プロローグ2
目が覚める
悪い夢かとも思ったが、周りの景色に代わり映えがない
仕方なく立ち上がり、周辺を見渡した
相変わらず真っ暗な部屋
ただひたすらに広い
よくよく目を凝らすと反対側の隅に扉のようなものが見えた
扉?
・・・・・・
他にはないし、行ってみよう
意気消沈していたがそれでも前に歩き出した
近づくとそれが木の扉だとわかる
ノブに手をかけまわした
カギはかかっておらず、すんなりと開く
扉の先は明るい
松明がともされていた
どうやら人の出入りもあるようで
先ほどの広間と違って蜘蛛の巣が張られていなかった
そこは部屋になっている
誰もいない
誰か、誰か、私どうしたらいいの?
人を探して彷徨うが、人の気配はない
部屋の奥にまた扉
こちらも木で出来た簡素な扉で、簡単に開いた
今度は開けた場所だった
そこには書斎机と壊れた椅子が一脚おいてある
ふと、耳に人の声のようなものが聞こえてくる
ほんとに復活したのかよ
まだ信じられねぇ
クリア様を疑うのですか?
疑ってねぇよ
だがよ、もし復活してたとして
俺たちで対処できるもんなのかね?
そうですね、相手は破壊神
容易ではないでしょう
もし再封印がかなわないならば
私を置いてお逃げなさい
あなたが報告するのです
ハッ
あんたじゃ頼りないっての
何としても一緒に脱出すればいいじゃねぇか
それが叶わなければ二人とも死ぬのですよ?
まぁそんときゃそんときだ
ほれ、着いたぞ
声がすぐそばまで近づいてきている
慌てて置いてあった机の陰に隠れた
その時椅子に引っかかり倒れてしまった
盛大な音を立てて転ぶ少女
「誰だ!」
声の主の男の方が叫んだ
「っひ!」
思わず小さく悲鳴を上げてしまった
カンテラで照らされる
「女の子?」
「なんでこんなとこに」
「ザスティン!離れなさい!」
「な、何だよ、心配しなくてもこんなちっこいのに手なんて出さねぇって」
「そうではありません!」
「その子が!それが!」
「破壊神です!」
圧倒的な力を秘める少女
それが目の前にいる
女の方、名はミシュハ
彼女は少女の力を敏感に感じ取った
「マジかよ」
「じゃぁ、悪いがお嬢ちゃん」
「牢獄に戻ってもらうぜ」
突如ザスティンと呼ばれた男に槍を突き付けられる
「うっ、や、やだ、助け、て」
急に目の前に現れた見知らぬ大人の二人組
ザスティンには槍を、ミシュハには剣を向けられて
少女は恐怖のあまり失禁する
そんな震える少女を見て
「なぁミシュハ、この子、本当に破壊神なんだよな?」
「えぇ、間違いありません」
「しかし、どういうことでしょうか」
「聞いていた話とは違いますね」
そっと手を伸ばすミシュハ
「っひ!」
「ごめんなさいごめんなさい!すぐに掃除します!」
「殴らないでください!」
泣きながら手で掃除を始める少女
あまりにも哀れな姿
とても破壊神と呼ばれ恐れられたモノとは思えない
その様子を見たミシュハはそっと少女を抱きしめた
「大丈夫、大丈夫だから」
よほどつらい目にあって来たのだろう
その様子からすぐに分かった
優しく抱きしめられ、少女は泣きじゃくった
「なぁ、どうすんだ?」
「姿はともかく、明らかにただの女の子だぞ」
「・・・」
「ひとまず報告しましょう」
「あなた、名前は?」
「ひっぐ、ひっぐ、うぐ」
「私、名前、ないの、うっぐ」
「ずっと、おいとか、お前って、呼ばれてて」
「名前、わかんない」
泣きながらようやくそれだけ言えた
「名前がないのは不便ですね」
「・・・・・」
何かを考えるミシュハ
「今夜は満月でしたね?」
「あぁ」
「ルーナ、ルーナはどうでしょう?」
「月という意味です」
「あなたの目は月のように金色で綺麗ですからね」
ルーナと名付けた少女の頭をなでる
少女、ルーナは震えが止まった
今まで自分に伸びる手は暴力のためだけだった
しかし今伸ばされた手は違う
初めての頭を撫でられる感触
初めてのハグの温もり
それを噛みしめ、ルーナは目を閉じた
「どうやら安心したようですね」
「今まで一体どんなつらい目に・・・」
「それに、なぜ破壊神などと呼ばれているのでしょう?」
「さぁな、とりあえず戻ったらその子に聞いてみようぜ」
「つらい過去を思い出させることになるでしょうが」
「語ってもらわなければ現状がわかりません」
「つらいでしょうが、できますか?」
ルーナはコクリとうなずく
ザスティンがルーナを背負い、封印の城と呼ばれるこの場所から脱出した
圧倒的破壊力!