3-39
ここは、どこだろう? 花畑? 死んだのか俺
自分の手を見ると、なんだか小さくなった気がする
と言うより俺の手じゃない?
何だこの綺麗な手は
「あ、あーーーー」
声を出してみた。 これも俺の声じゃないぞ。 高すぎる
「そうだ、どっかに川とかないか?」
辺りを見渡して、聞き耳を立てて水の流れる音がないか探した
どこからかまさしくその音がしている
「あっちか」
音のする方へ走る
そこでやっと気づいた
俺、裸じゃん。 それと…
大事なものがなくなっている
「嘘だろ、おい…」
信じられない気持ちで川の水をのぞき込んだが、俺の不安は疑いようのない事実として俺の目に飛び込んできた
もともとの俺の顔に少し似てはいるが、性別が変わっていた
俺は、女の子になっていた
黒髪だった髪の色は薄い青に、瞳の色は黄色
身長も縮んでいるし、胸も出て…。 いや、こっちはあんまり変わってないな
「何だよ、これ」
混乱しつつもさっき起こったことを思い起こしてみた
あの時、俺は学校へ向かってたはずなんだよ
電車に乗って、学校までのいつもの道を歩いて、親友の正人に挨拶して、一緒に学校までの道のりを歩いた
で、急に眠たくなって
気づいたらこうなってたっと
「わけわからん」
頭を抱えてその場でうずくまった
そこに誰かの声がかかった
「ど、どうしたんですか!? 裸じゃないですか! まさか盗賊に!?」
中世の騎士のような格好をした男が立っていた
男は顔を赤くして目をつむりながらマントを俺にかけてくれた
「とりあえずこれを。 何があったかは聞きませんが、女の子がこんなところで一人でいては危険です。 ひとまず近くの街まで送りますよ」
彼は俺を純白の馬に乗せてくれ、そこから20分ほど馬で歩いた街へと連れてきてくれた
しかも服を買ってくれた上に、当面暮らせるだけのお金も渡してくれる
「そのお金は返さなくていいですから。 あ、もしなにか困ったことがあればこの街のギルドに行ってください。 私の名前はジャニス・ピーク・リカード。 ジャンとでも呼んでください。 私の名前をギルドで言ってくれれば受付の人もわかると思うので」
彼が話している間、俺はまだ頭が混乱して何も話せないでいたけど、このジャンと言う人がとてつもなく良い人だというのは分かった
俺からも自己紹介をした方が、いいか
でも、以前の名前だとこの姿に合わなさすぎるな
そうだ、前の名前をもじって…
「ミコト。 俺、いや、私はミコトです」
「ミコトさん、ですね」
ジャンはにっこりと微笑んで去って行った
良い人だ。 また会えるかな?
で、これからどうするんだ? 何のあてもないしここがどこかも分からない
いや、街の人を見るにここが元いた世界なのかもわからないんだよな
だってねこみみみたいなの生やしてた人いたし、角のある人もいた
異世界?なのか?
とりあえず宿はジャンさんがとってくれたから大丈夫そうだけど、もらったお金だっていつかはそこを尽きちゃうだろうし
幸いなことになぜか言葉は通じる
あとは、働き口を探さないと
「そうだ、ギルド。 確かこういう異世界ではギルドでお金を稼ぐんだっけ?」
とりあえず宿を出てギルドへ行ってみることにした
看板も明らかに見たこともない文字なのになぜか読める
中に入ると、一斉にこちらに目が向いた
うわ、こわ
恐る恐る受付に
「あの、こちらで働くにはどうしたらいいのでしょう?」
受付の女性、優しそうで安心するな
「はい、まずこちらで登録していただきます。 それと、魔力の測定と適正職の確認を行いますのでこちらへ来てください」
通されたのはギルドの奥にある部屋で、そこにはすでに何人かの人がいた
中でも目を惹いたのは美少女ばかりの四人組だ
しかもなぜかわかる。 二人ほど異彩を放っているんだ
この二人、ものすごく可愛いんだけど、他の人と明らかに違う
なんていえばいいのか分からないけど…。
そうだ、次元が違う感じ
「ではこちらでまず魔力測定を行いますので、名前を呼ばれた方から測定してください。 まずは、トーレさん」
トーレと呼ばれたガチムチの男が測定器のようなものに手を置いた
「トーレさんの魔力は…。 0ですね。 魔法適性なしです」
「あらん、そうなのぉ? ざ~ん~ね~ん~」
う、わ、あのトーレって人、オネェなのか
いやまぁ、うん、いいか
「次は、リゼラスさん」
リゼラスと呼ばれたのは女騎士風の女性
耳がとがっててエルフっぽい。 異世界なんだからエルフなんだろう
「はい、あなたの魔力は…。 これは! すごすぎます! 2万!? 大賢者並みですよ!」
「む、そうなのか? いや、私は騎士なんだが?」
「なにいってるんですか! 普通の魔法使いでも300ほどですよ? それでもすごいって言われるのに」
うわ、それじゃぁ2万ってめちゃくちゃじゃないか
「まぁとにかく、次の方、えーっと、パリケルさん」
パリケルと呼ばれた変なものを背負っている少女が手を置く
「えええ!! 魔力1万2千!? 嘘でしょう!?」
すご、あの子もとてつもなく魔力が高いってことか
「つ、次はティズさん」
ティズと呼ばれたのは魔法使い風の男
おどおどしている。 自分の魔力に自信がなくなったのだろう
「えーっと、ティズさんは…。 250です」
300で凄いってことは、彼は結構なものなんだろうと思う
でも、あの二人の後じゃ思いっきりかすんでるな
「俺、魔法使いやめようかな」
なんて独り言が漏れている
「次はイナミさん」
いなみと呼ばれたのは全身真っ白が印象的な天使のような少女だ
その少女が手をかざすと
魔力測定器が破裂した
「い、イナミさん、測定不能、です」
げっ、測定不能って…
「これ、竜でも測れるように限界値が100万なんですけど…。 ていうか竜でも10万が限界なんですよ!? どんな魔力してるんですか!」
なんだか受付のお姉さんが理不尽なキレ方をしてる
「取りあえず変えの測定器を持って来ます」
しばらくしてお姉さんが別の測定器を持ってきた
「えー次は、ルーナさん」
心なしか受付のお姉さんは最初見た時より痩せた気がする
ルーナと呼ばれた小さな少女
翼に白銀の髪、ねじれた角のこちらもまた可愛い少女だ
その子が手をかざすと、またしても測定器がはじけ飛んだ
「測定、不能、です」
お姉さん、白くなってる
それにしてもなんなんだこの人たち
明らかに常軌を逸している
「もう一台、持って来ます」
あ、お姉さんまたしょぼんとしながら測定器を取りに行った
で、またしばらくして戻ってくる
「これで最後の一台なので、もう壊さないでください、お願いします」
可哀そうに…
「最後は、ミコトさんですね。 普通で、普通でお願いします」
そして俺は手をかざした
で、砕け散る測定器
「あふん」
あ、お姉さん倒れた
「すいません、立ち眩みが…。 あぁ、測定器がぁ」
涙目のお姉さん
「うぅ、では、次はこちらへ来てください…」
肩を落とし、隣の部屋へとお姉さんは案内してくれた
ごめんね
それにしても、俺までこんなに魔力が高いのか
三人とも測定不能ですが、ミコトと二人の間には遥かな差があります
ミコトが100万ちょっとくらいですね