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石野の異世界放浪記4‐3

 ビロケンズ王国

 化け物のいた洞窟から反対方向に歩いて数キロの距離だったが、ヤコに運んでもらったことで少しは距離が稼げた

 既に王国は目の前で、巨大な城が遠目からでも見て取れる


「ヤコ、ありがとう」


「んくふぅん、ハァハァ、お安い御用、でしてよ」


 ヤコは玉に戻って行った

 次にポコが出てくる


「レコはまだ休んでるですの。 わしが代わりに一緒にいてあげるですの」


 ポコと共に王国までの道中を歩いた

 一人では寂しいが、こういう時にポコ達神獣がいるのは心強いと石野は思う


「お、門が見えてきたぞ」


 見上げるほど大きな門は巨人族の男が開閉しているようだ

 温厚そうだが食って掛かる者は誰もいないだろう


「こちらで入国手続きを行ってください。 身分証のご提示をお願いします」


 兵士らしき男が身分証を確認しているようだ


「しまったな。 ここではそんなものが必要なのか」


「どうするですの? わしら入れないですの?」


「そうなると野宿だな」


 残念そうな顔をするポコ

 どうやらレコのようにベッドで寝たり美味しいものを食べたりを期待していたみたいだ


「わし、返るですの」


「まぁ待て待て、キャンプなら得意だからうまいもの喰わせてやるぞ」


「ほんとですの!?」


「ああ」


 ポコの機嫌は直ったようだ

 どこか野宿できる場所を探そうと門を後にしようとした瞬間、声をかけられた

 立っていたのはモルク率いる冒険者とこの国の兵士たち


「石野さん、よかった。 追いつきましたよ」


「ん? まだ何か用が? お金なら受け取らないぞ」


「いえ、入国されないのですか?」


「身分証というものを持ってなくてね。 仕方ないから野宿でもしてその異世界人が出てくるのを待つことにするよ」


「彼は少し前に竜を討ち取って来たばかりなので一か月は出てこないと思いますよ」


「う、それは弱ったな…」


「よければ私と一緒に入国しませんか?」


「いいのか?」


「ええ、それなら一緒に入れると思いますよ。 こう見えて私、顔は利く方なので」


 お言葉に甘えて一緒に入国することになった

 

「モルクさん! ご苦労様です! それで、化け物の討伐は…」


「あぁ、僕たちじゃ何もできなかった。 けどここにいる石野さんが化け物を退治してくれたんだよ」


「なんと! まだ若いのにすごいな君は」


 中身67の爺さんなんだが、とは思ったが、今の見た目は17歳くらいなので仕方のないことだ

 

「当然ですの! 石野さんには神様の加護がついてるですの!」


「なるほど! やはり救世主様だったのですね!」


 モルクも冒険者も、周りにいた兵士も石野を尊敬の目で見た

 

「ではバークレイさんと同じ…」


「すぐに入国手続きを行います。 国賓待遇を手配いたしますよ!」


「や、止めてください、俺なんかのためにそんな」


 しかしどんどん回りが勝手に盛り上がっていき、救世主ともてはやされた石野は困惑して逃げ出した


「ふぅ、こういうのは苦手だ」


「なんでですの? みんな喜んでたですの」


「いいんだよ。 とりあえずギルドに行ってみるか。 そこに異世界の救世主とやらがいればいいんだが」


 ギルドは王宮の前にあった

 かなり大きな建物で、多くの人々が出入りしている

 入口ではモルクがキョロキョロと石野を探していたので買っておいたローブを目深にかぶってギルドに入る


「あそこが受付か」


 ポコを連れて受付に話しかける


「すまない、ここに救世主と呼ばれる異世界人がいると聞いたんだが」


「バークレイさんですね! あの方は今休養中ですので街の方にいると思いますよ。 ただ見つかるかどうかはわかりかねます。 変装の得意な方なので」


「そうか、ありがとう」


「いえいえ~」


 ギルドにいればすぐに会えたかもしれないが、自分で探さなければならなくなった


「ワコ、頼めるか?」


「はいですわん!」


 路地裏でワコを呼び出した

 下手に召喚を見られるとトラブルになるといけないのでこっそりと


「こっちですわん! 私にはわかるですわん!」


 ひくひくと鼻を動かして異世界人の臭いをたどっている

 件のバークレイは商業区にいた


「あ、あの人ですわん!」


 ワコが指さすのは何の変哲もなさそうな、一度見逃せばそのあたりを歩く人々に紛れて分からなくなりそうな男だった


「本当に彼が?」


「はいですわん! 認識阻害をしてるみたいですけど私の鼻はごまかせないですわん!」


 ひとまず彼に話しかけてみた


「すいません、バークレイさんですか?」


 その問いかけに男は目を見開いて一目散に逃げだした


「あ! 待ってくれ!」


 急いで後を追いかけるが、人込みに紛れて分からなくなってしまった

 

「こっちですわん!」


 そこは的確にワコが追跡してくれている

 再び追いつくと、顔が変わっていた


「何なんですか! 放してくださいよ! 僕は疲れてるんです!」


 石野は彼に事情を説明した


「え? あなたも地球から? よかった。 一人でこんな世界に飛ばされて不安だったんですよ」


 それからバークレイは身の上を話してくれた

 一人が好きだった彼はいつものように図書館で本を読んでいたらしい

 閉館近くになったところで本を返し、図書館を出るとすでにこの世界だったそうだ

 そこからは変な力も手に入り、なし崩しに救世主としてもてはやされ、さらには世界を脅かしていた邪竜を討伐し、名実ともにこの世界の救世主になったという

 

 現在のバークレイの顔はすっきりとしたイケメンで、短髪金髪に碧眼で、かなりモテそうな印象だ

 これが本来の彼の顔のようだ


「なるほど、なら君は元の世界に帰りたいか?」


「そりゃぁ、あっちには僕の帰りを待ってくれてる両親や妹がいますし、結構幸せな家庭だったと自負してますし。 あ、僕ステイツ出身なんですけど、サンフランシスコってわかります?」

 

 彼は意外とおしゃべりで、同世界の石野にいろいろなことを話してくれた

 この世界は邪竜を倒したことによって既に平和が訪れている

 つまり、救世主の役目は終わった。 はずだったが、少し前から変な化け物が湧き始めているそうだ

 聞いたこともない言語を操り、真っ黒な靄から出てくるという


「帰りたいですよ。 でも、この世界の人達にお世話になったのは事実ですから。 彼らに恩を返し終わるまではいようと思います。 化け物のことも気になりますし。 帰る方法は、まぁ何とか探してみますよ」


「そうか、できれば返してあげたかったんだが、そういうことなら…。 レコ、何とかならないのか?」


「そうですね~」


 既にレコは石野の横に座っていた


「たぶん大丈夫ですよ。 アマテラス様からそういうときの対処法も教えてもらってますから」


 レコはバークレイに何事か呪文を唱える

 するとバークレイの体が薄紫に光った


「これでいつでも帰還の力が使えます。 ただし一回だけですから注意してくださいね」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 バークレイはいつでも自由に帰ることができると聞いて手放しに喜んだ


「じゃぁ僕はこのまま化け物退治を続けて落ち着いたら帰還します。 もし、もしも僕に手伝えることがあるなら微力ながら協力しますよ!」


 バークレイがそう言うと、石野の体が薄く光る

 彼と心を通わせ、召喚できるようになった


「バークレイさんの力は変身と破壊ですね。 変身は文字通り他の者に姿を変えることができます。 先ほどの姿もこの能力によるものですね。 それから破壊。 こちらは相手の防御や結界など関係なく破壊してしまうという強力な力のようです」


(おとなしい顔をして凶悪そうな能力だな…)


 バークレイを召喚できるようになり、石野は再び世界を渡った


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