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どうやら追手はこないようだった
電子の女神による妨害は成功している
「ここは、どこでしょうか?」
この世界には何もなかった。 ただただ暗い空間が永遠と続く世界
神々が狭間の世界と呼ぶ、世界と世界を隔てる空間だった
「よし、誘導できたみたいですね」
そんな四人の後ろから声をかける者がいた
「あなたは?」
「私は監視の女神キュカ。 マキナお姉さまから話は聞きました」
キュカにはラシュアにも話していない秘密があった
自分たちの元を離れて行った姉マキナとは密に連絡を取っていたのだ
「さぁ、こちらへ」
キュカもこの戦争をよく思っていない神のうちの一柱で、マキナと思いを同じくしていた
この戦いを終わらせたい
「あなたたちのことはずっと見ていました。 特に、ルーナ、貴方のことを」
「やっぱり、この力があるからですか?」
「それもあるけど、あなた、自分が何なのか気づいてないの?」
「私が、ですか?」
キュカの言葉にルーナは首をかしげる
自分はただの人間だったはずだ。 両親も、普通の、ただの人間だった
「そう、知らないのね。 じゃぁ私が言うべきことじゃないってことか」
「あの…。」
キュカは手で言葉を遮った
「マキナ姉様が言わなかったのなら今は教えられないってことよ。 それよりいなみ、あなたのことはラシュア兄様に報告してないの。 このまま隠匿してあげるからとにかく見つからないよう気を付けて。 そしてあなた! あなたが一番この中で訳が分からない」
パリケルを真っ直ぐ指さすキュカ
「ふっふっふ、俺様に目をつけるとはさすが女神様ぜな。 俺様はアカシックレコードの管理者。 そして、全てを知る者である」
途中から雰囲気の変わるパリケル。 そこにいつものふざけたような言動はない
「あなたが!? でも、なぜ、いえ、何が起こっているのですか?」
パリケルがキュカに近づく
「知ることは悪いことではない。 知的好奇心こそがそのものを進化させる道標となるのだから。 でも君たち神々は何も見えていない。 だから一つだけ、教えておこう。 始まりが動いている。 いつまでも仲違いなどしている場合ではないよ。 始まりが終わりを運んでくるのだからね」
言っていることはまるで理解できない
「それは、何か神々全体に悪いことが起きるということなのでしょうか?」
「そうだね、良いことも悪いことも、少なからずこれから必ず来る未来。 そしてその先の未来に影響する確定事項だ。 くれぐれも気をつけなさい。 君たちにはいくつかの未来が枝分かれするかのように待ち構えている。 そのうちの一つは、神々の消失だ」
キュカは震える
パリケルではなくアカシックレコード自身の言葉
時の大神クロノゼルフよりも確かな未来を告げている
「さて、我はアカシックレコードに戻ろう。 君たちがより良き未来を手繰り寄せることを信じているよ」
アカシックレコードはその意識を再びアカシックレコードの中へと散らせ、その体をパリケルへと返した
「まさか、アカシックレコードがこの子の体にいるなんて…。 どおりで得体のしれない力を感じると思ったわ」
「じゃぁ、パリケルは本当に」
「そうね。 この子はアカシックレコードに選ばれた。 なぜ一介の人間が選ばれたのかは分からないけどね」
キュカは意識を失って眠るパリケルを抱きかかえると、ルーナ達と共に狭間の世界を抜け出した
そして自分が隠匿している世界へと連れてくると、ポケットから石を取り出した
「さぁ、これを持っていきなさい」
「あの、これは?」
「あなたたちを隠せる世界へといざなう指針の神ベクト兄様が作ったオーブよ。 ベクト兄様も私たちの味方だから。 このオーブがあなたたちを導いてくれる。 最終地点は、ルーナ、貴方の世界になってる。 さぁ、お行きなさい。 あなたたちが見つかる前に私たちで何とかこの神々の戦争を終わらせて見せるから」
キュカとマキナに協力する神々は少ない
それでも、キュカは再び仲のよかった兄弟姉妹に戻れることを信じて、神々の消失を招かないように
「キュカ…。 すまん、俺はラシュア兄貴におびえていたのだろうな。 マキナ、キュカ…。 俺も、お前たちと共に」
パリケルの胸元でシンガのコアが微かに光った
「ミナキ、どこにいるんだ。 頼む、俺の体を。 そしてお前も連れて、マキナとキュカの元へ…」
自分の体を集めることに尽力してくれているミナキのことを思う
自分のことを尊敬し、いつも自分の後ろをついて歩いていた可愛い妹
シンガはエイシャ、ミナキ共に愛していた
「あの時、俺がラシュア兄貴を止めれていれば…。 こんなことにはならなかったんだろうな」
彼はかつての自分を思い出し、悔やんだ