3-20
早朝、潜伏していたニューヨークの地下
地上でかなり大きな爆発音がした
パリケルの作った警報もけたたましく鳴り響いている
「戦闘準備! 敵襲!」
リゼラスが統率を取り、指示を出して戦闘態勢に入った
「警報からして数人の能力者が来ているぜな。 十分気を付けて行くぜな」
パリケルが警報を確認しながら注意を促す
ルーナも準備を終え、上へと昇り、周囲を見渡した
「これは、何てひどい」
周囲は更地になっていた
倒壊していたビルも全てが完全に粉々に砕け、砂のようになっている
「お、出てきたぜバロン」
「なるほどなるほど、これだけの数の能力者が一堂に会するとは、日本、ステイツ、ヨーロッパですか」
「あんたたち、ステイツを裏切るなんていい度胸なのよね。 全員バラバラに引き裂いてあげるから覚悟しなさいよね」
そこにいたのは三人の能力者と、10個大隊の無能力者の兵士たち
兵たちには能力を無効化するための兵器が配備されていた
「あ、あれは、ステイツの部隊長デス。 いずれも強力な能力者デスよ!」
メリルが叫ぶ
「能力者は三人だけ? なら私の敵じゃないわ」
すでにサニーにシフトしていたルーナ
サニーは絶対的な自信を持って三人の前に立ちふさがった
「日本のエースかなにかか? 俺たちにかなうとでも?」
三人の中の短髪の女性が前に出た
スカジャンだけを上半身に羽織り、胸が見えるか見えないかギリギリのライン、それにデニム、いかにもヤンキーと言ったいで立ちだ
「俺はアイル・エルドラス。 ステイツの部隊長だ!」
アイルは真っ先に能力を発動した
能力は重力操作
彼女が拳を打ち付けるように振り下ろすと、サニーに通常より10倍の重力負荷がかかった
「なに? 重力がかかってるの? 何も感じないからポーズだけ取ってんのかと思ったわ」
あっさりとその重力下で動き出す
「嘘だろおい、普通これで動けなくなんだろうが」
アイルはさらに圧力を増す
普通の人間なら押し潰れているだろう
「う~ん、ちょっとだけ重い? あ、気のせいだったわ」
それすらも何も感じていない
普通に動くのと変わらないスピードで歩み始めた
「う、あぁあ」
恐怖におののくアイル
今まで自分の能力で殺せなかった相手などトラヴィス以外にいなかった
しかも彼は同じアメリカの仲間であるアイルに敵意は向けていない
だが今サニーから向けられているのは剥き出しの殺意だった
「来るな! 来るなぁ!」
さらに重力をあげていくが、それでもこちらに笑みを浮かべながら向かってくるサニーの姿は恐怖の対象でしかなかった
「あ」
あまりにも強いストレスで失禁するアイル
それにより重力も解けた
「ん? 今解いた? かかってんのかかかってないのか分かんないのよ。 あんたの能力」
アイルに向かって拳を振り下ろした
その拳は地面をえぐり、アイルは恐怖のあまりに気絶した
「なるべく殺さないようお姉ちゃんに言われてんのよ。 あんたたちもさっさと帰るなら見逃したげる」
「それはできない相談です。 それにしてもまさかアイルを恐怖だけで倒してしまうとは驚きです」
紳士的ないでたちの男性
先ほどアイルにバロンと呼ばれた男だ
「わたくしはセルバ・アメイン。 皆さんからは親しみを込めてバロンと呼ばれております」
セルバは帽子を脱いでゆっくりとお辞儀した
手に下げていた杖をサニーに向ける
「では、わたくしの力をお見せしましょう。 もっとも、これを見たときには終わっていますがね」
杖をそのまま地面に降ろし、ノックした
歪む周囲
セルバの能力は空間の歪みだ
歪曲した歪みによって相手を捻じ曲げてしまう
「あら? 振動してるわ。 ちょっと気持ちいいわね」
眼を見開いて驚くセルバ
何が起こったのか全く理解できていないようだった
「さっきの子よりは強いのかしら? まぁ敵じゃないけど」
そう言うとサニーは近づき、セルバの額を軽く指ではじいた
後ろにいた兵たちときりもみしながら吹き飛んでいく
「バロンさん!」
もう一人控えていた部隊長が彼を介抱する
どうやら彼女は治療専門のようで、戦う力はなさそうだ
「一旦引くのよ! あんな化け物がいるなんて聞いてないのよ!」
「そ、そうだな。 私はもう大丈夫、アイルを連れて行ってやってくれ」
「はい!」
三人と兵士たちは慌てて逃げていった
「ふん、なによ。 あれで部隊長? 弱すぎない?」
「い、いえ、あなたが強すぎるんだと思いマス」
あっけにとられるメリル
「でも、この強さならトラヴィスにも勝てると思いマスよ!」
確信して興奮している
「早く出てきてくれれば楽でいいんだけど」
(ありがとうサニー)
「ん、戻るねお姉ちゃん」
あっさりとエース三人を退けたが、まだトラヴィスが来ていない
未来を改変する能力
ルーナでもその力にあらがえるのかは不明だった