闇と始まりのカタカムナ3
カタカムナとホツマを連れ、二人の闇は次なるコシコデンを探す
彼女らが言うには、空しかない世界に二人は閉じ込められているのだそうだ
「あの二人は我らよりも性格が激しくてな。 我らの言うことしか聞かぬ」
「それ故に貴殿らが先に会うことはまかりならぬ。 死ぬのでな」
二人がタミアラとミヨイについて説明しているうちに空の世界へ繋がる空間を見つけた
「ここだね? じゃぁ、行くよ」
闇の二人は空間をこじ開けた
空間が開いた先は見渡す限りの青い世界。 ところどころに島のようなものが浮いているのが見えた
浮島という島で、それぞれに人が住み、あるいは凶悪な魔物が封じられている
「タミアラは近いようじゃが、ミヨイの気配がかなり弱弱しいのぉ。 死にはしないであろうが、ミヨイめ、何をしておるのだ?」
空中を飛び、時折飛んでいる飛空船を眺める。 飛空船からも人が驚いたような顔でこちらを観察していたが、そんなことはどうでもいいとばかりに無視して飛び続けた
「ここじゃ、この島にタミアラがおる」
その島は一面をヒヒイロカネという特殊金属で固められていた。 封じられたタミアラから流れ出る力をこの金属でさらに抑えているようだ
「ふむ、我らはこの金属に弱くてな。 力を奪われてしまう。 貴殿らに破壊を頼みたい」
「オッケー、任せといてよ」
マクロがヒヒイロカネの壁の前に立ち、殴りつけた
轟音と共にグニャリと曲がる壁。 しかしすぐに元に戻り始めた
「どうやら一撃じゃダメみたいだね」
マクロは連撃を叩き込む
今度は少し穴が開いた。 が、またすぐに再生し始めた
「ダメか、アシキ、一緒に壊してよ」
「はいはい、全く、そのくらい一人で壊しなさいよ」
二人が拳を構え、長年連れ添ってきた感から寸分の違いもなく全く同時に拳を打ち付けた
今度は壁が丸々消し飛んだ
「ほら、開いたよ」
「かたじけない」
カタカムナが先に入り、続いてホツマが入った
「貴殿らはここで待っていてくれ」
そう言い残し、二人は壁の向こうへ消えた
それから数分後、裸の女性を抱えて出てくる
髪が地に着くほど長いカタカムナとホツマに比べ、彼女は肩口で切りそろえられていた
「ハァ、ハァ、すまぬ、カタカムナ、ホツマ、わしは…。 あぁ、ミヨイ、いま、どこへ」
この世界で生き別れたミヨイを思い、タミアラは泣いている
「泣くなタミアラ、ミヨイは必ず助け出す」
泣いていたタミアラは闇の二人を見つけ、一気に表情が変わった
「何じゃ貴様らは! カタカムナ、わしの間合いに知らぬものがおるぞ!」
恐ろしいほどの殺気が二人に降り注ぎ、体がすくむ
その目の前にホツマが突如現れ、それと同時に激しい金属音が辺りに響いた
ホツマの手に握られていたのはタミアラが放った金属の強度とゴムのような伸びを持つ特殊な布
ホツマ自身も硬質化しており、そのため金属音が響いたようだ
「落ち着けタミアラ、この者達は我らの仲間だ」
ホツマの言葉で硬質化していたその布はシュルリとタミアラの元へ戻り服となった
「何者だ?」
「闇じゃ」
「ふむ、生き残っておったか。 なれば復讐相手は同じと言うことじゃな?」
「うむ」
どうやらタミアラは納得したようだったが、二人に対しての興味はもう失ったようだ
「すぐにミヨイを助けに行こうぞ。 あれはわしがおらねばずっと泣いておるからな」
ミヨイの気配はタミアラの方がよく分かるらしく、ミヨイの居場所はすぐに見つかった
タミアラが封じられていた島から遥か彼方の島、同じようにヒヒイロカネによって壁が作られている
「すまない、頼む」
「はいはい」
二人はまた拳を同時に打ち込むと、同じ要領でカタカムナとホツマが入る
タミアラはまだうまく歩けないようで、闇の二人と共に外で待機していた
その間もタミアラは全く二人に興味がなく、まるで道に落ちた石のように思っているのが分かる
しばらくするとミヨイと思われる髪を左右に結った少女を抱えて出てくる
「おお、おおお、ミヨイ、ミヨイ、わしの愛しいミヨイ」
「ああ、タミアラ、わたくしはずっとあなたのことを」
二人はカタカムナとホツマに抱きかかえられながら熱い口づけを交わした
しばらくして落ち着き、二人も立てるようになったようだ
「おい闇の、わしらの力を貸せと言っておったな?」
「あ、ああ」
「いいだろう、貸してやろうぞ。 ミヨイもそう言っておるからな」
ミヨイはずっとニコニコしており、かなりおとなしい印象だが、カタカムナの言葉では怒らせると一番凶悪になるらしい
(怒らせないようにしないと。 僕らが殺されかねない。 ニコニコ笑ってはいるけどなんて殺意だよ)
ミヨイが二人に向けていたのは純粋な殺意のみだった
「さて、次はウエツじゃ。 奴はずっと闇であるお前たちを見守っておった。 快く力を貸してくれるはずじゃ」
次第に増えるコシコデン達、その力は見ただけですくむほどだった