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4‐15

 魔力磁場の異常が見つかったのはこの墓地か

 まわりには同じ依頼を受けたと思われる数人の冒険者

 その中にはあのフリオもいた


「マコ! 君も来てたんだね」


「フリオさん、この魔力、どう思うっすか?」


「うん、まるでここで大魔法、いや、神位魔法でも放ったかのような異常さだと思う」


 そう、ここで感じる魔力は異常だった

 この世界でも扱えるものが限られる神位魔法という神の領域に達する魔法

 そのくらいの魔力磁場がここには発生していた

 この世界でも屈指の魔力を持ってる俺ですら神位魔法を撃つことはできない

 神位魔法を使える者に問い合わせてみたが、彼らは国の守護や魔法の研究で忙しく、そんなものをこんなところで放っている暇などない

 

「一体だれがこんなところで…。 それに何のために」


「でも悪い感じはしないね。 それどころかこの墓地の問題になっていたレイスやゾンビが浄化されているようだよ」


 それも不思議だった

 この墓地は夜になるとアンデッドが徘徊することで有名で、冒険者たちも手を焼いていたのだ

 

「おい、こっちに足跡があるぞ」


 冒険者の一人が呼ぶ

 そこにあったのは四人分の足跡

 こういう調査は刑事だったころの知識が役立つ

 足跡のサイズからして大人が二人、子供が二人、家族連れか?

 いや、大人二人は女性のようだ

 その足跡は街の方へ続いている

 浄化用の魔法がかかっている街にアンデッドは近づけない

 つまりこの足跡は生きている者の足跡と言うことだ


「夜の間に街に誰か入って来た記録ってあるっすか?」


「あぁ、それなら門の警護兵が記録をつけているはずだよ」


 フリオさんと共に警護兵に話を聞きに行ったが、どうやら昨日の夜は何人か出入りがあったらしい

 その中で女性だけの四人組がいたか聞くと


「ええ、確かにいました。 可愛らしい少女が二人と、美しい女性二人だったのではっきり覚えてますよ。 あ、少女の一人は不思議な人形を背負ってましたね」


 なるほど、重要な情報だ

 街から出た記録は無いからまだこの街にとどまっているはず

 そこから冒険者たちで手分けしてその重要参考人となりそうな女性パーティを探した

 かなり目立つ風貌だったためか、1時間ほどで見つかり、俺はその子たちに会いに行くことにした

 フリオさんも一緒にである

 恐らくだけど、彼は美しいという女性二人に興味があるだけな気がする


「ここがそうっすか?」


「はい、この宿に泊まっているみたいですよ」


 協力してくれた街の人にお礼を言って宿に入る

 宿の中を見渡すけど、女性の姿はない


「いらっしゃい、おや、マコさんじゃないか。 この間は肉ありがとう」


 宿屋の主人は以前依頼を受けた人で、ちょくちょくあってるから顔見知りになってる

 彼は快くその四人の部屋に案内してくれた

 四人とも昨夜から朝食以外で部屋を出ていないらしい

 部屋をノックする


「は~い」


 幼い声、恐らく話に合った少女の内のどちらかだろう

 部屋から覗いたのは意外な顔だった


「君は…。 ルーナ、ちゃん?」


「はい? あの、どちら様ですか? 何故私の名前を?」


 そうだった。 今は俺の姿は以前と全く違う

 分からないのも無理はない


「フリオさん、ちょっと、はずしてもらえないっすか?」


「あ! フリオさん! お金ありがとうございました!」


「ん? おや、君たちだったのか」


 どうやらフリオさんはこの子たちと先に知り合ってたらしい


「お金は必ずお返しします。 あとで冒険者組合に顔を出そうと思ってたんですよ」


 そうか、フリオさんがお金を貸したのか

 それにしても、まさかこんなところで会うとはな…。


「ルーナちゃん、君に話があるんす」


「あ、そうでしたね。 とりあえず中に入ってください。 えーっと…」


「岸田だよ」


「え!? 岸田さん!?」


 どうやら覚えててくれたらしい

 あったのは一度だけ、石野さんに連れられてだったけど、あの時と違って元気そうだ

 フリオさんには宿屋の食堂で待ってもらい、ルーナちゃんと話をすることになった


「久しぶりっすねルーナちゃん」


「その話し方…。 やっぱり岸田さんなんですね」


「お、話し方まで覚えててくれたっすか。 今はなぜかこんな姿になっちゃってるっすけど、中身は俺のままっすよ」


 以前あった時のように頭を撫でる

 ルーナはその時と同じように恥ずかしそうに笑った


「ルーナちゃんももしかして無差別転移事件の…。」


「無差別転移?」


 岸田は事の顛末を話して聞かせた

 地球では若者が次々と転移させられ異世界へと飛ばされていること、石野と共に調査をしていたこと

 自分も無差別転移に巻き込まれたことなどだ


「なるほど…。 私は自ら転移しました」


「自分から!?」


 岸田は驚きを隠せず目を大きく見開いた


「はい、私はもともと地球の人間ではありません」


 そう言ってルーナは身の上を岸田に語った


「そっか、ルーナちゃんも大変だったんすね」


 しばらくの間黙り込む二人

 

「あの、岸田さん」


 ルーナは沈黙に耐えられずに切り出した


「岸田さんも一緒に行きませんか?」


「え? 一緒にって、どこへ?」


「別の世界です。 私たちは旅をしてるんです。 私とリゼラスさんは故郷に戻るため、パリケルさんは検分を広めるため、いなみさんは自分の正体を知るために」


「なるほど、別の世界へ、か…。もしかしたら地球に戻る一番早い方法かもしれないな」


「転移先がどこになるかはわかりませんが、いずれたどり着けるはずです」


「…」


 岸田は少し考え込む

 この世界にはお世話になって人々がいるが、いずれは去るつもりでいた

 その時期が早まった。 と考える


「よし、俺も同行させてほしいっす」


 岸田の決断は早かった

 その日のうちに世話になった人々に挨拶を済ませる

 当然フリオは納得しなかったが、それでも見送ってくれた


「決心は硬いようだね。 でも、君ならきっと異世界とやらでもやっていけるよ。 もし、もしもまたこの世界に来ることがあったら、その時こそ僕のパーティに誘わせてくれ」


 数日後、依頼をこなしてフリオにお金を返したルーナ達は岸田真子と言う新たな仲間と共に旅立った

岸田さんをようやく合流させれました

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