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石野の異世界放浪記9-1

 岸田と合流したはいいが、何を話していいのか分からない

 いつも通り何気ない話をすべきなのか、それとも性転換について語るべきなのか、異世界について? 神獣についてか? それとも自身の神獣化について説明すべきなのか

 頭の中でそれらがぐるぐるとめぐっていた


「石野さん、どうしたんすか? なんか顔が険しいっすよ?」


「俺はいつもこんな顔だが?」


「いやいや、石野さんはなんか悩んでたら眉間に三本のしわができるんすよ。 もう5年はその顔見てるんすからね」


 岸田は可愛らしく微笑んだ。不意にされたそんな仕草に少しドキッとしながらも平静を装う


「いいか岸田。 お前もう少し女の子になった自覚をだな」


「いやいやいや、俺は俺っすもん。 この性格を変えるなんてできませんて」


 岸田は分かっていないようだが、かなり際どい服装をしている

 ところどころが敗れたデニムのパンツにタンクトップ。 もちろんブラなどもしていないため時折みえそうになる。 そのため石野は上着を羽織らせ前のボタンをしっかりと留めさせた


「ところで石野さん、ここはどこなんすかね?」


「俺に聞くな。 レコ、ワコ、何かわからないか?」


「う~ん、魔力はあるようですが、人の気配が…。 この辺りには誰もいないみたいですね」


「私の鼻でも全然臭いがしないですわん。 そうですね、半径10キロ圏内には人はいないですわん」


「仕方ない、しばらく歩くしかないか。 ワコ、レコ、疲れたら休んでくれていい」


「俺も休みたいっすよ」


「俺たちも適当に休憩を挟むから心配するな」


「なんか石野さん優しくなったっすね。 警察時代だったら、うるさい、歩け! っていってたはずっす」


「そうか、なら歩いてもらおうか」


「じょ、冗談すよ!」


 疲れたら休み、また歩くのを繰り返し、ようやく人の気配のする地域にまで到達することができた


「あそこだにゃ!」


 ワコが疲れたのでニャコに変わっている。 ニャコはさも当然のように石野の頭に肩車のように乗っていた

 そんなニャコが見つけたのは廃村、人の気配はするが、とても人が住めるような場所ではないように見える

 そこにいる人々は酷く憔悴しきっており、怪我人が溢れ、死者も幾人か出ているようだった


「どういうことだ? 何があった?」


 石野は村人に状況を聞いてみた。 その間ミコが怪我人の治療をし、レコとポコが死者の魂を神の袂に送り届ける

 

 村人の話では、魔人が率いる魔物の群れに襲われたらしい

 どうやら魔人がこの先にある街に攻め入る予定だったらしく、その通り道に丁度ぶつかったというわけだ

 魔人はこの小さな村には興味を示さず、ただ通り抜けただけだったが、凶暴な魔物によって村人は襲われたそうだ


「許せないっす! 石野さん、地球人を見つける前にそいつらを止めましょうよ!」


「街を襲うというのも気になるな。 俺たちで止められればいいが」


「大丈夫っすよ石野さん! 俺、なんか不思議な力持ってるんすよ!」


 どうやら岸田は世界を渡るときに体を作り変えられた上に強力な能力も有したようだ

 その力に絶対的な自信を持っているらしい


「岸田さんの力、凄いですよ。 彼女一人でその魔人と魔物を倒せるかもしれないです」


 レコによって岸田の力が解析されたようだ。 レコも自信をもっている


「レコが言うなら大丈夫か」


 村人に治療のお礼として水と少しの食料をもらい、そのまま魔人の向かった街まで走った

 距離は3キロほどで、魔人はつい先ほど通ったばかりだったので走れば間に合いそうだ


「見えましたわ!」


 ヤコに空を飛んでもらい、空中から魔人を探すとすぐに見つかった


「近いですわ! わたくし様がお二人を連れていきますわ!」


 ヤコが二人を手に下げる形で魔人の元へ飛び急ぐ。 苦しそうだが、ヤコの頑張りによってあっという間に魔人の真上まで飛べた


「ありがとうヤコ、手を放してくれ」


「分かりましたわ」


 ヤコが二人の手を放し、上空からスタリと地面に降り立つ

 魔人は少し驚いていたが、相手が人間とわかると嘗めているかのように笑った


「なんだ? 冒険者か? それとも勇者か? どちらにしろこの俺の邪魔をするなら命はないがな」


 魔人はいかにも自信家と言った筋肉隆々の男だった

 一見すれば人間のようだが、体に黒い文様があり、目が赤く光っている

 先ほどいた村人と比べると明らかに人間とは違っていた


「お前があの村を襲った魔人とかいう奴っすね?」


「襲ったとは人聞きの悪いことを言うな。 俺はただ通っただけだ。 それで死ぬなら弱い方が悪いんだよ」


 それを聞いて岸田は怒りをあらわにする


(久々に見たな。 こいつのこんな顔…。 いや、この姿では初めてか)


 石野と同じく正義感の強い岸田は弱い者や困った人を放っておけない。 ましてやそれを無下にするような輩は許せない


「分かった。 お前を街には行かせない。 お前はここで俺に倒されるからな」


 口調が変わっている。 そこからは先ほどまでのおちゃらけたような雰囲気は一切感じられない


「俺を? 倒す? たかが人間が?」


 大笑いする魔人の頭が飛んだ

 コロコロと転がり、自分の体が倒れていくのを見た


「!…」


 一瞬目を見開いたが、魔人はそのまま絶命した

 残された魔物たちを石野やレコたちが一掃していく


 しばらくして魔物を倒しきった石野たちが岸田の元へ戻って来た


「お疲れ様っす石野さん」


「ああ、それにしてもすごいな。 お前の力」


 岸田の能力は複数ある。 そのうちの一つが認識だった

 あいての認識をずらす力

 彼女は魔人と話している間に既に歩き出していた。 魔人はその動きへの認識をずらされたことによって何もできずに首を断たれたのだった

 魔人からしてみれば岸田は構えたままこちらと話していたように見えていた


「取りあえず街に行ってみるっすか。 一応その魔人を倒した証も持っていくっすよ」


 魔人の持っていた槍を拾うと石野と岸田は街の方向を確認して歩き出した

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