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続いて聞いたのはメリル含めたレジスタンスの情報だ
それに付いてはデルクが知っていた
ニューヨークの地下鉄、その線路に隠し部屋がいくつかあり、そこに分けて閉じ込めているみたいだ
メリルは激しく抵抗したため暴行を受け、そのまま閉じ込められたために命の灯が消えそうになっている
早く救出しなければ危ないかもしれない
「メリルさんのところには私と遠藤さんで行きます」
ルーナの言う遠藤とは治癒能力者だ
もともとは傷口に塩を出現させるという意味のない特殊能力者だったが、魔力の流れを修正したことで強力な治癒能力を使えるようになっていた
手分けしてニューヨークの地下を駆け巡り、やがて捕らえられていたレジスタンス、そしてニューヨークの人々を助け出せた
ちなみに二人に指示を出したのは大統領
これは予想出来ていたことだったので驚きはなかった
二人は大統領個人の兵だったというわけだ
下した命令は、住人には危害を加えないことと、レジスタンスは生かして捕らえることだ
何故レジスタンスを生かして捕らえるよう言ったのかまでは分からないらしい
それと、隕石を降らせていた少女は同じように任務に駆り出された能力者で、ロシア側の兵だそうだ
無事メリルを救出、気を失い、かなり衰弱していたが、ルーナの治癒の力によって無事回復した
いまだ気を失ってはいるが、しばらくすれば目が覚めるだろう
「よかった。 メリルさんを救出できた」
なんとかなったが、まだ問題がある
デルクの能力はかなり強力で、世界的に見ても敵なしなのだろうが、彼は表舞台に出ていなかった能力者であり、当然アメリカの表舞台にも強力な能力者はいる
その能力者がいつ襲ってくるとも限らないのだ
目の覚めたメリルにその能力者の情報を聞いた
「彼はやばいのデス。 アメリカが有する能力者で一番強いのデスよ。 デルクという能力者も強かったデスが、彼は一線を画してます」
心底恐ろしいという顔をするメリル
能力は目の前で見たわけではないが、話しには聞いているらしい
「名前はトラヴィス。 本名は知らないデス。 ただ皆からトラヴィスとだけ呼ばれてました。 能力は未来改変。 そのまま進むべき未来を改変する能力デス。 これほど強力な能力もありまセンよ」
「どういうことだ? いまいち把握できないが」
「彼を殺すとするでしょう? でも、彼を殺すことはできません。 そんなことはなかったと未来をねじまげられるのデス」
「それは厄介だな。 ルーナでも倒せない? のか?」
「分かりません。 でもやるだけはやってみます」
デルクの場合は想像して事象を起こすが、トラヴィスの場合は物事の行く末自体を変えてしまう
死ぬべきでない者も彼に改変されると死ぬ
逆に死に向かっている者は生き延びる
未来を変えてしまう力は自分の思うように何もかもを変えてしまう
しかしトラヴィスには欲がない
それに愛国者だ
そのため自ら世界を支配しようとも変えようとも思わない
「いずれにしてもまず大統領を捕まえる必要があるぜな。 他国と協力しているとなればそちらの協力者の襲撃にも備える必要があるぜな。 よし、ちょっと待ってるぜな」
パリケルは何かを思いつき、何人かの能力者を連れて安全そうな建物に入っていった
それから数時間ほどで戻ってくると、手に機械が握られていた
「できたぜな! これで襲撃も怖くないぜな!」
機械を起動すると警報音が鳴り響いた
「おっと、設定し忘れてたぜな」
警報を止めるとスイッチを押し、設定し始めた
「これでよし」
「なんですかこれ?」
「フフフ、いい質問ぜな。 これは能力者が近くにいるのがわかる装置ぜな。 ここにいる能力者は入力しておいたから、ここにいる人以外の能力者が半径一キロ以内に近づくと警報が鳴るぜな」
現在この装置にはこの場にいる能力者の情報が入力されているため反応しない
入力は手作業だったため何人か連れて行ったというわけだ
「とりあえずこれで安心だな。 皆疲れているだろうからしばらくここで休もう」
リゼラスの提案に全員同意した
この装置さえあれば見張りを立てる必要もないだろう
全員ゆっくりと休憩をとることになった
そして次の日、恐れていた事態が起こってしまった