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石野の異世界放浪記8‐1

 澄んだ空気と澄み切った青空の下を歩く石野

 その後ろをレコとポコが仲良く手をつないで歩いている


「いい天気なのです。 風が気持ちいいですね、石野さん」


「あぁ、眠くなりそうだ」


「寝ちゃだめだの。 わしらじゃ石野さんは運べないの」


 レコは今ではすっかり元気になり、石野といれば男に恐怖することもなくなってきていた


「さて、ワコかニャコ、出てきてくれないか?」


 飛び出したのはニャコだった

 ニャコはすぐに石野の頭に飛び乗る


「にゃふ! おいらが出てきたにゃ。 どうしたにゃ、石野」


 頭の上であくびをしながら石野の頭に頬ずりするニャコ


「地球人の気配はあるか?」


「うにゃ、まだないにゃ。 でも近くに人の気配がするにゃ。 それと、血の臭いもにゃ」


 ニャコは頭から飛び降りると石野の手を引いてその人の気配のする場所へと走った

 しばらく走ると水の流れる音がし、河原が見えてくる

 水の匂い、それに交じって濃い血の匂いが鼻を突く


「あそこ! 人が倒れてるにゃ!」


 ニャコが指さす先には男が数人倒れ、血だまりを作っていた

 その先には盗賊のような風貌の男たちと、水浴びをしていたためか裸の少女が三人

 少女たちは盗賊に取り囲まれておびえている

 石野はすぐに神刀を抜くと盗賊たちを一瞬で切り伏せた


「ミコ! 怪我人を頼む!」


 幸いにも倒れている男たちは重症を負ってはいたが、一命はとりとめているようだった

 ミコに治療を任せ、石野はミコが持ってきた布を三人に優しくかぶせた


「あ、あの、ありがとうございます…」


 まだ恐怖心が薄まっていないらしく震える少女たち

 三人はどうやら三つ子で、同じ顔をしていた


「君たち、けがはないか? もしあるならそこにいるミコに頼んで治療してもらってくれ。 それと…。 レコ、服を持ってきてくれないか?」


「はい!」


 レコは玉に戻り、すぐに服を持って出てきた

 三人がもともと着ていた服は盗賊たちによって踏み荒らされ、ボロボロだ


「助けていただいた上に服まで、本当にありがとうございました」


 ようやく震えの治まった三人。 その頃には護衛達も立てるまでに回復していた


「お嬢様たちを助けていただきありがとうございました」


 護衛の内の一人と思われる男が丁寧に礼を言う

 

「よろしければ私たちの屋敷まで来てくださいませんか? お礼をしたいので」


 石野はその言葉に甘え、屋敷を訪ねてみることにした

 屋敷のあるのはこの河原から道に戻り、数キロ進んだ先の街にあるらしい

 近くに止めてあった馬車に乗り込むと街に向かって走り出す

 その道中、他愛のない話をし、三人の名前となぜあそこにいたのかが分かった

 長女はハリエ、次女はメルン、三女はイスラと言うらしい

 彼女たちは祖父母の家に行っていたらしく、その帰り道だったそうだ

 三人ともお嬢様と言う割に気さくで、とても人懐っこい性格のようだ


「見えてきました。 あそこが私たちが住む街、テュネシアです。 水の精霊ウンディーネ様の加護に守られた街です」


 長女のハリエが語ってくれた

 この世界では精霊が大きな役割を持っているらしい

 全ての人々から信頼され、尊敬されている

 それもそのはずで、この世界にはもともと精霊族の神だった女神が力を失い、精霊族の祖となったという言い伝えがある

 精霊女王は姿こそ現さないが、存在は信じられているらしい

 何年かに一度、蘇る魔王と戦う勇者に加護を捧げる時のみ姿を現すのだそうだ

 

「着きました。 ここが私たちの屋敷です」


 おそらく街一番と思われるほど巨大な屋敷

 使用人の数も100人を超えている

 

「「「お父様!」」」


 三人が一気に駆け寄ったのはこの屋敷の主と思われる優しそうな男性


「ハリエ、メルン、イスラ、お帰り。 はて、見たことのない服を着ているようだが」


 三人は口々に先ほど起こったことを説明した


「何と! 無事でよかった。 君が私の娘たちを助けてくれたのかい? 感謝するよ。 私はアルド・バモント。 一応この街の街長をしている 何かお礼がしたいのだが?」


「いや、礼はいらないんだが、どこかで異世界から来たという人の話を聞いたことはないだろうか?」


「ん? そんな話でいいのかい? それならこの世界にはたくさんの異世界人が暮らしているよ」


 石野は驚いた

 この世界は古くから異世界人が良く流れ着き、その文化や技術が溢れているらしい

 この屋敷も異世界人の技術が用いられている


「どこに行けば会えるんだ?」


「ああ、それならこの屋敷の使用人にも一人いるよ。 それと確かこの街のギルドに二人ほどいたかな」


 情報にお礼を言い、すぐに向かおうとしたが、三人娘に引き留められた


「「「待ってください! 私たちのお礼がまだ済んでませんよ!」」」


 三人が同時に石野の裾を引っ張る


「こら、石野さんは先を急ぐんだ。 お引止めしてはいけないよ」


「「「すぐ終わりますから」」」


 三人からのお礼、それはほっぺにキスだった

 可愛らしく、すぼめた唇をそっと頬に押し付ける


「ではその使用人を呼んでくるとしよう」


 アルドが呼んできたのは瞳が金色で、金髪の少年だった

 異世界人らしいのだが、ニャコが言うには地球人ではないらしい。 恐らく地球以外の異世界から流れ着いたのだろう


「この街に地球人はいないですにゃ。 他の街をあたってみるですにゃ」


 アルドに礼を言って街を出ることにした


「他にいるとすればこの先にある王都ラレインだな。 情報も多いからきっと異世界人の情報もあるはずだよ」


 屋敷を出る前に三人娘に声を掛けられた


「「「また来てくださいね、石野さん」」」


 三人は息ぴったりに石野を見送った

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