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死体となった加藤を見つめ、彼の体を抱きかかえると、ゆっくりと犠牲者となった人々の死体と共に並べた
これから弔うためだ
財津総理によって死に至った者も少なからず存在する
脳のハッキングはそれだけ負担がかかるものだった
「犠牲者は彼含め24名か」
リゼラスが死体を数える
彼らには白い布がかけられた
「彼らの犠牲を無駄にしてはならない。 アメリカに向かおう」
メリルにそう告げ、準備をする
世界中に点在しているレジスタンスたちと密に連絡を取り合い、現在の状況を確認する
日本の革命によって日本の支援を受けていた国はすでにレジスタンスによって制圧できつつある
問題は大国だ
それこそ日本よりも強力な能力者を擁しており、里中レベルがざらにいるのだ
「だいじょぶデス。 私たちのレジスタンス、世界で五本指入る強いひといマス」
心配するリゼラスにメリルは元気よく自信満々に言い放った
彼女の率いているアメリカのレジスタンスは非常に大きく、情報に長けている
彼女の仲間がすんなりと入れたのもその情報のおかげだ
さらには様々な国と繋がっており、世界情勢を知ることができた
現在アメリカを含め、各国は日本の革命の情報をすでに手に入れていて、どの国も日本の技術を手に入れようと躍起になっていたそれにより様々な問題が起こっていた
長年沈黙を保っていた国が動き出し、冷戦状態だった国同士が一触即発となり、すでに日本の中には様々な国のスパイが派遣されているようだった
「もうすでに国に入ってきているぜな? この世界の情報技術ってのもなかなかのものだぜな」
「そうデース。 私たちの情報処理にかかればすべてつつぬけなのデスよ!」
「で、どうすんの? あたしが全部壊してあげようか?」
いつの間にかルーナからシフトしていたサニーが物騒なことを言い始める
(だめよサニー、私たちが手を出しちゃったらただの蹂躙になっちゃう)
「冗談よお姉ちゃん。 でも指示してくれれば行ってちょちょいと終わらしてきたげる」
「マジデスか! じゃぁさっそくお願いするデス!」
メリルが金色の髪を揺らしながら喜んでいる
「え? 今からなの?」
「はい! これをイギリスの私の友人に届けて欲しいのデス!」
大きく開いた胸元から取り出したのはUSBメモリだった
「これ何?」
「能力者の情報が入ったメモリデス。 アメリカの制圧に役立つはずデス」
USBのことはよくわからなかったが、渡せばいいだけなのでそれ以上は質問しなかった
「じゃぁ、行ってくるわね」
ルーナにシフトし、人間形態に擬態すると、誰の手も借りることなく自らで転移した
イギリスのベイカー街、世界的にも著名なこの町に堂々とレジスタンスの支部があった
というのも、イギリスは能力者を差別していない
ともに歩む道を模索し、他国で無下にされている彼らの手助けもしていた
そんなことができるのも、このイギリスには世界でも指折りの能力者が二人もいるからだ
その二人がイギリスの守護者となっている
ルーナは翻訳の力によって英字を解読し、レジスタンスの建てたビルへと走る
カメラのハイパースローだろうと彼女の姿は映すことができないだろう
それほどに速いため、人には風が吹いた程度にしか認識されない
ビルに着くとガードマンの横をすり抜けて中へ入る
受付で止まると受付嬢にかなり驚かれた
彼女たちには突然現れたように見えただろう
「あの、アメリカレジスタンスのメリルさんからこれを預かってきました」
受付嬢はメリルと聞いてすぐに上へアポイントメントを取ってくれた
しばらく待っていると、一人のメガネをかけたクールな印象の女性が黒服の男二人と共に現れた
「お待たせしました。 私がこの支部の責任者であるレノ・アンブリアです」
女性は淡々とした口調でルーナを見据える
「…。 私はルーナと言います。 あの、本当に責任者さんですか?」
にらみつけるようにレノを見つめる
「えぇ、そうよ。 あなたがメリルの使い?」
「……。」
ルーナは黙り込み、レノを睨みつける
「警戒しているのかしら? 大丈夫よ。 この国は能力者を虐げたりはしないわ」
「だったらなんで本当の責任者さんを出してくれないんですか?」
レノは驚いた顔をしてルーナを見やる
「何故そう思ったの?」
「見えるからです」
「なるほど、あなたはリーディングの能力者なのね。 メリルも見る目がある子をよこすなんて人が悪いわ。 それもこんな幼い子を」
レノはルーナの頭を撫でる
子供が好きな彼女は普段は見せない柔らかな笑みを浮かべていた
「あの、それで責任者の人は?」
「私は代理よ。 今リーダーは中国に行ってるわ。 それにしても、なんであなたみたいな子供が?」
「私、こどもじゃないですよ? こう見えてかなり長く生きてますから」
「え?」
レノはまじまじとルーナの顔を見るが、どう見ても10歳程度にしか見えなかった
「不老長寿の能力者? それとももしかして不老不死なのかしら?」
この世界にそのような能力者はいない
だからこそもしそうなら初めてのことだ
「違います。 そんなことよりそれを確認してください」
「あ、うん、そうね」
レノはルーナにお茶を出すよう部下に指示するとUSBを確認しに私室へと戻って行った
それから一時間後、受付嬢たちにほっぺをぷにぷにと触られているルーナをレノが発見し、私室へと招いた
「ありがとうルーナちゃん、これで私たちも動き出せるわ。 あとは私たちに任せてあなたはメリルの元へ戻りなさい。 それとこの手紙を日本のレジスタンスに渡して」
白い封書を受け取り、お礼を言うとルーナはその場で転移した
「消えた? テレポートまで…。 あの子は一体何なの?」
今まで見たことのない複合能力者に驚くレノ
ルーナはまだまだ力を隠し持っていると予想した
現に強い能力者がひしめくこのビルにたった一人で来たのだ
いくらメリルに聞いていたからとはいえ、通常なら警戒して一人で来ることなどしないだろう
つまり、それだけ自分の力に自信があり、勝てる見込みがあるということだ
それも一人で制圧できるほどに
「どうやら日本はとんでもない隠し玉を持っていたようね。 味方であれば心強いわ。 一応リーダーにも報告しておいて頂戴」
部下の一人が頭を下げ、イヤーカフス式の通信機を使ってどこかへと連絡を取っている
「さて、アメリカが動いていることだし、準備を進めましょうか」
能力者と無能力者が手を取り合って平和に暮らす世界
それがイギリスのレジスタンスたちの理想だ
その夢の実現のため、世界中のレジスタンスたちは動き出した
レジスタンスレジスタンス言い過ぎ
反省
もっと語彙力が欲しい
勉強しないと