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王都に来た俺はすぐにうわさの女の子たちを探すことにした
既に噂は王都中を駆け抜けていたため、すぐに見つかった
王都で一番上等な宿に泊まっているらしい
しかも、国賓扱いで城に滞在することもできたのに、それを断って自分たちで宿をとったのだ
なんて欲のない人たちだ
宿に来ると、すでに人だかりができていた
王都中の人間が集まっているのではないかと思うくらいの人の多さだ
「すいません、通してください」
女の子の声がする
可愛い声だ
その声の主らしき女の子が人込みから抜け出してきた
翼があり、角があり、見たことのない種族だ
鬼人族と翼人族のハーフなのだろうか?
でも、角が捻じれているってことは魔族とのハーフなのかも
まぁ魔族にも良い人はいるし、なにも魔王に与しているやつらばかりじゃないから、ハーフもいるか
その子の後ろから騎士のようなエルフの女性、変な道具を背負った俺より少し年上くらいの少女、そして、最後に出てきた少女を見て俺は雷に打たれたような衝撃を受けた
真っ白な髪に天使のような翼
白い肌が際立って目立っている絶世の美少女が出てきたんだ
「あ、あの!」
思わず声を出してしまった
「何? 僕に何か用?」
可愛らしく小首をかしげるその子のしぐさに胸の鼓動が速くなった
「あ、あの、魔王を倒してくれてありがとうございます!」
何とか振り絞ってそれだけ言えた
「…あなた、ちょっとついてきてもらえますか?」
先頭にいた女の子がジッと俺を見た後、俺の手を引っ張った
「え? ちょ、何?」
外に出ると、いきなり翼を広げ、一気に空を飛んだ
「うわわ、なになになにして!」
問答無用とでもいうように俺は連れ去られた
後ろから三人もついてきている
てかあの美少女、他二人を抱えて飛んでる
力もあるのか
「ここまでくれば人もいないでしょう」
「あの、俺はこれから何をされるんでしょうか?」
恐る恐る聞いてみた
魔王討伐の英雄がなぜ俺をこんな人気のないところに連れてきたのかわからないが、この状況、結構怖かったりする
「警戒しないでください。 あなた、この世界の勇者ですね?」
「え? あ、あの、何のことか…」
とぼけてみた
確かに俺はこの世界の神様に選ばれた
その状態が勇者と言えばそうなのかもしれないが、魔王を倒したのはこの子だ
むしろ勇者はこの子だと思う
「あなたからわずかに神力を感じます。 神様から力をもらったのでは?」
参ったな。 正解だ
何なんだこの子は
「あ、それは、その…」
「やっぱりですか。 すいません。 勇者様の仕事を奪うようなことをして…。 人が攫われてたので思わず」
なんだ? 何で謝ってるんだ?
「いや、それはむしろこちらもありがたいというか、おかげで平和になったわけだし」
「怒らないのですか? 本当ならあなたが英雄としてもてはやされていたはずです」
「いや、俺は世界が平和になるんならそれでいいんだ」
ルーナはこの男の子をよくできた人だと思った
つまり、この男の子は名誉などに興味もなく、ただ純粋に平和を願っているということが分かった
「じゃぁ俺はこれで。 平和になった世界を謳歌するよ」
「待ってください」
いきなり天から響くような声がした
「あれ? この声は、ディゼルア様?」
「デリアル、この方たちに強力を仰ぎましょう」
「協力? 何のですか? 魔王はもういないんですよ?」
そう、魔王はルーナによって消滅した
もはや脅威はないはずだ
「何を言っているのです。 あの程度は脅威でも何でもありません。 デリアル、あなたでも簡単に倒せたはずです」
「え?」
「本当の脅威は、あれを操っていた闇です」
「闇?」
「闇!? まさかここにも…」
この子たちは何か知っているみたいだ
闇か、確かに聞こえから言えばいい印象はないな
「闇は遥か昔から世界に悪影響を与える存在です。 かつて悪魔たちに力を与え、神々と戦争を起こした邪悪な意思、それが闇です」
「じゃぁ、まだ脅威は去っていないってことですか?」
「えぇ、ですからこの異世界から来た方たちに強力をお願いしたいのです。 私よりも強い力を持った方が二人もいるのですから」
「え? 神様より強いって…」
「私たちに協力できることがあるのなら、闇と戦います。 私達が世界を渡って旅をしているのは闇と戦うためでもありますから」
「それは心強いです! 是非ともお願いします」
ティゼルア様が頭を下げている
本当にそれほどまでに強いのか、この子は
「でも、闇ってどこにいるんですか? 魔物みたいな感じなんですか?」
「闇はめったなことでは姿を現しません。 悪魔がこの世界にいるのなら話は別ですが、この世界に悪魔は封印されていないので、闇自体がこの世界の者を操って何か仕掛けてくるはずです」
「なるほど、じゃぁそれを叩いて行けば引きずり出せるってことか?」
騎士のお姉さんがそう言った
「そうです。 魔王を倒されたことで相手は何か画策しているはずです」
「ルーナ、もう魔力は溜まってると思うけど、闇を倒してから次の世界に行かないかぜな?」
「はい、私もそのつもりです」
「よし、話しは分かったぜな。 俺様達も協力するぜな!」
変な道具を持った少女がそうしめた
俺も力を振るうかもしれない
気を引き締めよう
見ただけで動きや能力をコピーする能力は
海外のヒーローズってドラマ見て参考にしました
写輪眼じゃないよ