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石野の異世界放浪記7-2

最後のところは描写をエグくしてあるので苦手な方はご注意ください

 石野はしばらくの間マルアと行動を共にした

 孤児や貧しい者達の世話、どこかの貴族から盗んだ食料の分配、次に襲撃する場所の確認や役割分担などなど、やることは山積みだった


「こういう地道な作業も大事なんだよ。 いずれ革命を起こすためにね」


 石野はマルアの言うことをしっかりと理解し、その手伝いを続けた

 そんなある日のことだ


「石野さん、近くに地球人の気配がしますわん。 かなり近いですわん」


 仲間と共に資材を運んでいると、手伝いに出てきていたワコが鼻をひくつかせた


「あの人ですわん!」


 そこには身なりの小綺麗な男がいた

 彼は貴族のようで、宝石の付いたカットラスという刀を腰に下げている

 観察していると、彼の行動は目に余るものだった

 邪魔だという理由で子供を蹴り上げる

 商人から勝手に品物を奪い、金を払わず去って行く

 好みの女性を見つけると無理やりに迫り、従わなければカットラスで斬りつけようとした

 

「僕に逆らうってことはさ、死ぬってこと。 わかる?」


 刀は女性の胸元を斬りつける

 はずだったが、一瞬早く石野がその刀を指でつまんで止めた


「は? 何してんのお前。 僕に逆らってんの?」


「やめろ石野! そいつはお前が敵う相手じゃないんだ!」


 マルアが叫んで石野を止めようとするが、石野は怒りに満ちた顔でその男の顔を殴った


「ぐばぁ! お、お前、僕を殴るなんてどうなるのか分かってやってるのかよ!」


 男は憎しみに満ちた表情でカットラスを構えた


「もう謝っても許さないからね! 覚悟しろよ。 この僕、ギルバート・雨村の力を思い知らせ」


 そのまままた石野に殴られてギルバートと名乗った男は気絶した


「早く逃げなさい。 ここは俺が何とかしておくから」


 女性はお辞儀をして走り去った


「さてと…。 マルア、こいつは何なんだ?」


「あ、えっと、こいつはギルバートって言って、通称惨劇のギル。 こいつに目をつけられた女はみんな例外なく惨殺されている。 それもたっぷりと拷問されてね」


「拷問? 何か情報を聞き出そうとしているのか?」


「いや、単純にこいつの趣味だよ。 あたしの仲間たちもこいつに何人も殺された。 誰も逆らわないのはこいつの力が異常だからだ。 今までこいつに挑んで生き残ったやつは、いない。 あんた以外はね」


 石野は間抜けな顔で気絶しているギルを見る

 とてもみんなが恐れるような男には見えない


「取りあえず逃げるよ! 兵士が来てる!」


 ギルを残して逃げ出す義賊たち

 

 やがてギルは目を覚ます


「く、そ、何なんだあいつは! この、この僕を殴っていいはずがない!」


 怒り狂ったギルは目についた兵士をその能力でバラバラにした

 惨劇のギルの能力、カットラスを持っているのは形だけで、彼の能力こそがこの惨劇を作り出していた

 全ての人々が彼は目に見えないほど高速でカットラスを振って切りつけていると思っているが、それは違う

 彼は目に見えない刃を操って切り裂いていたのだ

 思い通りに動くその刃を防ぐ手立てはほぼなく、この国の兵で彼に勝てる者はいない

 

「っち、油断した。 まさか一般市民のような男に殴られるとはな。 おい、今の男を探せ。 それと家族もな。 僕の顔に傷をつけたことを徹底的に後悔させてやる」


 アジトに戻った石野たち


「おまえ、なんてことをしてくれたんだ! これからお前はずっとあいつに付きまとわれるぞ!」


 マルアがすごい剣幕で怒る


「だったらあの女性が死ぬのを見てればよかったのか?」


「ぐっ、そういう、わけじゃないが…。 もっとやり様ってもんがあるだろうに」


 確かに殴ったのは早計だったと反省する

 

「それにしても、ワコ、あれがそうなのか?」


「間違いないのですわん。 あのいけ好かないやつが地球人ですわん!」


「なんてこった」


「どういうことなんだ?」


「いや、俺の探していたやつがあのギルとかいうクズだったって話だ」


 石野は自分の身の上と事情を告げた


「そうか、あんたがもしかしたら救世主ってやつなのかと思ってたけど、そんな事情があるなら違うのかもね」


 マルアはずっと救いが来るのを待っていた

 他の国からの侵略者でもいい、今この国の現状を変えてくれるならだれでもよかった

 そんな時に石野が現れた

 だから彼こそが、救いの主であってほしいと願った


「救世主、か。 俺はそんな大層なもんじゃないが、やれることはやるさ。 それに、俺の世界の奴が迷惑をかけているしな」


 マルアに笑いかける石野

 その笑顔にマルアは頬を赤くした



 王宮内部の一室でギルは苛立ちを街で捕まえた少女にぶつけていた

 少女は体中傷だらけで血がしたたり落ちている


「ど、どうか、ご慈悲、を…」


 既に息も絶え絶えの少女は助けを乞うた


「何言ってんのお前。 おもちゃがそんなこと言っていいと思ってるわけ?」


 ギルは今度は肉たたきのような小さなハンマーを持つと、少女の指を一つ一つ時間をかけてつぶしていった

 部屋中に響き渡る少女の悲鳴

 そして床に広がる血と少女が漏らした尿

 気絶する少女を無理やりたたき起こす


「何勝手に寝てんだよ」


 ギルは手に持っていたナイフで少女の喉を掻き切った


「あぐっ、ぶっ、う」


 少し痙攣し、少女は息絶えた

 部屋を出るとギルは外に待機していた兵に指示する


「おい、このゴミを片付けろ。 それと部屋もきれいにしておけ」


 苛立ちが収まりきらないまま、部屋が片付くのを待って次の少女を拷問するためにまた部屋へと戻った

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