4-20
取り囲んでいるのはアンドロイドと人間の混在した警察のような者達
リゼラスとパリケルは既に電磁の拘束具によって縛られ、動けなくなっている
いなみとルーナはその拘束具が簡単に壊れたのでキョトンとしているが、周りにいる警察は驚き戸惑っていた
「抵抗するなら機能を停止させざるを得ない。 そのままついてきてくれるなら手荒なことはしない」
すでに仲間の二人を拘束されているため逆らうことは出来ない。 そのままおとなしく彼らについて行くしかなかった
彼らに連れられてきたのは目に見える電子で出来た妖精が行き交う警察署と牢獄を兼ねた場所だ
電子の妖精はこの警察署で働き、ネットワーク内を移動し、体を持たない犯罪者を捕まえる役目も担っている
警察署内にも拘束された犯罪者が座らされ、聞き取り調査なども行われている
一般市民が何かの手続きをしている様子も見受けられた
その建物の最上階にある部屋に入ると、いかにもこの警察署の所長らしき男が立っていた
「手荒な真似をしてすまなかった。 まずは謝罪を受け入れて欲しい」
所長の男は頭を下げた
「あの、一体どういうことなのですか?」
そう聞くと所長の後ろから突如としていなみと同じ年頃の少女が現れた
「やほ、誘導、成功したみたいでよかったよん。 やっと会えたねいなみちゃん」
いなみを知っている口ぶりだった。 しかしいなみの方は彼女が誰なのか分からない
「まぁ初めて会うもんね。 そうだなぁ、関係性で言うと私は叔母さんかな?」
「お、叔母!?」
「あたしはマキナだよん。 こう見えて電子の女神様やってるよん」
くるりとターンして決めポーズをとるマキナ。 あまりのことに4人は開いた口が塞がらなかった
「あ、ちょっと外に出ててくれないかな? この子たちと話がしたいのよん」
「かしこまりましたマキナ様」
どうやらこの世界はマキナという電子の女神が管理しているらしいことが分かった
「いなみちゃん、ほんとにお母さんに似てるね。 ほんとに、うん、会えてよかったよん」
相当にいなみに会いたかったのか、彼女はいなみをじっくりと見て泣き始めた
「あ、あの、僕は一体何なのですか?」
当然の疑問だ。 電子の女神が叔母であるということはいなみは神の血族だということになるのだから
「いなみちゃんはね、光の女神ルーチェ姉さんの娘だよん!」
それを聞いて納得がいった。 いなみは時折光り輝くことがある。 さらに神力までをも持っていた
マキナはいなみをそっと抱きしめる
「さぁ、行こうよん。 私達と一緒に。 あいつらが来る前に。 それにルーナちゃん? あなたも私と来て欲しいの。 あなたのその力を本来持つべき人に返すためにね」
「本来持つべき人?」
「そうだよん。 私達神々の末妹、力の女神エイシャちゃんにね」
マキナはいなみとルーナの体を抱きかかえる
「あなたたち二人は元の世界に後で返してあげる。 でも取りあえずここで待っててね。 まずはこの二人を私たちのとこに連れて帰るから」
突然すぎて皆頭がついて行かなかった
しかし、ルーナは内心ほっとしてもいた。 あの時魔王が言った言葉が現実にはならないかもしれない
力を持ち主の元へ返せばあのような未来へ行きつかない。 自分が暴走し、全ての敵になりえない
マキナは二人と共にこの世界から姿を消した
「安心してルーナちゃん、力を返してもらったらちゃんと元の世界に送り返してあげる。 それに、ルーナちゃんの体も作ってあげるから。 そしたら妹ちゃんと仲良く暮らせるでしょ?」
なぜ自分たちの事情を知っているのかは分からないが、マキナに感謝した
「マキナさん、僕は、これからどうなるんですか?」
「それは…。 光の女神として私たちの元へ迎え入れるよん。 でも、あっちには行っちゃだめ! 絶対に! いなみちゃんもルーナちゃんも絶対にあっちにはいかせない!」
「あっち?」
「天の神ラシュアのところだよん。 あいつらは、私たちの可愛いエイシャを裏切った。 許せない」
マキナは心底天の神を憎んでいるようだった
怒りのためか、彼女の肩口から電流がバチバチと火花を散らす
「あつっ!」
「んあ! ご、ごめんねいなみちゃん」
慌てて電流を抑えたようだ
「もうすぐ着くよん」
見えてきたのは霞がかった城のような場所。 その城は何もない空間に突如として現れたかのように浮かんでいた
「ここが私たちのお城だよん。 くつろいで行ってね~」
マキナは抱えていた二人を城の玄関口となる門の前に降ろした
「ただいま~エイシャちゃ~ん、アズリア姉さ~ん」
マキナが叫ぶと門が3人を招き入れるように開いた
いなみとルーナは恐る恐る足を踏み入れ、マキナの後をついて行く
そんな二人をマキナは愛おしそうに見守った
光りの女神ルーチェは大神から転生して天の神ラシュアと共に生まれたのですが
ラシュアたちは全くそのことを知りません