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4-1

 降りしきる雨がその身を冷たく冷やす

 目の前には怪獣と呼ばれる巨大な化け物の死体が粒子となって消え始めていた


「今までの怪獣とは何かが違うぞ」


「えぇ、ミサイルや光粒子レーザーが全く効かない怪獣なんて今までいませんでした」


「我々ではもう、対抗できないのかもしれない」


 怪獣の死体の前にいるのは、全員おそろいの衣装を着た防衛軍という組織の戦闘班だ

 人類科学の結晶である武器を駆使して戦っていたが、その武器の効かない怪獣が現れてしまった


「なんにせよ、レイドがいてくれて助かったよ。 彼、か彼女かは分からないが、レイドのおかげで我々人類は救われている」


 レイドとは怪獣を倒すこの世界のヒーローだった

 レインドミネーター、雨の支配者と呼ばれるレイドは怪獣が出現したとき雨と共に突如現れる

 それ故に、レインドミネーターを縮め、怪獣を強襲するという意味を込めてレイドと呼ばれるようになった


「次の怪獣がすぐに現れなければいいのだが」


 防衛軍のリーダーの男は雨の上がり始めた空を仰いだ




「雨、ですね」


「よく降ってるぜな」


「渡った瞬間にいきなり雨なんてついてないね」


「まぁこのくらいの雨なら問題ないさ。 あまり濡れないからな」


 既にやみ始めた雨の中、ルーナ達は街の中央に立っていた

 そこは人気がなく、街は何かに壊されているようで、ビルや家々がぐしゃぐしゃだった


「人がいませんね」


「たぶん何かに襲われたんだろう。 それに、あそこを見てみろ」


「あれは、何かの足跡ぜな?」


「二人分? いや、一人と一匹だね」


 リゼラスが指さした方向には巨大な人間のような足跡と恐竜のような足跡があった


「しかし巨大な足跡だぜな。 50メートルくらいはあるんじゃないか?」


 パリケルは足跡の中に入って調査を始めている

 研究者の血がうずいているのだろう

 すでに恐竜のような足跡から黒い粘液を採集していた


「これ、調査してみるぜな」


 四号から検査キッドを起動させてサンプルを入れた


「私、人がいないか探してきますね」


 現在ルーナといなみは人間の姿をとっている

 ビルなどがある進んだ世界では多種族がいないことが多いからだ


「僕もついて行くよ。 リゼラスさん、パリケルさんの護衛はお願いします」


「あぁ、わかった」


 パリケルは四人の中で最も弱い

 魔力の少ない世界では四号に頼り切った戦い方になってしまうからだ

 この世界も魔力がかなり少ないため、パリケル自身の戦闘力は一般人と大差ない


 ルーナといなみは人を探して駆け回った

 そして、何か大きな塊の横に人が数人立っているのが見えた

 その横には戦闘機のような飛行機と戦車が置かれている


「あ、あの」


「え!? こんなところに子供が? どうしたの? 逃げ遅れたの? 何にしても無事でよかったわ」


 その中の一人、可愛らしい顔をした女性がルーナに声をかけた


「あ、もしかして外国の子? 言葉、通じるかしら?」


「はい、わかります」


「君たち、姉妹かな? お父さんとお母さんはどうしたんだい?」


 ルーナは下手に声をかけなければよかったと思った

 こういう時に何と答えればいいか分からなかった


「あ、父さんと母さんは今いないんですけど、向こうに姉さんたちならいます」


 とっさにいなみが答えてくれた


「まだ他にもいるの?」


「はい、四姉妹なんです」


「そっか、案内してくれる? 私達があなた達を保護します」


 二人は女性を連れてリゼラス達の元へ戻った


「生存者発見、保護します」


 女性は無線で他の隊員にそう報告した

 

「あの、この子たちのお姉さんですか?」


 リゼラスを見て女性は話しかけた


「ん? あぁ、保護してくれたのか。 すまない」


 すぐに察したリゼラスは驚くべき機転でそう答えた


「私は防衛軍戦闘隊員の真壁リネです。 ここは危ないので私たちのもとまで来てください。 それとそっちの子、危ないからその足跡の中に入っちゃだめよ」


 足跡の中を嬉しそうに検査し続けているパリケルに声をかけて制止させ、首根っこを捕まえて連れて行った


「放すぜな! 俺様は調査をするんだぜな!」


「はいはい、危ないから今は言うことを聞いてね」


 四人を連れて隊員たちの元へ戻ると、怪獣の死体は既にすべて消えてしまっていた

 隊員たちは四人を戦車に乗せて街を離れる


「で、君たちはあそこで何をしていたんだ?」


「化け物から逃げていたら迷子になったんだ」


「と言うことは、やっぱり外国の子?」


「む、そういうことになるな」


 リゼラスは状況から全てを察してうまく説明している


「そっか、じゃぁ避難経路もわかんなかったよね」


 隊員たちはこれまでなぜかこの国だけに怪獣が現れていること、防衛軍によって何とか倒せていたが、最近出現する黒い怪獣についてはどんな武器も兵器も通じないこと、レイドというヒーローが怪獣を倒してくれていることを説明してくれた


「なるほどな。 大変だな、この国も」


 黒い怪獣、ルーナ達の顔は険しくなった


 しばらくして戦車が止まる


「着いたみたいね。 あなたたち、疲れたでしょう? しばらくはここで暮らしなさい」


 この国に来たばかりで泊る所がないと説明すると快く施設の一部である部屋を貸してくれた


「とりあえず、次の転移の魔力が溜まるまで一月ほどかかります。 それまではここでお世話になりましょう」


 四人はここを拠点に活動することになった

 怪獣が出た地域に行く以外は自由に行動していいと言われた

 ただし、研究施設や兵器工場は危険なのでそこに行くことは禁じられたが、かなり自由に施設を見て回れた



 

 少女は一人雨の中をたたずむ

 空を見上げ、体にあたる雨が少女にしみこんでいった


「また、出たのね」


 少女が周囲の雨を一気に吸収すると、雨が大きな水の塊となって少女の体を覆った

 どんどん雨を吸収し、少女は巨大な戦士となった


「…」


 戦士は走る

 理不尽に街を破壊する怪獣と戦うために

 戦士の名前はレイド

 神から力を与えられ、この世界を守るために生まれたヒーローだった


はい、この世界は以前剛力の神ミナキが来てヒーローを生み出した世界です

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