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4-12

 ヒミコは一向に目を覚まさない

 死んでいるかのように眠り続けている

 装置を見るが、起動した形跡があり、恐らくヒミコの能力は既に奪われていた


「王様、どうか、目を覚ましてください」


 助けに来たヒーローたちは口々にヒミコの身を案じて言葉を投げかける

 力を奪った者、恐らくこの国の大統領である男の姿は見つからない

 すでに逃げ出したのだろう


「早く見つけなければヒミコ様の身が危ない。 能力を抜かれた者は例外なく…。 死ぬ」


 グランナイトがそう言ったように、ヒミコの体温は少しずつ下がり、心音も静かになっていっている


「私が見つけてきます」


 ルーナは探知を始めた

 ヒミコの能力を奪ったことで力を増している大統領

 すぐに見つけることができた


「いました! 近いです」


 大統領のいる場所はこの施設から3キロほど離れた公道上

 車で移動しているようだ


「私に掴まってください!」


 相手はヒミコの能力を奪っている

 戦闘になればヒーローと言えど無事では済まないだろう

 魔力は切れているため、実力のある少数精鋭で大統領を追ってルーナにつかまり、光に近い速さで移動した


「見つけた!」


 公道を走っている一台の高級車

 その前に素早く回り込むと素手で車を止めた

 あまりのことに驚く大統領

 しかしすぐにその顔は笑みに変わった


「誰かは知らんが、この能力の試し打ちをしたかったところだ。 たった10人程度で止められると思うなよ」


 大統領は奪いたてのヒミコの能力、ザ・ワンを発動させた

 何でもできる

 そう思っていた大統領だったが、どういうわけか能力が全く発動しなかった


「何故だ! 力の流れは確かに感じるのになぜ発動しない!」


 しばらく試していたが何も起こらず、苛立ちを募らせていく


「まぁいい、貴様ら程度ならば私の能力で一網打尽にできるさ」


 大統領自身の能力は真実の終わり(トゥルーエンド)といい、触れた相手を眠るような死に導く力だ

 触れられれば終わり、それはヒーローたちもわかっている

 それでも王の能力を奪い返すために戦う道を選んだ


 一斉に大統領に襲い掛かるために動こうとするが、どういうわけか体が動かなかった


「下がりなさい。 あいつは私がやるから」


 サニーが拘束の力を使い、ヒーローたちを止めていた


「待つんだ! 君が敵う相手じゃないんだ! ルーナちゃん! 君は逃げなさい!」


 グランナイトが必死で止めようとするが、サニーは全く聞き耳を持たない

 大統領に歩みを進める


「ほぉ、その歳で真っ先に死にたいのか。 貴様の能力の予想はだいたいついているぞ。 超スピードと怪力と言ったところか」


 全く見当違いな推理に思わず笑うサニー


「何がおかしいんだ!」


「アハハ、だって、あんた私に勝てる気でいるんだもん」


「ふん、よほど自信があるようだが、実力差も見抜けていないようだな。 まぁいい、すぐに神の元へ送ってやろう」


 サニーは目に見えぬほどの速さで大統領の背後をとる


「そこだ!」


 大統領は振り向きざまにサニーの手を掴んだ


「終わりだな」


 ヒーローたちはサニーを守れなかった悔しさで歯を食いしばる


「終わりって? あんたが終わりってこと?」


 サニーが死んでいないことに驚きが隠せない大統領


「は、発動しなかった、か。 運がいいな。 もう一度だ」


 また腕をつかむが、サニーに変わった様子はない


「な、なぜだ。 私の能力が、発動しない」


「発動してないんじゃないわよ。 効いてないってだけ。 あんたとあたしじゃ文字通り次元が違うのよ」


 ギンと大統領を睨みつける

 その威圧感でようやく理解した

 目の前にいるのは少女ではなく、化け物だということを


「ひっ、ひぃい!」


 サニーは大統領を掴む


「急ぐんでしょ? 先に帰ってるから」


 一瞬で目の前から消えるサニー


「あの子は、一体なんなんだ」


 大統領の能力で死なない人間を見てヒーローたちも驚きを隠せないでいた


「ほら、連れてきたわよ」


 サニーが突如気絶した大統領と共に現れ、施設に残っていた者たちはどよめきたつ


「は、速すぎません? それに、触って平気なのですか? たしか大統領の能力は…」


「あたしには効かなかったみたい。 そんなことより早くその子に能力を戻してあげなさい」


 施設を調べていた者たちはすぐに大統領を装置につなぎ、ヒミコを反対側にある装置につないだ

 轟音を立てて起動する装置

 大統領からヒミコへとその能力が戻って行く


 それにより、大統領は息絶えたが、これまでの行いからか、誰もそれを悲しむ者はおらず、むしろ喜ぶ者ばかりだった


 しばらくして目を覚ますヒミコ


「ここ、は?」


 意識ははっきりとしているようだ


「王様! ご無事で、よかった…。」


 戻って来たグランナイトは王にひざまずく


「我、は、どうなっていたの?」


 ヒミコに攫われて能力を奪われていたことを告げる


「そう、手間をかけさせたわね」


「それにしても王よ、あなたほどの方を連れ去ったのは一体だれなのです?」


 ヒミコの能力は唯一無二

 絶対的な力のため彼女にかなうものはこの世界にいないと思われていた


「それが、よく覚えていないの。 真っ黒な影みたいな人が急に部屋に現れて、そしたら意識が遠のいて」


「これってもしかして、闇の仕業じゃないぜな?」


 パリケルの発言に一同が驚く

 闇の恐ろしさはヒーローたちに伝えた

 それ故に警戒はしていたはずだったが、その警戒網をやすやすと突破し、王を攫ったのだ

 

「気配の残り香すら残さないなんて、今までの闇とは明らかに違う」


 リゼラスの一言にうなずくルーナ


「私でも探知できていません」


 闇ではない可能性もあったが、それでは気配が残っていないことに説明がつかなかった


「なんにせよこの世界にはもういないようだな」


 ふとそう漏らすリゼラス

 その手には紙が握られていた


「それは?」


「知らないうちに持っていた」


 そこには


“興味がなくなったから別の世界でまた会おう”


 とだけ書かれていた

 馬鹿にしているのがありありとわかった


「とりあえず、王様が元に戻ってよかったです」


 それからヒーローたちと共に凱旋する一行

 ヒミコにお礼を言われ、今度来るときは友人として訪れて欲しいと言われた

 



「クヒ、あの四人、面白そうだった。 ねー」


「そうだねー。 面白そうだったねー」


 二つの黒い影が狭間の世界でじゃれあっている

 その声は幼い


「二人、二人は神の臭いがしたねー」


「うんうんしたした。 しかも強いよー」


「耳の長い女は、普通だったねー」


「でももう一人いたのは? あいつなんなの?」


「得体が知れないねー」


「ねー」


 二つの影は狭間の世界から抜け出し、新たな混乱の種を振りまくため動き出した


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