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ひとまずは次元を渡る方法を探ることになった
オルファスには次元魔導士などはいない
研究はかなり少ないがされてはいるようで、パリケルもその研究について少しは知っているらしかった
彼女が言うには、学生の頃の同期に次元に関する研究を先行していたエルフがいたそうだ
普通のエルフとは違った人間好きの不思議な存在らしい
そのエルフの名前はメトル・ハルゼオンと言い、今はエルフの里を追い出された変わり者のエルフたちが住む集落で研究を続けているそうだった
「あの男はかなりの変わり者ぜな」
「うかつに話しかけるんじゃないぞ?」
「たぶん、とんでもないことになるからね」
意味深な笑みを浮かべるパリケル
どれほどの変わり者なのか少し不安になる一行だった
その集落は最初ルーナがいた森、“獣魔の森”から数キロ先にあるらしい
詳しい場所は森を抜けた街道に看板があるのですぐわかるのだそうだ
どの種族も大歓迎と書かれているんだとか
「なんか、ホントに変わったエルフたちなんだね」
トロンが苦笑する
エルフとは本来排他的で自分たちこそ最高位の種族だと疑わない者が多い
そのため多種族と関わったり交わったりした者、それにより生まれたハーフエルフやダークエルフは里を追い出された
「じゃ、行くぜな」
パリケルもついてくるらしい
ささっと荷物をまとめると準備万端といった感じでトコトコ後を歩いてついてくる
「パリケル、研究はどうするのよ」
「そんなもの後でどうとでもなるぜな」
「機材は部下が直せるし、研究は同志たちが続けてくれるぜな」
それよりもこの子の魂は面白そうだとかなんとか言いながら嬉しそうについてくる
まぁ件のエルフと交渉できそうなのは同じ変わり者のパリケルがやると言ってるので任せることにした
かくして四人の旅が始まった(アルは一応報告のために戻ると言っている)
行ったことのない場所なので転移魔法は使えない
パリケルが先頭を歩き案内しながら約3日の道のりを進むことになった
森を進むためかなりの数の魔獣がいるが、リュネとトロンは攻撃系の魔導が使えるため問題ない
トロンに至ってはそこいらの魔獣ならどれだけいようが蹂躙できるほどの力はあると言う
ちなみにパリケルは戦闘力が皆無で、できることといえばその辺に落ちている木の棒で女の子らしく殴るくらいだった
本人は真面目に攻撃しているらしいが、どう見てもただただ可愛いだけで効果がない
戦闘は二人が主にすることにし、少女二人は守ってもらう形となった
道中にはオルトロスやブラックドッグ、オックスベアという巨大な牛と熊の混ざったような魔獣、グールハウンドという襲った獲物をグールに変えてしまうヤバいものなど、獣魔の森というだけあって獣系の魔物が多かった
そのどれもがたった一撃で屠られていく様は圧巻だった
無詠唱で放つ炎や氷の一撃一撃がどれも強力で、トロンとリュネの強さがよく分かる
特に苦も無く進め、予定通り三日で集落にたどり着いた
言われてた通り大きな木の看板に地図が書かれており、迷うことはなかったが、行くのをためらうほど変な看板だった
なんというか、よく言えば芸術的、悪く言えば悪魔が書いたのかと思わせるような迫力がある
が、それはまぁ置いといて、集落内に入ると、そこは自然を利用したなかなか大きな集落で、エルフ以外にも多種族が暮らしているようだった
中でもダークエルフやハーフエルフが仲良く作業したり子供たち同士も弊害なく遊んでいた
ここでは一切の差別は許されず、みんな仲良くがモットーらしい
ついてすぐにここの住人達に歓迎された
種族的に今まで見たことないであろうルーナのことは特に歓迎しているようで、まるでVIP待遇だった
すぐに宿に案内され、そこでは豪華な食事がふるまわれる
自然の恵みをふんだんに使った野菜料理や川魚の塩焼き、狩りで得たジビエ肉の燻製など、どれもこれもが天にも昇るような美味しさだった
特にルーナは今までここまで豪華な食事をしたことがなく、がっつくように食べていた
トロンとリュネは大人らしくおしとやかに
パリケルは貴族らしく優雅に食べている
食べ終わったところで応対してくれたハーフエルフとダークエルフの姉妹にメトルのことを聞いてみた
どうやら彼は集落の奥でこもって研究しているらしい
たまにふらっと出てきて子供たちに勉強を教えてまたふらっと戻るのだそうだ
今も研究所に引きこもっているそうなので会いに行くことにした
研究所に案内されると、竜人と人間のハーフという秘書の女性が出迎えてくれ、応接室にてこの集落特産の緑茶のようなお茶を入れてもらい、彼を待つことになった
それから数十分後、真っ白な白衣に身を包んだ容姿端麗なエルフが手を振りながら走って来た
「やぁ!よく来てくれたね!僕の研究所、次元調査研究室へようこそ!」
「案内するよ、さぁついてきなさい、さぁさぁ!」
強引に案内しようとするメトルをパリケルが制止する
「待て待てメトル、お前は会い変わらず強引だぜな」
少しぎょっとした顔でパリケルを見る
そして考え込む
「あなたのような美少女の知り合いはいないはずですが?」
「はて、どこかで僕と会いましたか?」
首をかしげる
そのしぐさにはエルフらしい気品があ溢れていた
「俺様だよ!パリケルだぜな!」
「…」
「あなたが?冗談はおやめなさい可愛い娘さん」
「私の友人パリケルはもっとむさいおっさんのはずです」
「悪かったなむさくて、信じれないならお前の学生時代の恥ずかしい思い出をここですべてさらけだしてやろうか?」
「まずは隣のクラスのマドンナのリスカちゃんにお前が描いていた妄想から」
「ままままままってください!」
「それは確かに僕とパリケルしか知らない話!」
「た、確かにパリケルのようですね…」
かなり慌てている
どんな妄想をえ描いていたのか気にはなったが、頭から振り払ってひとまず話をすることにした
戦闘シーンが少ないけど、あとあとたくさん書こうと思ってるので今はこのくらいです