4-5
レイドを探し、気配を探りながら国中を飛び回った
だが一向に気配はつかめず、それどころか怪獣すら一切出なくなった
「そうですか、レイドがそんなことに…。 しかしなぜ怪獣もピタリと出なくなったのでしょう?」
ルーナは防衛軍の協力を仰ぐために自分たちの正体を明かし、レイドを探してもらうことにした
防衛軍リーダーである田辺けんじは考え込んだ
「緊急事態です!」
会議室に飛び込んでくる隊員の若者
「どうした、何かあったのか?」
「そ、それが…。 黒いレイドが街を襲っているんです!」
「なに!?」
隊員が言うには、突如空間が裂け、そこから黒く染まったレイドが飛び出し、街を壊し始めたのだという
しかもレイドの体からは人と同じサイズの怪獣が生まれ続け、どんどん増殖して行っているらしい
「私たちがレイドを止めます! 防衛軍の皆さんは怪獣たちをお願いします!」
「その小型光線中があればたとえ黒い怪獣だろうと消し飛ばせるはずだぜな。 しかもエネルギーは常時太陽から補給されるようになってるから無尽蔵だぜな!」
どうやらパリケルの開発した兵器が量産され、配備されたようだ
「これで俺たちも役に立てるってことか。 待っていてくれレイド、必ず助けてみせるぞ」
この時、まだレイドを簡単に救えると思っていた
ルーナとサニー以外は
(おねえちゃん)
「分かってる。 玲さんは…。 もしかしたらもう」
(助けてあげたい)
「でも、助けれるかどうか分からない」
双子は悩んだ
もしもの時は、玲を…。 殺さなければならない
街に着くとレイドが破壊衝動のままに暴れ、何もかもを壊しているところだった
「レイド!」
皆で呼びかけるが、レイドの標的になっただけだった
「皆さんは怪獣を倒してください!」
ルーナは今度は完全に戦闘態勢に入った
サニーにシフトするといなみと共にレイドに拳を叩き込む
勢いよくビルに倒れ込むレイドは痛みを感じないのか、すぐに起き上がって反撃してきた
レイドの鋭い蹴りが二人に襲い掛かるが、いなみがそれを両腕で押しとめる
「重っ」
いなみは力を振り絞って足を掴み、持ち上げた
レイドを上へと放り上げると、高く飛んだサニーがかかと落としで地面に叩きつける
この攻撃は効いたようだ
神力を濃く込めた一撃により、黒かった腹の一部が元に戻る
しかしすぐに黒く染まり治ってしまった
「これは、生半可な攻撃じゃダメみたいだね」
いなみとサニーは力を開放し、本気を出した
一方下では
「そっちに怪獣が行ったぞ!」
「任せろ!」
隊員たちが怪獣を誘導し、パリケル特製のビームブレードを持ったリゼラスが怪獣を叩き切る
斬られた怪獣は黒い灰となって消えた
「この剣、なかなかに使い勝手がいいじゃないか」
パリケルはどうだと言わんばかりにリゼラスを見る
「これが俺様の頭脳の力だぜな! それにしても、なぜこんなに次から次へとアイデアが浮かんでくるんだぜな?」
パリケルは数年前に深淵を覗いたことでそこの力を手に入れた
そのことで彼女は、アカシックレコードの一部を取り込んだのだ
大いなる知識は常にパリケルと共にある
レイドへの追撃を開始した二人
サニーが投げ飛ばし、いなみが蹴り上げ、サニーの連撃によって地面に沈み、そこをいなみが神力を大量に込めた攻撃でさらに打つ
いなみ自身、なぜこの神力を使えるかは分かっていなかったが、有効な手は現在これしかなかった
「これでもまだ、闇が払われないなんて…」
レイドは黒く染まったまま、一向に戻る気配がなかった
「やっぱり、殺さなきゃ、ダメなのかも」
サニーはレイドを見ながら悔しそうにつぶやいた
「でも、玲さんが」
「これ以上やっても同じ。 玲さんはきっともう戻らない」
「なんでわかるのさ!」
「だって、魂まで闇に喰われてるんだもの」
サニーとルーナには魂自体の輝きが見えていた
玲の魂は、今や真っ黒に染まっている
以前に出会った闇と同じように
「どういうこと? 黒族みたいに操られてるんじゃ…」
「違う。 きっと闇は玲さんを闇で染め上げて破壊した。 もう元には戻らないように」
「そん、な…」
レイドは相変わらずサニーたちを狙って攻撃してくる
どんな攻撃を与えようとも闇の力で回復してしまうため、有効打が与えられない
もはやなすすべがなかった
「どうしたんだぜな? 二人の動きが止まってるぜな…。 おーい! こっちの怪獣は片付いたぜな! そっちも早くもとにもどすぜ…。 な、え? この知識は一体…」
突如考え込むように黙ってしまったパリケル
「どうした?」
「なるほど、そういうことかぜな。 そうか…。」
「サニー! いなみ! そのまま攻撃を加えるぜな!」
「え!?」
「いいから早く!」
二人は訳も分からないまま高速で動き、レイドを攻撃し続けた
少し黒い部分が消し飛んでは元に戻るを繰り返している
その間パリケルは平気を分解し、何かを作り上げていた
「よし、リゼラス、これをレイドに向けて撃つぜな」
「何だこれは?」
「いいから、俺様が合図したら引き金を引くぜな」
リゼラスも訳が分からないままレイドに狙いを定める
「魂を確認、リゼラス、こっちに来るぜな」
パリケルがリゼラスの腕をつかむ
「サニー、いなみ、離れるぜな! パリケル、引き金を! さん! にい! いち! 発射!」
パリケルが位置を調節し、リゼラスが放った
その銃はキラキラと輝く虹のようなラインを描いてレイドの胸を撃ちぬいた
それと同時にレイドの体が石になり、砕け散った
「なんてことを! レイドが!」
田辺は慌てたように取り乱した
「大丈夫だぜな。 うまくいったぜな」
サニーたちは見ていた
石となり砕け散ったレイドの体から裸の玲が落ちていくのを
それをいなみは抱きかかえ、ゆっくりと降りて行った
「よかった。 玲さん気絶してるだけみたいだよ」
「どうして? 魂が完全に闇になってたはずなのに」
サニーは疑問に思った
(いいじゃないサニー、玲さんは無事だったんだし)
「それもそうね」
サニーはルーナへとシフトした
ひとまず玲を安全な場所へと隠し、二人は防衛軍の元へ戻った
「レイドは? レイドはどうなったんですか!?」
「無事です。 ちゃんと元に戻ったみたいですよ」
田辺もリネも安心したようだ
「それにしてもパリケル、一体何をしたんだ?」
「ん? 俺様もよくわからないが、なんというか、急に頭にいろいろなことが浮かんで、救える方法が浮かんだんだぜな」
「どうやったんです? あの虹色の光は?」
「魂の時間を戻したんだぜな」
「時間を!?」
「そうだぜな。 黒く染まる前は普通なんだったら、時間を戻してあげればいいんだぜな。 この銃、もう壊れてるが、これは簡易式のタイムマシーンとでもいうものだぜな。 俺様の天才的な頭脳があればこその発明だぜな!」
胸を張るパリケル
(全く、特定の部分だけとは言え時間を戻すとは、神ですら許されない行為だぞ? だが、そこが面白い! もっとお前の力を見せてくれ!)
何やらシンガコアが興奮していたが、パリケルは無視しておいた
それからしばらくして、玲の意識は戻った
彼女は闇となっていた間は何も覚えていないそうだ
トカゲの怪獣に噛まれたあたりからである
「すいません。 迷惑をかけたみたいで…」
「大丈夫ですよ! 無事助け出せてよかったです」
無事玲を助け出し、ルーナ達は笑いあうことができた
黒い少女は戦いの一部始終を見、怒り狂っていた
「なんで!? あんなの! なんだよ! 時間を戻すって! そんなの私たちににもできない! 大神どもだって! 何なんだよあいつ! くそっ! もういい!」
少女は怒りながらこの世界を去った