4-25
神々の監視が行き届いていない世界は邪悪なモノが蠢いている
闇に近いが闇ではなく、悪という意識や意思が固まって生まれた得体のしれないモノだ
「ここ、なんだか気持ち悪いです。 地面がまるで何かの肉の塊みたいなものに覆われてますし」
足元はぶよぶよとした肉で出来ている
そのところどころにキノコのようなものが生え、時折くねくねと動いていた
「あ、あそこ、人影が見えるよ」
キノコ以外には何もないと思われたが、遥か彼方に人型のようなものがこちらに歩いてくるのが見えた
「行ってみるぜな」
ルーナ達も人型に向かって走る
そしてようやくその正体が知れる距離に迫り、顔を確認した
その顔はまるで地面の肉塊を張り付けたような顔で、目も鼻も口も耳のも全てがない
しかしながらソレはこちらを見ているかのように感じる
「話しかけてみるか?」
「うむ、じゃぁリゼラス、頼むぜな」
「馬鹿を言え! ここはお前が適任だろうが!」
「いやいや、騎士様なんだからみんなを守る責務があるぜな」
二人で言いあいをしている間にルーナがソレに近づいた
「あ、あの」
肉人間はルーナの方へ顔を向ける
その顔がぐにょぐにょと動き、人の顔になった
「おや、こんなところに生命がいるとは珍しい。 君は何かな? 人、神、それとも闇か。 いずれにしても不運だね」
「不運?」
肉人間が地面へと崩れてその一部となった
「うわ、気持ち悪いぜな」
その直後、突如地面が揺れる
「じ、地震!?」
地面がぐにょぐにょと蠢きながら形を変えていく
「まずい、走れ!」
何かを察したリゼラスが走るよう促した
直後、地面が裂け始める
「地割れだ! 走って走って!」
「待つぜな、ルーナといなみに俺様達を掴んで飛んでもらえばいいぜな」
二人はハッとしてパリケルとリゼラスを抱えると翼を広げて飛び上がった
「危ないところでした」
ほっとして下を見下ろすと、地面と目が合った
おかしな話だが、まさしく目があったのだ
「あれは、巨大な顔?」
高く飛ぶとその全貌が明らかになった。 それは星丸ごとが巨大な顔だったのだ
「なんだあれは、おぞましい」
「超巨大生物? あんなの見たことないぜな」
その顔はぎょろぎょろと目を動かしてルーナ達を探している
その目がピタリと止まってルーナを睨みつけた
「こっち見てますよ」
「だ、大丈夫だよ。 顔だけだからさすがにここまで来れないって」
顔はニタリと笑った
「笑ってますけど…」
顔は口を大きく開けると、まるでブラックホールのように吸い込み始めた
「キャッ、ダメです! 吸い込まれ…」
四人は吸い込みにあらがいきれず、そのまま顔の体内へと吸い込まれていった
顔はぺろりと舌なめずりすると、満足そうに笑った
体内
表面にもまして気持ちの悪い空間が広がっていた
「どうしましょう。 どうやって脱出すれば…」
「そりゃぁ一つしかないぜな。 入口があるということは出口が」
「やめろ! そんなところから絶対出ないぞ! 私は上から出る!」
リゼラスが顔を真っ赤にして入って来た方へと歩き始めた
「変なところで乙女ぜな。 なぁ二人とも」
だが二人ともその件に関してはリゼラスに激しく同意していた
しばらく歩いていると液体に満たされた部屋に行きついた
「うーん、横は通れそうにありませんね。 くるぶしくらいまでの深さみたいなのでそのまま渡りましょう」
ルーナが足をその液体に付けようとすると
「待つぜな!」
慌ててパリケルが止め、ポケットからコインを取り出すと液体に投げ入れた
するとコインは煙を上げて溶けてしまう
「危ないところだったぜな。 きっとこれは消化液だぜな」
「これじゃ渡れないよ。 どうする?」
「いやだから、何のための翼ぜな?」
「「あ」」
二人とも同時に間の抜けたような声を上げる
「ごめん、そうだよね。 あまり使ってないから忘れるんだよ」
またパリケルたちを抱えると向こう岸へ飛んだ
消化液を難なく突破して先へ進むと、誰かが倒れていた
「大丈夫ですか!?」
声をかけると、その者はむくりと起き上がってあくびをし、背伸びをした
「ふわぁ、よく寝たの。 ん? あなたたちは誰なの? お腹すいたの」
それは金色の髪を持ち、怪しく光る金の瞳を持った少女だった
「ねぇ、何か食べ物持ってないの?」
「え、えと、ごめん、今は何もないや」
「ちぇ、じゃぁこれでいいの」
そう言うと少女は床に食らいついた
ムシャムシャと食べ進めてそのあたり一帯が穴だらけになる
「あまりおいしくないけどお腹の足しにはなるの」
「こ、この子化け物食べちゃってるんだけど!」
「そんなの食べたらお腹壊しちゃいますよ!」
「いや突っ込むところはそこじゃないぜな」
しばらくすると顔の化け物は内部から喰いつくされ、後には苦悶の表情の残骸だけが残った
「ケプッ。 美味しくないの。 じゃ、キキリリは行くの。 またどっかで会ったらその時は何か食べさせてほしいの。 そしたらお友達になってあげるの」
キキリリと名乗る謎の少女は空間を蹴って裂け目を作るとその中へ入って消えた
「な、なんだったのかな今の子」
「分からないけど、得体のしれない少女だったな」
次の世界へ飛ぶためにベクトのオーブを見ると、行き先を指し示すように光り、四人を転移させた