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集合と散在8

 二人は悠然と幻想的な景色の中を歩いていた

 このパーセルと言う世界は人々が穏やかに暮らし、自然と共存する美しい世界だ

 ここには悪と言う概念自体がなく、誰も争うことがない


「綺麗なところだねフィフィ」


「本当に! 私達が住むのにぴったりだと思わない?」


「フフ、僕は君とならどこだろうと楽園だよ」


「まぁメロったら!」


 顔を真っ赤にして恥ずかしがるフィフィ

 愛という感情を知った二人は以前にもましてお互いを求めあう


「あら、綺麗なお花よメロ。 メロに似合いそう」


「それは僕なんかより君の方が似合ってるよ」


 花を摘み、フィフィの髪に優しく挿す

 嬉しそうな表情を浮かべるフィフィだが、実のところまだ嬉しいという感情は分からないため、アカシックレコードから得た情報で顔を作っているだけだ

 それはメロにしても同じことである


「もう少し先に行ってみましょう。 あっちにも綺麗なところがあるかもしれないわ」


「君のいくところならどこへでもついて行くさ」


 二人は手をつなぎ、花畑を進んだ

 その先には小さな集落があり、人々が穏やかな顔で暮らしていた


「人がいるわ!」


「うん、行ってみよう」


 集落の人々は二人を見ると自分たちの集落へあっさり招き入れた

 彼らは相手の感情や気配を鋭く感じることができる

 二人の純粋さを感じて全く警戒することなく受け入れたのだ


「私達、歓迎されてるの?」


「そうみたいだね」


 二人は作った笑顔を彼らに向け、集落へと入っていった


 その時、花畑の方で異様な気配が吹きあがった


「この、気配…。 あの黒いやつね!」


「うん、僕のフィフィに取りついた許されない敵!」


 おろおろする集落の住人に安心してと声をかけて駆けだした


「この世界は壊させない。 やっと見つけた安寧だもの」


 花畑を覆いつくしていたのはやはり闇だった

 それも以前のような残滓ではなく、塊


「大きいわね」


「僕たちなら大丈夫だよ」


 蠢く闇はやがて小さくなり、人型になった


「おやおや、なんだか訳の分からないモノがいるわねぇえええ」


「喋った?!」


 驚く二人を尻目に、女性型となった闇は二人の真後ろに瞬間的に移動した


「え? 僕たちの目で、追えない?」


 闇はメロの両腕を掴むと、一気にもぎ取った


「うぐっ」


 血液は流れておらず、血は出ることはないが、自分をいとも簡単に傷つけた相手を見て驚愕する

 それと同時に、少し前に手に入れた感情がふつふつと沸き上がった

 それは、怒り


「よくも、私のメロを傷つけたわね…」


「よくも、僕のフィフィの前で恥をかかせてくれたね」


 辺りが震え始める


「あら、あらあら、計算違い。 これは逃げた方がよさそうねぇ」


 慌てて逃げだそうとする闇をフィフィがウゾウゾと伸ばした異質な手によって捕獲した

 その手を少しずつ強く握っていく


「う、そ、でしょ。 この私が一瞬で!」


 闇はもがくがフィフィの手が緩むことはない

 その間にメロも自分の腕を足でけり上げて腕の亡くなった両肩から蠢く触手を出して接着していた


「君は僕たちを怒らせた。 そう、怒らせたんだ。 これが怒りと言う感情。 なんて、気持ちの悪い感覚なんだ」


「メロ、こんな感情、私はいらないわ」


「僕もそう思うよフィフィ。 でも、今は、感情に身を委ねよう」


「ま、待って、やめっ、やっと、やっと復活できたのに…」


 相手の命乞いを一切聞くことなく、二人は力を合わせた


「「エンドホール」」


 力を一点に集中させ、一気に散らす

 二人の力を一つの方向へ向けた無慈悲な一撃

 これにより、闇はその形を保つことができなくなり、何も残すことなく消え去った


「怒りが、消えていくわ」


「僕もだよフィフィ。 この感情は、抑えておくべきだね」


 二人はまた手をつなぎ、集落へと戻って行った

 そこには脅威を討ち果たした二人を祝福し、祈る人々の姿があった


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