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四人は監視されていることに気づかず情報収集がてら観光を楽しんでいた
「この世界の人々はどうやら力を持っている人が多いみたいですね。 魔力、ではないみたいですが…。 恐らく超能力? いなみさんがいた世界の力に似てますね」
「そうだね。 僕もそう思ってたとこ」
屋台で買ったクレープを頬張りながら談笑する
そんな四人を監視する少女
彼女は四人をその目で見ているわけではない
遠くのビルから能力を使って監視しているのだ
少女のヒーロー名はアイ
本名を千里愛という若干14歳の若いサイドキックだ
サイドキックとはヒーローをサポートする能力者たちの総称で、彼女は中でも様々な場所の監視を請け負っていた
一度に見ることのできる数はおよそ100か所
範囲は半径50㎞にもなり、広範囲をカバーできる
そのため脳への負荷が大きいので、常に脳波を測る機器を頭に付けていた
負荷が大きくなればすぐに能力を停止させる機能がついている
「どう? 何か動きはあった?」
アイの先輩であるシークレットウィンドウが話しかける
彼女の能力は空間に窓を作り出し、別の場所へ移動、もしくは覗き窓としても利用できる
「さっぱりですよ。 この人たち、本当に異世界人ですか? 普通に観光してる人達って感じですよ」
「う~ん、私に聞かれても困るんだけど」
「困られても困るんですけど」
「取り合えず監視は続けて頂戴。 なにせあのトップギアからの要請よ」
「分かってますよ。 ん? 四人が動き出しました」
会話を遮ってアイは監視に戻る
ルーナはこの街で得た情報を整理し、この世界には闇も黒族もいないと判断した
ただ、おかしなうわさを聞いた
この国で国宝になっていた宝石が盗まれたらしいのだ
その犯人は少女で、トップギアとグランナイトをあっさりと倒し、国宝を奪って姿を消したらしい
しかも監視が行き届いているはずの場所でである
それ以降捜索は続いているが、どんな能力をもってしても追えていないらしい
「まるで幽霊みたいな犯人だね」
「や、止めてくださいよ。 幽霊何ているはずないじゃないですか!」
「いやいるだろ。 ゴーストやレイスと言った魔物と戦ったこともあるじゃないか」
「だってそっちは魔物じゃないですか。 幽霊は魔物と違って倒せないんですよ!」
ルーナはどうやらその手の怖い話が苦手らしく、幽霊を怖がっている
「まぁそっちは俺様達に関係ないことぜな。 この世界はヒーローと言う人たちが平和を守ってるみたいだからそいつらに任せればいいぜな」
「そうですね。 私たちは次の世界を目指しましょう。 と言いたいところなのですが、まだ魔力が溜まってません。 あと3週間ほどはここに滞在しないといけませんけどね」
「じゃぁしばらくは観光を楽しむぜな」
四人は転移の魔力が溜まるまではこの世界を観光することにした
「別の街に行ってみるぜな。 ここはあまり見るところもないし…。 そうだ! 国宝が置いてあった城に行ってみるぜな!」
城があるのはこの街から少し離れた隣の州だ
その城はこの国の象徴で、国のトップである殿と呼ばれる王が住んでいるらしい
殿も能力者で、その能力を人々のために役立てている心優しい王で、国民からの信頼も厚い
「王様にも会ってみたいぜな。 まぁ会えたらでいいけど」
「王に会うのは難しいだろう。 どの世界の国でもそれは変わらないと思うが」
「そうでもないみたいだよ。 聞いた話によると王様は普通にそのあたりを歩いてたりするらしいし」
いなみが聞いた話では、王は気さくで、普段はとても王とは思えないいで立ちで街をぶらぶらと歩いている
それに、困っている人を見ると助けずにはいられない性格で、ちょくちょく目撃されているそうだ
「それならもしかしたら会えるかもしれませんね」
四人はウキウキしながらこの国の首都である州へ行くための電車に乗り込んだ
「どうやらあの四人、王に会いに行くみたいですよ」
「何ですって!? すぐに王に護衛の手配を! それと攻撃に特化したヒーローの要請を! 場合によってはグランナイトにも出てもらわないと」
「手配しておきます。 先輩は念のため城に連絡を!」
四人は警戒されているとも知らず、ホームで購入した弁当を電車の中で食しながら舌鼓を打っていた
トップギアは連絡を受け、グランナイトと共に車を走らせて王のいる城へ向かった
「まさか王を暗殺!? くそっ、急ぐぞ時夜!」
「ああ、何としても止めねば」
トップギアの車は特別製で、宙を走る
そのうえぶつかりそうになると自動で避ける機能まで着いている
緊急時などはこの車で各地へ向かうのだ
「王はお優しい方だ。 あの四人のうち三人は子供…。 王は必ず油断される。 もしその時襲われればいくら王と言えどひとたまりもないかもしれん」
「時夜、いざとなったら能力を躊躇なく使ってくれ。 お前の能力なら止められるはずだ」
「あぁ、わかってるさ」
現在グランナイトたち以外にもヒーローが向かっている
皆戦闘に特化したヒーローたちばかりだ
今まで数々の能力による犯罪を阻止してきた実績もある
ヒーローたちは全員がたった四人の少女なら自分たちの能力で十分止められると考えていた