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3-18

 ニューヨークの有様もテキサスに負けず劣らず悲惨だった

 大都会ならではのビル群はくずれ、広い道路にはひびが入り、ところどころに穴が開いている


「ひどいありさまだな。 だが、人の死体がないのはどういうことだ?」


 周辺を探すが、これだけの被害にもかかわらずどこにも死体がない

 噴煙が上がっているのでここが破壊されたのは少し前のことだというのにである


「ここが破壊された時の情景を見てみるぜな? ルーナ、あれは映像を移すものだったよな? あれに映ってるんじゃないか?」


 パリケルが指さしたのは防犯カメラだった

 

「なるほど、パリケルさん、これ、この辺りの物を集めれますか?」


「簡単だぜな。 二号ちゃん、これを集めるぜな」


 背中に背負っていたパリケル二号を起動させると、防犯カメラを見せて集めるよう命令した

 二号の背中から小型のドローンが5台ほど飛び出し、空へと舞いあがった

 そのドローンたちにはクレーンゲームの三点アームのようなものがついていて、回収任務に向いている機体だった


 しばらく待っているとドローンたちが戻って来た

 そのクレーンにはカメラの映像の入ったUSBやビデオテープなどがぶらさがっている

 カメラ本体を持って来ないあたり、パリケルの作るAIの優秀性がうかがえた


「映像を解析するからしばらく待って欲しいぜな」


 パリケルは二号をPCのような装置に変えるとさっそくすべての端末を差し込み、空間にモニターをいくつも投影して解析し始めた

 なんと、その場でみんなが見やすいように編集までしている

 

「よし! できたぜな!」


 ターンとキーボードをたたくと大き目の映像が映し出された

 ノイズ除去までされており、かなり見やすかった


 何の変哲もない綺麗な街並み

 たくさんの人々がそこかしこを行き交い、多くの車やバス、バイクが走る

 タクシーを止める人、ビジョンを見つめる人、ピザを運ぶ配達員、日常がそこにはあった

 その日常は突如として消えた

 映像は突然今の街の情景へと変わったのだ

 

「カットしすぎですよパリケルさん。 これでは何が起こったか分からないじゃないですか」


 いなみがそう指摘するが、パリケルは


「これ、カットしてないんだぜな」


 と答えた


「え?」

 

 全員がその言葉を疑った


「だーかーらー、このままなんだぜな。 一瞬でこうなったってことぜな。 スローで再生してもカット送りをしてもこうなる前と後の間に何も映ってないんだぜな」


 訳が分からなかった

 まるでこの世界そのものがカットされたかのようで、皆一様に首を傾げた


「これじゃぁ手掛かりが全く無いってことじゃない。 しかもこれを見る限り、人も一瞬で消えてる。 こんな能力聞いたことないわ」


 どんな能力者がやったのかも、人々がどこへ消えたのかも分からない


「そういえば、以前いた世界で同じようなことがありましたね。 あの時は街は壊れていませんでしたが、確か異次元の研究をしていた副作用だったはずです」


 可能性として提示するルーナ

 しかし、以前のような人のみが消えているのではなく、完全に破壊された跡があるためその可能性は低いと思われる


「とにかく、誰か残っていないか探してみようよ。 手分けしてさ」


 いなみの提案にみんながうなずいて、それぞれ散策し始めた

 人海戦術の上にパリケルのドローンや探査ロボも加わり、ニューヨーク中を駆け巡った


 探索には数日間かかったが、それでも人っ子一人見つけることはできなかった

 

「いったいどこにいってしまったのでしょう? メリルさんの反応は相変わらずここにあるのに…」


 探索に出ていた人たちが続々と戻ってき、全員が合流したときそれはやって来た


「ふむ、ヨーロッパのレジスタンスか。 それに日本の、これだけの数を集めるとはなかなか大したものだな」


「えぇ、でも、私たち二人の敵じゃないわ」


 現れたのは男女の二人組だ

 男の方は20代後半くらい、女の方は20代前半くらいだろう

 黒髪短髪にぴっちりとしたスーツの男

 金髪ショートの碧眼にこちらもぴっちりとしたスーツを着ている女


「私はアリア・マホーン」


「俺はデルク・ノクターン」


 自己紹介する二人


「「では、消えてもらう」」


 二人は声をそろえて言い放つと、能力を発動した

 その瞬間、周りにレジスタンスのみんながボロボロで倒れていた

 息はあるが、行動不能のようだ

 いなみとルーナを除いて


「ん? 二人ほど残ってしまったか。 なに、想像力が足りなかったようだな」


「もう、デルク、しっかりしてよ」


「すまんすまん、殺さないよう言われてたから手加減しすぎたようだよ」


 もう一度能力を発動するが、いなみとルーナは平然と立っている


「な!? どういうことだ? なぜ俺の能力が効かん…」


「もう何やってんのよ! 私がやるわ!」


 アリアも能力を発動する

 ルーナといなみに何か違和感が走る

 が、それだけだった


「うそ、私の不可視まで効かないなんて」


「もう一度だ! おぉお!」


 デルクとアリアが交互に能力を発動するが、二人にまったく効果はなかった


「俺のカットが効かない…。 こんな、馬鹿なことが」


 二人は驚愕している

 まわりで倒れていた人間たちは、ルーナが遠距離用回復で徐々に回復しつつあった


「くそ! 一旦引くぞ!」


 逃げようとする二人をルーナといなみが一瞬にして捕まえ、能力の発動できないようにパリケルの作った魔力を阻害する拘束具で縛った


 全員の回復が終わり、改めて二人の襲撃犯を尋問する


 名前は自己紹介したように、デルクとアリア

 アリアの能力は不可視

 これを掛けられた者は相手の姿が見えなくなる

 また、自分を隠すことも対象を隠すこともできる

 つまり、ニューヨークの人々は彼女によって隠されていたのだ

 実際人々は一か所に集めて閉じ込められ、さらに不可視によって隠されていたために発見できなかったのだ


 そしてデルクの能力

 こちらはかなり強力なものだった

 イマジンカット

 名前は自分でつけたらしく、アリア曰くセンスがない

 だが能力は名前に反して相当に強力だ

 自分の想像しうることが結果としてその場に現れる

 つまり、自分が想像したことが過程をカットしてその場に現れるというものだ


 これだけ強力な能力だったのに、なぜいなみとルーナには効かなかったのか

 単純に想像できなかったからだ

 二人は神の力を持っている

 あまりに圧倒的な力の前に彼の想像力を超えてしまったためだ


 続いて聞きだしたのはメリルの居場所

 どうやら彼らが彼女たちを襲った張本人みたいだ

 現在地下にある巨大シェルターにニューヨークの住人と共に閉じ込めているらしい

 幾人かのメンバーがすぐに救出へと向かった


 その間にルーナはさらに情報を聞き出していった


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