石野の異世界放浪記3‐2
黒い男の襲撃から三日
男は再び襲ってくることはなかった
ビルもすでに修復が始まっている
この襲撃での死者は辛うじて0だったが、重軽傷者多数
ビルの一つが機能しなくなっていた
「ま、しばらく仕事はお休みさね。 蓄えはあるとはいえ、ちょっときついね」
苦笑いを浮かべる紫音
「そこでなんだけど、もしよかったら一緒に戦ってくれないかな? あなた、神様に認められるんだから強いんでしょ?」
「強いかどうかは分からないが、協力はする。 このまま放っては置けないしな」
「ありがとう、助かるさね」
ひとまず対策を打つため、紫音の仲間たちと共に会議室へと入った
彼らは皆魔王を倒したときのパーティだそうだ
受付嬢のエルフのアリス、オーガのベル、魔術師で人間のロス、兎人の癒術師マルカ
この五人で魔王に立ち向かったのだとか
魔王討伐後はそれぞれこの会社の社員となっている
アリスは受付嬢(怪しい人物を排除するためこの場所にいるらしい)
ベルは案内(もし紫音の命を狙う者がいた場合、彼女とアリスが排除するため)
ロスは技術部リーダー
マルカは医療部門のトップ
「さて、今回現れた敵は特殊なんだけど、どう思う?アリス」
「はい、やはり紫音様のお命を狙った魔王の残党かと」
「私もそう思います」
「アリスとベルは同じ意見か」
「ロスは?」
「残留した魔力を調べたんだが、確かに魔王に似ている。 だが、これまで見たことのない魔力波も確認された」
「見たことない魔力波?」
「俺にもよくわからない。 そっちに座ってるやつの方が知ってるんじゃないか?」
ロスは石野に話を振った
「そうですね。 彼の意見、聞いてみたいです」
マルカもそれに同意した
「俺に振られてもな…。 レコ、あれについて何かわかるか?」
「はい、あれは恐らく闇の残滓が魔王の魂に取りついたものだと思われます」
「闇の残滓?」
「私の尊敬するアマテラス様がおっしゃってました。 まだ世界が生まれるよりもはるかな昔、大神様が神々を生み出すよりも前に世界にはびこっていたモノ、それが闇なんだそうです。 すごく邪悪で、かつて悪魔たちに取りついて神々と戦争をしたそうです」
「何それ、そんなヤバいものがなんでこんなところにいるのさ」
「それは分からないですよ。 私はあくまで神獣であって、神様ではないので詳しいところまでは…」
申し訳なさそうに耳を垂れるレコ
その頭を石野は撫でた
嬉しそうに目をつむるレコ
見ていて癒される光景だった
「ひとまず俺が防御用の結界を張っておいた。 あれがまた来た時少しは持ちこたえるだろう」
「あの~、結界ならミーにも手伝わせて欲しいのであるが」
猿と書かれた玉から理知そうな少女が飛び出る
「ミーは狒々のエコである。 結界なら任せるのである」
エコは手を広げた
「狒々王の守護!」
広げた手を床に叩きつけると、魔法陣のようなものが広がり、ビル全体にいきわたった
「フフフ、これこそミーの加護なのである!」
胸を張るエコ
「やつの力を分析して攻撃の一切を通さない仕様にしたのである! ミーの頭脳がなせる業なのである!」
「すごいな、そんなことができるのか」
エコの頭をなでてやると、彼女もそれがうれしいらしく、細長い尻尾を振って喜んでいた
「ふむ、確かに守りがさらに強くなっている。 ここまでの結界、俺ではとても無理だ」
ロスは感心しながらも、少し悔しそうな顔をしている
「何を言ってるであるか? ミーの結界はおぬしの結界あってこそのものである。 おぬしの結界は完ぺきなもの。 誇るといいのである!」
それを聞いてロスも満足したように笑みを浮かべた
「さて、守りは固めれたさね。 あとは奴が来るのを待つばかりか」
ひとまず会議を終わり、全員このビルで黒い男が再び襲撃するのを待つことにした
監視にはヤコとアリスがつくことになった
ここ少し長いので分けてます