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神々の捜索8

 ミナキは迫りくる魔物の大群を見、数時間後には滅びゆくであろう国の様子を確認していた

 国の中ではすでに騒ぎが起こり、逃げ出す用意をしている者も多い

 そんな中、王が率いる王国軍、それに、王女と思われる少女は魔物の群れに立ち向かうため、民を守るために国に残り戦うことを決めていた

 その表情は険しく、この戦いに生き残れることはないと悟った顔だった


「お、ああいう王ってのはいいね。 上に立つ者はそうでなくちゃな。 少しだけ力を貸してやるか」


 欠片を探すのもそっちのけで滅びの運命が近づいている国へ走った

 その速さは音速を超え、あっという間に魔物たちを追い越し、国境付近で止まった


「何だあれは!」


 国境へと出陣していた王国軍の見張りがミナキを見つけて立ち止まる


「少女? なぜこのようなところへ…。 すぐに保護するのだ!」


 王は兵たちに指示を飛ばし、ミナキを保護させようとするが


「おっと、すまねぇが保護されてやる暇はないんだわ」


 ミナキは力を開放した

 周囲の空気が震え、肌をピリピリと焼くような力の流れを感じる


「剛腕の力、見せてやるよ」


 ミナキが拳を握り、空手のように打ち出した

 その場に大きく響くパーンと言う音の後、向かってきていた魔物の群れは一斉にぐしゃりと潰れ、息絶えた


「よしっと。 見たところもう魔物はいないみたいだな」


「お、お前はいったい…。 いや、あなたは何者なのですか?」


 神のごとき力を目の当たりにして思わず敬語で尋ねる王


「ん? 気にすんなって。 無事でよかったよ。 じゃ、俺は用事があるから消えるぜ」


 そう言い終わるか終わらないかのうちにミナキは王の視界から消えた


「一体あの方は…。 神の遣わした天使様なのか、それとも、神様自身だったのか、いずれにしてもあの方のおかげでこの国は救われた…。」


 国一つを救った後、ミナキは欠片の気配を辿って隣国へと侵入していた

 そこは周辺の属国を束ねる帝国で、力ある皇帝が国を繁栄させていた

 その帝国の中心、皇帝の住む城からシンガの欠片の気配がする


「またこんなところに…。 こういうところに拾われるのが一番面倒なんだよな」


 相手が悪ならば奪うだけでいいので簡単だ。 ミナキは剛腕の女神、戦闘を得意としているのでその点は問題ない。 しかし、相手が善人ではないにせよ何の非もない場合、気配を断って侵入し、盗み出さねばならない。 戦闘に成れば殺さずに無力化するなど、シンガならともかくミナキは苦手とするところだった


「仕方ない。 侵入するしかないか」


 なるべく力を抑えきり、極力音を出さず、気配を最小限にして忍び込む

 姿を消すことはできないため目にもとまらぬ速さで動くしかない

 それでも誰かにぶつかれば気づかれるし(その場合あまりの速さでぶつかられるため相手は死ぬ)、角を曲がるなどの場合はいちいち減速しなければ壁を突き破ってしまう。 そうなればすぐばれてしまうだろう


「めんどくさいなあもう!」


 巡回する兵から隠れ、侍女から隠れ、欠片の気配を探って走る

 そしてついに欠片のある部屋の前までたどり着くことができた


「ここは、宝物庫か? かぎがかかってやがる。 …。 壊すか?」


 コンコンと扉を叩いてみる

 硬い金属音がするだけで通常の力では押そうが引こうが開きそうになかった


「ちょっと強めにっと」


 ぐっと力を込めて引っ張ってみると、扉が外れてしまった

 慌てるミナキ


「やべっ、壊しちまった。 ま、まぁ音はそんなにしてないし大丈夫か」


 宝物庫の近くでは兵が巡回していたが、騒ぎになっていないためどうやらばれてはいないようだった


「さてと、欠片はどこだ?」


 宝物庫の最奥、そこにはいくつかの希少な宝石が並んでおり、その中の一つにかけらが治められていた


「お、あったあった」


 ミナキがシンガの塊をかざすと、それに呼応するように光り、塊に融合して一つになった


「回収完了っと」


 その時後ろに気配がした


「まさかここまで侵入してくる者がいようとはな」


 そこにいたのは豪勢な服を着こみ、鋭い眼光を持った男だった

 彼はこの国のトップに位置する男、すなわち皇帝だった


「余でなければ貴様の気配は分からなかっただろうな。 さて、このままおとなしく掴まればよし、さもなくばここが貴様の墓場となる。 宝石が墓標変わりだ。 ちょうどよかろう?」


 ミナキは何も答えない


「よく見れば貴様、かなりの美貌を持っておるではないか。 余の妾となるならその宝石、くれてやってもよいぞ?」


 どうやら一目見てミナキを気に入ったようだ。 皇帝には妻が30人、妾が56人もいるという大変なプレイボーイなのだが、彼のポリシーはその全ての女性を愛し、目をかけていることだ。 恵まれた子供達も平等に愛している。 どの子供も人格者で、その中のだれが後継者となろうとも皇帝の一声は絶対で、逆らう者はいない

 皇帝は侵略した国ですら好かれるほどのカリスマ性を持っていた


「まいったな。 あんたはこの世界になくてはならない存在みたいだし。 ここで俺が殴って殺しちまうってのはあっちゃならねぇんだよ」


「何を言っている。 余に勝てるつもりでいるのか?」


「あんた、俺の気配は探れるくせに力の差は分かんないのかよ」


 その言葉で皇帝は気づいた

 今現在この空間、この城にあふれる魔力を支配しているのはこの少女だということに

 圧倒的すぎる力によってあまりにも差がありすぎるため自分と少女の力の差に気づかなかったのだ


「よ、余は、今宵、初めて戦わずして負けを悟るか…。」


 皇帝は負けを認め、膝を付いた


「これからこの帝国はあなた様のもの、余のことはいかようにしてくれても構わぬ。 しかし、妻と子ら、そして民を傷つけることはないと約束してくれ。 この首一つで、どうか!」


 決意に満ちた顔だった

 ミナキはため息をつく


「はぁ、何もしねぇっての。 俺の目的はこれだけだから。 これさえ取り戻せればいいんだよ。 じゃあな」


 ミナキは目の前から消えた


「余は、余は助かったのか」


 後にこの世界で不思議な少女のことが語り継がれることとなる

 あるいは神の使い、あるいは世紀の大泥棒、あるいは、神の気まぐれと…。

ミナキは気に入ってる子なのでもっと活躍させたいんですが

如何せん目的が小さいからなぁ

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