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4-21

 複数の神々がルーナといなみを見つめている

 威圧する者もいれば慈愛に満ちた瞳で眺める者もいる

 そんな中、中央にいた小さな、恐らく女神であろう少女が口を開く


「私はエイシャ。 ルーナ、サニー、あなたたちの力の本来の持ち主よ」


 エイシャはルーナに近づき、じっくりと眺める


「なるほどね。 あなたの体、神力で満ちてる。 私の力に対応できたのも納得できるわ」


 エイシャはルーナの手を握った


「あ、あの」


「大丈夫よ。 痛くないから」


 エイシャはルーナとサニーから自らの力を取り戻そうと目をつむる


「…。 どういうこと? 私にその力を返したくないの? なんで戻らないのよ!」


 どうやらルーナの中にある力はエイシャの元へ戻らなかったようだ


「あなたたち、私に逆らうの? なら、私たちの敵ってことね?」


「え、そ、そんなこと、だって、私はこんな力、いらなくて…」


 ルーナは一切抵抗していない。 サニーもだ。 それでも、力はエイシャに戻らない


「だったらなんで! 速く私にその力を返しなさいよ!」


 エイシャは無理やりにルーナを掴むと胸に手を当て、心臓を貫いた


「ルーナちゃん!」


「やめなさいエイシャ!」


 いなみと愛の女神アズリアが同時に叫ぶ


「私の! 私の力を!」


 心臓を握り、引きずり出した


「あ、うぐっ」


 遠のいていくルーナの意識。 目の前が暗く、暗くなり、意識はサニーと共に底へ沈んだ


「これで、力は私の元へ」


 しかしエイシャが力を取り戻すことはなかった


「どうしてよ? なんで!?」


 手に持った血に染まっている心臓はゆっくりと鼓動を止める

 それでも 力は返らない


「私がもう君と共に歩みたくないからだよ」


 声が響いた。 声を発しているのは目から光が消え、血まみれのルーナの口

 

「私はこの子たちとともにいると決めた。 君はもはや、神としてふさわしくないからね。 憎しみにまみれ、嫉妬と憎悪が止まない君の元へ何て帰りたくないんだよ」


 それは、エイシャの力自身だった。 意思を持ち、その自らの意思でエイシャの元へ戻ることを拒んでいるのだ


「どうして? だって、あなたは私の」


「ダメだよ。 いくら望んでも、今の君じゃ私にふさわしくない。 思い出してよエイシャ。 まだ純粋だったあの時を」


 ルーナの心臓が再生し、傷が癒える。 目に光が戻り、そのまま床に倒れ込んだ


「思い出す? 純粋だった? 思い出したくもない! あいつらのことなんて! 私の愛しい人を奪ったあいつらなんて!」


 泣き、怒り、感情の爆発を抑えられないエイシャをアズリアは抱きしめた

 まわりにいた神々は皆エイシャが何をされたのかを知っている。 それ故にエイシャを守りたいと思う者が集まっていた


「エイシャちゃん。 とりあえずこの子たちは私が見ておくから、今は落ち着こうよん。 大丈夫、きっと私たちがエイシャちゃんを守るから」


 マキナもエイシャを落ち着かせ、その手を握った


「ごめんなさい姉様、私は…」


 力が戻ればすぐにでも天の神ラシュアに復讐するつもりでいた。 しかしそれは今叶わない

 行き場のない怒りをエイシャはグッと飲み込んだ


「ごめんねいなみちゃん。 エイシャちゃんを止められなかった」


「わたくしの力が至らないばかりにこの子を傷つけてしまいました」


 アズリアはルーナを抱きかかえると涙を流した。 慈愛に満ちた正に愛ゆえの涙を


「僕たちはどうすなるんですか?」


「とりあえず、ここにいて欲しいな。 お願い…。 エイシャちゃんはあの時以来変わっちゃった。 ホントはもっと、優しくて…。 あんなことするような子じゃなかったのよん」


 かつてエイシャが愛した者、それは人間の勇者だった

 上位世界の一つに生まれた勇者は優しく、強く、誰からも好かれるような人の良い人物だった

 ある時エイシャが気まぐれにこの世界に降臨したところ、魔物に襲われた

 当然彼女の力なら取るに足らない矮小な存在。 その時も自分で対処しようとしていた

 しかし突如目の前に勇者が飛び出し、魔物を一瞬で切り伏せた

 

 彼はエイシャを見、怪我がないのを確認するとホッとしてエイシャの頭に手を置いた


「もう大丈夫だよ」


 たった一言だけだったが、彼の微笑みにエイシャは心を打たれた

 それから何度も彼の前に降臨した

 彼もエイシャに惹かれ、やがて二人の間に愛が芽生える

 そんな二人の様子をアズリアも見守っていたが、ある時ラシュアに気づかれてしまった


「人間と神々は相容れぬ!」


 ラシュアは怒り、エイシャに勇者と会うことを禁じたが、それでも二人は忍んで会い続けた

 絶対に気づかれるはずのない場所で二人は語り合い、愛を育んだ

 そんな幸せの最中、どこから漏れたのか、ラシュアに知られてしまった

 さらに怒ったラシュアは勇者を魂ごと消滅させた


「どうして!? 兄様! 私たちはただ…」


 エイシャの声はラシュアには届かず、二人は袂を別った

 やがてラシュア率いる神々とエイシャ率いる神々との間で争いが起こり、エイシャは体を失った

 

 それを見ていた創造の大神はエイシャを不憫に思い、器としてサニアとルニアという双子を作り、とある世界の人間の夫婦の元へ送った

 双子はその夫婦の子供として成長し、やがて器としてエイシャに体を乗っ取られそうになる

 しかし誤算だったのは、どちらか一方の体を奪えばよかったはずが、奪おうとしたルニアの体にサニアが触れたことだった

 二つの器としての力が共鳴し、エイシャの力のみを奪ってしまったのだ

 結果、エイシャは自らの体を求めてさまよい、人間の体を奪っては転生を繰り返した

 そして今、ようやくアズリアたちが用意した体によって元のエイシャへと戻れた

 

 一方双子の方は、ルニアはラシュアたちにより封印され、サニアは体を失い、暴走して犯した罪を償うために何度も何度も転生させられ苦しみを味わった

 そして最後の転生により、すでにかつての記憶を失っていたサニアはルーナと名付けられ、妹であったルニアの体に戻った

 同じ体を共有している双子、器としてその魂には二つに分かれたエイシャの力がそれぞれに宿る

 

 今の双子は姉がルーナで妹がサニー。 大神に造られたいわば神々の兄妹だった

二人の存在、在り方? エイシャたちとの関係性のようなものを説明したかったのですが

分かりにくかったらすいません

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