくのを見せられながらウエツを探した
「む、地面から何者かの気配が…。 タミアラ、その下あたりじゃ」
タミアラは下を見て足で踏みぬいた
その地面から巨大な蛇のような蟲のような魔物が飛び出す
「世喰いか、久方ぶりに見るのぉ。 タミアラ、頼む」
「うむ」
タミアラが世喰いという化け物を蹴り上げた
「うわわわ、僕中にいるんだけど!」
「おお、忘れておったわ。 まぁ世喰いは駆除したからいいであろう」
世喰いはその名の通り世界を喰う化け物だ。 神々が生まれるよりも前、世界という概念が生まれた頃に生まれた真なる化け物。 放っておけばこの世界は隅々まで食い荒らされていただろう
「世喰いがいるということは、住人はもうおらんかもしれぬな。 なれば、ウエツのみか。 星ごと破壊するか?」
「それはならぬ。 万が一住人がいるとも限らぬしな」
タミアラやミヨイと違い、カタカムナはできれば不殺生という主義だ
「めんどくさいのぉ。 で、気配は見つかったのか?」
しばらく地面をトントンと叩きながら調べていたホツマは立ち上がった
「ここじゃ。 タミアラ、ミヨイ、頼む」
「任されよ」
タミアラがホツマの示した場所に近づき、ミヨイと手をつなぐ
「ゆくぞミヨイ」
「えぇタミアラ、愛の力ですよ」
二人は中が見えるほどに大きく足を上げて地面に打ち付けた
そこにひびが入り、大きな穴が現れた
「ほれ、開いたぞ。 封印の回廊じゃ」
「ここまで厳重に封印されておったか、闇に最も加担しておったからな」
「その、ウエツは、僕たちを助けてくれていたんですか?」
「ふむ、あいつはお前らを見ているのが好きじゃったからな。 陰ながら手助けをしておったのかもしれん。 正直、あいつは一人で行動しておったからな。 わしらにもわからん」
回廊が開き切ると中から切れ長目で黒髪の美しい女性がゆっくりと浮かび上がって来た
「やっと外の世界? 退屈していたのよね…。 あら、カタカムナじゃない。 それにホツマと…。 あんたらもいたのね」
「ふん、貴様、わしらが助けてやったのだ。 感謝くらい述べてはどうじゃ?」
「フフ、ありがと」
怒っているタミアラをどこか小ばかにしたように笑うウエツ
「あら、闇の子ね? 確か、アシキとマクロね? フフ、久しぶりに見れて嬉しいわ」
「知ってるの? 僕たちのこと」
「ええ、ずっと見ていたもの」
ウエツは二人を抱きしめた
「え? ちょ、何よ」
「会えてよかったわ。 またあなたたちを観察できる」
どうやらウエツは心底闇を好いているようで二人をつかんで離さなかった
「次はジンダイを見つける。 我らの中で最強の者だ」