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石野は世界を渡れるか?2

 石野は赤井と共に異世界へと飛ばされたと思われる映像をかき集め、解析していった

 もちろんその中のほとんどがフェイクだったのだが、いくつか明らかに加工されていない本物も混ざっていた


「石野さん、これを見てくれんか?」


 赤井が数日前に投稿された映像を見せる

 そこには深夜徘徊をしている老人が一瞬のうちに消える様子が映っていた

 

「この老人は見たことがある。 たしか数日前に家族から捜索願が出ていたはずだ。 認知症で深夜徘徊も多かったとか」


 老人の名前は下野一太郎、若いころは下野流古武術の達人として名をはせていた男だ

 70歳を過ぎたあたりから認知症を発症し、80となった今では家族のことすら分からないほど進行していたようだ


「そう、君が話を聞いた立木ちゃんは異世界にどうやって行ったと言っていたかね?」


「それは、召喚…」


「そう召喚だ。 これまでの行方不明者の共通点は何だと思う?」


「それは、体力のある若者では?」


「そうだ。 ならばなぜこの老人は消えたのかね?」


「この老人と若者たちの共通点があるということですか?」


「その通り、彼は武術の達人だろう? 行方不明者は皆何かしらの強さを持っている。 立木ちゃんにいたってもそうだ。 彼女は剣道の県大会で優勝するほどの腕前だったと聞いている」

 

 石野は顎に手を添えて考える

 今までの行方不明者の情報を頭で整理し始めた

 ある若者は柔術師範の息子、ある少女は合気道道場の秘蔵っ子、ルチャドーラで人気を博していた少女、無類の強さを誇った空手家の少年等々

 誰も彼もが武術に深くかかわっているようだ


「そう、強いんだよ彼らは。 そして彼らが呼ばれている理由とは?」


「何かと戦うということなのですか?」


「分からんよ、異世界のことだからね。 だがもしそうなら、まだまだこれから呼ばれる者達が出るということだ。 何故この世界からなのかはわからんが、これからも犠牲者は増える」


 赤井は言い切った

 異世界に何者がどういった目的で彼らを呼んでいるのかは分からない

 

 石野は赤井の研究室を出るとその足で岸田の元へ向かった

 岸田にもこのことを伝えるためだったのだが、その日を境に岸田の姿は消えた

 突然のことだった

 彼は署の資料室にこもっており、誰もそこから出てきた姿を見ていない

 監視カメラにも彼が出てくるところは映っていなかったし、ここには窓もない

 忽然と資料室から姿を消したのだ


「くそ! まさかあいつまでこの神隠し事件に巻き込まれるとは…。 そう言えばあいつは高校のころキックボクシングで全国大会で優勝するほどの実力者だったな。 油断してた」


「そう自分を責めるな。 予想出来ていたとしても止める手立てなどないんだからな」


 赤井は慰めるが、石野はそれでも自分を責めた

 自分の力では止めることのできないこの状況に自分の力のなさを痛感した

 石野は警察という職業柄当然武術は治めているが、中の上レベルなので神隠し事件の被害者にはなりえない

 手づまりだった

 こちらから行く手立てがない以上どうすることもできない

 

「石野さん、あんた異世界に渡りたいのかね?」


「そうですね。 できれば俺のこの手で立木ちゃんも、岸田も助け出してやりたいんですよ。 でも、そんな手立て現状ないでしょう?」


「ふむ」


 赤井はゴソゴソと何かを取り出した


「これを見てくれんか?」


 大きな石の塊、うっすらと光っているように見える


「これは?」


「これはな、とある遺跡で最近見つかったこの世界にない石だよ」


 そう言うと赤井は小さなハンマーで軽く石を叩いた

 キーンと響く音の後、石は変形し、光り輝く剣となった


「な、何だこれは!」


「面白いだろう? これは知り合いの考古学者に特別に譲ってもらったものなんだが、調べたところこの世界には絶対にないエネルギーと物質で出来ていた」


 この世界にない武器に変化する石、明らかに超常の存在だった

 石野は石を手に取ってみる


「軽い? まるで発泡スチロール並みに軽いですね」


「そう、そこなんだよ。 それなのにこれは金剛石ダイアモンドより硬い。 この硬度の鉱物が一瞬にして武器に変わる。 どうだね? この世界には絶対ないだろう?」


 石野は拳で軽く小突いて再び剣に変え、振ってみた

 ヒョンと風を切る音がし、今度は剣が震え始めた

 

「な、何だ? 赤井さん! 一体何が起こって」


「分からん! こんな反応今までなかったぞ!」


 ぐるぐると視界が回る

 気づくと石野は見知らぬ遺跡の中に立っていた


「どこだ? ここは」


 石野はスマホを取り出して地図を開く

 どうやら日本であることは分かった

 訳の分からないまま手に持っていた剣を再び叩き、石に戻して懐にしまうと遺跡の奥へと歩き出した

 誰かに呼ばれたような気がしたからだ


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