集合と散在7
二人は黒いものを見つめていた
「なにあれ? 気持ち悪いな」
「えぇ、気持ち悪いわ」
その黒いものは段々と二人に近づいてくる
「来ないでよ」
フィフィが手を黒いものに向け、散らす
その一部がフィフィにへばりついた
「もう! 何よこれ! 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!」
「ほら、こっちにおいでよフィフィ。 僕がとってあげる」
フィフィに付着した黒いものをとろうと手を伸ばすと、フィフィが拒絶した
「触るな!」
普段のフィフィなら絶対にやらない行動
ショックのあまり、メロは固まった
「ど、どうしたんだいフィフィ。 触らなきゃとれないよ?」
「取らなくていいのよ」
不気味に笑うフィフィ
明らかに様子がおかしかった
「フィフィ、何言ってるんだい?」
動揺するメロ
その時、フィフィにへばりついた黒いものから邪悪な気配を感じた
「フィフィ、すぐにそれをとるんだ! さぁ、こっちにおいで」
ゆっくりと近づくメロから逃げるように後ずさるフィフィ
「来るな! 来るな!」
メロは間合いを一気に詰めると、黒いものを払い落した
「あ、あれ? メロ、どうしたの? あ、わかったわ。 またキスがしたいのね」
恥ずかしそうに頬を染めるフィフィ
どうやらもとに戻ったようだ
「覚えて、ないのかい?」
「何が?」
どうやら今の出来事を丸々覚えていないみたいだ
「大丈夫? 体に異変はないかい?」
「もうメロったら、そんなに私の体を見たいの? いいわ、見て」
ぼろ布の服を脱ごうとするフィフィ
「あ、うん、見たいけど今はそうじゃなくて、さっきの黒いもの。 あれが君を操ってたみたいなんだ」
「え? 私、操られてたの?」
全く身に覚えがないと言った感じのフィフィ
「とにかくこれ、ヤバいから、直接手を出さないようにしよう」
「うん、メロが言うならそうするわ」
黒いものはまだ蠢いている
「えいっ」
フィフィは力を使い、触れることなくそれを分解した
「はい、処理完了ね」
黒いものは完全に消滅したようだ
「それにしても、これ何だったのかしら」
「分からない。 深淵にアクセスしてみよう。 何かわかるかも」
「そうね。 やってみるわ」
目をつむり、自分達が生まれた深淵の知識へとアクセスする
そこから情報を引き出すのだ
この深淵を、神々と一部の人々はこう呼ぶ
「アカシックレコード」と
過去、現在、未来においてすべての情報を持つアカシックレコードにアクセスできるのは一部の大神とアカシックレコードの片隅で生まれたこの二人、そしてアカシックレコードに選ばれた一人のみだ
「ん、わかったわ。 あれは闇って呼ばれる世界の敵、私たちの敵だわ」
「そうか、まぁ僕のフィフィを操るなんてふざけた真似をしたんだから、どっちにしろ許さないけどね」
「そうね。 私を操ってメロを拒絶させるなんて許せないわ」
二人は闇をターゲットにして再び動き出した
「うまく誘導できたみたいですね」
「はい、ですがよろしかったのですか? あれは得体が知れません」
転移の女神エインカが問う
「彼女らは確かに危険かもしれませんが、消している世界はどれも消滅が決まっていた世界です。 それに、シンガがやられるほどの相手です。 こちら側に引き込む方が得策でしょう」
闇の残滓を二人にぶつけた天の神ラシュア
得体のしれない二人を引き込むことで現在復活しかけている悪魔と戦うための戦力にしようと画策していた