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3-35

 楽園、美しい花畑が広がるこの国では花人達が魔王に操られていた

 魔王はこの国に突如として生えた巨大な花

 禍々しい姿で、花弁の中から少女の姿が覗いていた

 アルラウネ

 花人達とは手を取り合って暮らしていたはずの種族だった


「どうやらあの者も操られているようです。 あの者を元に戻せば花人達も正気を取り戻すはずです」


 どす黒い花弁からは甘い香りが漂い、内部の美しい少女は自分のための城を築くために指示を飛ばしていた

 花人も、配下のアルラウネたちもその指示にしたがい、木々を運んでいるようだ


「誰?!」


 アルラウネの魔王はこちらに気づいたようだ

 声を発すると、作業をしていた花人もアルラウネたちも全員がこちらに目を向けた

 その目からは感情が感じられない


「来ます! 備えてください!」


 一斉にこちらに突撃してくる操られたこの国の民たち

 傷つけずに無力化するため、ルーナは結界を張って彼らを閉じ込めた


「な! 私の配下を一気に!?」


 驚いている花の魔王をいなみが抑え込んだ


「力は弱いみたいだね」


「くっ、放せ!」


 暴れようとするが、ガッチリと捕まれ動くことができない 

 

「ルーナちゃん!」


「はい!」


 すぐに彼女から闇を払った

 

 黒いもやが体から抜け出ると、先と同じように彼女は正気に戻った


「あれ? なんでこんなとこに? あなたたちは誰?」


 キョトンとしている

 まわりでは彼女の配下のアルラウネや花人達が目覚め始めていた


「みんな、大丈夫?」


 花から飛び出して心配そうに彼らに駆け寄る少女

 事情を聞いて驚いた


「まさ、私がそんなことを…」


「操られていたのですから仕方ないですよ」


「でも、みんな私を慕ってくれてるのに、こんなひどいことをしちゃって」


 悲しんでいるが、花人もアルラウネたちもまったく気にしていないようだ

 むしろ、彼女を操ってそんなことをさせた闇に対して怒っていた


「みんな、ありがとう」


 深々と頭を下げる

 人々は戸惑うも、なんとか少女を落ち着かせ、共にルーナ達に頭を下げた


「ここはもう大丈夫ですね。 次で八人目、順調に魔王を倒せています。 居場所はカリアニア聖王国です」


 ディゼルアを信仰する巨大な宗教国家だ

 楽園からほど近い国


「すぐに向かいましょう」


 カリアニアに来ると、不穏な雲がかかっていた

 日に照らされると真っ白に輝く美しい国だったはずが、今は太陽が黒い雲に隠れてしまい、不気味な雰囲気が漂っている


「どうやらもう魔王に占拠されてしまっているようですね。 常に感じていた彼らからの信仰が感じられなくなっています」


 神聖さが失われたカリアニアへと入国すると、黒い生気の感じられない騎士達が大通りを歩いていた

 それに指示を飛ばしているのはアンデッドのリッチだ

 

「どうやらアンデッドたちがこの国を支配しているみたいだぜな。 ドローンに様子を見に行かせるぜな」


 物陰に隠れると、パリケルは四号を起動させてドローンを飛ばした

 光学迷彩と消音機能をつけているため、触られない限り気づかれないだろう


「お、映像が届いたぜな」


 カリアニアで一番大きな教会

 そこには教皇がいたはずだが、姿が見えず、代わりに多数のアンデッドと、そのボスと思われるアンデッドの魔王がいた

 美しい宝石で着飾り、教皇が持っていた錫杖を手に、アンデッドたちを使役している

 顔は髑髏、目だけが怪しく光っていた


「教皇を探してください。 彼は私の声を聴くことのできる数少ない人です。 彼無くしてはこの国は成り立ちません」


 言われた通り、ドローンたちが隅々まで彼を探した

 その結果、教会の地下に他の教会関係者と共に幽閉されていることが分かった


「やつらに殺害されていなくてよかったです」


 心底彼らを心配していたのか、タリオンはほっと胸を撫で下ろした


「よし、じゃぁちょっと行ってくるよ」


 いなみはいつの間に覚えたのか、ルーナの見よう見まねで認識阻害を発動させた

 あっという間に教会へともぐりこみ、地下まで駆け抜けると、牢獄から誰にも気づかれないよう教皇たちを救出し、ゲートを開いて彼らを連れて戻って来た


「はや! もう終わったんですか!?」


 デリアルは目を丸くして驚いた

 

「まだ魔王が倒せてないから終わったわけじゃないけどね」


「助かりました。 我々には戦える者がいないのであっという間に占拠され、途方に暮れていたところです」


 教会を守っていた騎士たちは倒され、アンデッドに変えられてしまっという

 街を歩いていた黒い騎士たちは彼らの成れの果てだった


「彼らは全員アンデットなんですよね?」


「えぇ、そのようです。 しかし我らの聖魔法が効かず、何かに守られているようでしたね」


 恐らくそれは闇だろう

 それならばとルーナはこの国全体を覆いつくすほどの闇払いを行った

 

 一瞬で黒い雲は晴れ、日の光が降りそそぐ


「これで良しっと。 あとは…。 ホーリーフォール!」


 強大で巨大な聖魔法がカリアニア全体に落ちた

 物理的ではなく、邪悪な魂のみを浄化する魔法

 それにより、魔王ごとすべてのアンデッドが浄化された


「これは…。 まるで神の御業…。 もしやディゼルア様の」


「はい、ディゼルア様の使いです」


 混乱を招かないようそう答えておいた

 祈り始める教皇たちに後を任せ、次の魔王の元へ行くことにした


「残りは四人、彼らを倒せば必ず闇自身が動くはずです。 次の魔王は海人やマーメイドたちが住む深海です!」


 深海へはルーナが結界を張って潜ることになった

 強固な結界であるため、深海の圧力にも耐えることができる

 深海は予想と違い、美しく、海人とマーメイドたちにより発展していた


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