神々の捜索4
ここは力を持った人間たちがヒーローと名乗って活動する世界か
まぁ自分たちで平和を守るならいい傾向だ
神の力が良いように作用しているんだろう
「さて、兄貴のかけらはっと…。 東か」
探知しながら空を飛び、欠片の気配のある小さな島国へと降り立った
人目にはついていないが、力を持った者が多いこの世界
警戒しておくに越したことはない
「ふむ、キュカの姉貴によると、この国の中心にあるみたいだな」
ミナキは国の首都へと向かった
首都にある和風の城、その天守閣に安置されているようだ
「まっためんどくさそうなところに…。 ちっ、下手に力持ってるし、宝石としても価値が高いからな。 仕方ねぇっちゃ仕方ねぇんだが。 あーめんどくせぇ」
そうは言いながらもシンガのかけらを集め、丁寧にしまっている
シンガのことが大好きだったミナキらしいといえる
「うわ、警備もいるのか。 まぁそうだよな」
仕方なく警備に近づいて行く
「なぁお前ら」
「はい、何でしょう? ここからは立ち入り禁止ですよ? 観光なら右手の道を進んでみてください。 城が一番きれいに見えますから」
「わりぃが観光じゃねぇんだわ。 その中にあるかけら…。 宝石に用がある」
「ですからここは立ち入り禁止でしてね」
「はぁ、そこにあるのは俺の兄貴でね。 返してもらわねぇと困るんだよ」
「返す? これは国宝ですよ? とにかく、ここにいれることはできませんので」
「じゃぁしょうがねぇな。 押し通る!」
ミナキが警備の視界から消えた
「あれ? いない? どこに行った。 念のため周囲を警戒しておこう。 それと、ヒーローに連絡を」
警備たちは自分たちにできる仕事をし始める
その時ミナキはすでにかけらのある部屋の前にいた
「ここか。 警備がザルでよかったぜ」
部屋のふすまを開けようとしたその時
後ろで声がした
「お嬢ちゃん、盗みはいけないな」
振り返ると、赤を基調とした仮面に、真っ赤なマフラー、ぴっちりとしたボディースーツに外装がついた装備を着ている男が立っていた
「なんだお前? あぁ、ヒーローか」
「そう! 私の名前はトップギア! ヒーロー界でもナンバー2と歌声高い俊足のヒーローだ!」
決めポーズをきっちりと決めたかと思うと、男はいきなり視界から消えた
「速いな」
既にミナキの腕をつかんでいる
「今なら不問にしてあげられる。 あきらめて帰りなさい。 女の子なら宝石が欲しい気持ちもわかるが、犯罪はよくない」
「話にならねぇ」
トップギアの手を掴み直し、投げ飛ばした
「な!?」
トップギアは驚いて声をあげる
「そのまま寝ときな。 そうすりゃ無傷で返してやるから」
「そうはいかん! 俺はヒーロー! 目の前で過ちを犯そうとする少女を救うのも俺の役目だ!」
頭をポリポリと掻きながら近づいて行くミナキ
「あんたは間違ってねぇよ。 それでいい。 それでいいんだよヒーローってのは」
ミナキはトップギアの額に手を当てると、最小限の力で彼を気絶させた
「いいね。 こういうやつがもっと増えればいいんだが」
そしてふすまを開けるミナキ
その奥に虹色に光るシンガのかけらがあった
「回収完了っと」
かけらを懐にしまっていると、後ろで気配がする
「なんだ。 気づいてるのか。 トップギアがやられたことはある」
そこには筋肉隆々の青いマスクに深紅の目元、青と黒のヒーロースーツを着た男がいた
一見脳筋のように見えるが、気配を完全に消して近づいてきたあたり、彼の強さがうかがえる
「あんた。 明らかにさっきのやつより強いな」
「だろうな。 これでも最強と言われている」
いやみなく言い切った
「俺はグランナイト、初めに言っておく。 俺には絶対勝てん」
「自信満々だな」
言い終わったときにはすでに背後に回られていた
「なるほど、自信があるのもうなづけるな」
振り向くとまた後ろに回られている
「さっきのやつより速いな。 いや、トリックが分かった」
「ほぉ、お嬢ちゃんに見破れるとは思えんが、一応聞いておこう」
「時間停止だろ?」
グランナイトは驚いた
自分の能力は公にされていない
それなのにあっさりと見破られたのだ
「何故分かった?」
「俺にそんな能力効かねえからだよ。 神様ってのはな、時間に縛られないんだよ」
「神だと? ずいぶんと大きく出たものだな」
再び時間停止を発動させるが、ミナキはその中であっさりと動いて見せた
「効かないんだって」
世界の時が止まっている中、動いているのは二人だけ
「まさか、同じような能力を持って…」
「いや違うって言っただろ」
ミナキが手を振る動作をすると、砕けるように時間停止が解除された
「一体何が…」
そのまま一瞬で間合いを詰めると、その風圧だけでグランナイトは壁に叩きつけられ気を失った
「ふぅ、また誰か来ないうちに次に行くか」
倒れた二人を優しく寝かせ、この世界を去った
「なかなかいい世界だったな。 あいつらみたいなヒーローがもっといろんな世界にいてくれればいいのにな」
嬉しそうにミナキは次の世界を目指して狭間の世界を飛んだ
ミナキの来た世界はいずれ本編でも出す予定です