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召喚勇者

 ルーナが封印の間で目覚めた頃から数日

 破壊神の復活の兆しを受けた帝国は百数人もの次元魔導士たちを呼び、勇者召喚を行った

 長時間をかけ召喚術を施し、呪文を唱え、ようやく召喚が成功したころには次元魔導士たちは半分ほどに減っていた

 それほどに消費が激しく危険な魔術を駆使して召喚した勇者はどこか抜けているように見えて頼りない

 しかし次元魔導士たちや魔力の高い者は気づいた

 子犬のような人懐っこさの裏にあるほの暗さに

 だから皇帝に進言した

 勇者召喚は失敗したと、あれを国に置いておくのは危険すぎると

 そして彼らは殺された

 すでに皇帝は取り込まれていたのだ

 どうやったのかは分からないが、皇帝は完全に勇者を信じ切り、疑う者をすべて罰し処刑した

 

 帝国のすべてが勇者に掌握されつつある

 何かがおかしいと気づいたリゼラスは勇者自身に問うため一人勇者の部屋を訪ねる


「君はなんとも思わないの?」


 部屋に入るなりそう聞かれた


「何がだ?」


「破壊神、君の敵は今楽しそうにエイストラハイムで暮らしているよ?」


 たしかに、自分の両親を殺した破壊神は憎いし、今でも殺したいとは思うが、報告にあった破壊神は昔自分が見た姿とどこかが違う

 見た目は確かに似ているのだが、まったくと言っていいほどかつての邪悪さは感じられない

 本当に破壊神なのだろうかとさえ思えてくる

 調査隊が投影させる水晶に映る姿はただの子供、幸せそうに笑う子供なのだ

 だから、攻めあぐねていた

 そんな心を見透かしたかのように勇者は続ける


「ねぇ、憎いんでしょ?」

「大丈夫だよ、僕が全部受け止めてあげるから」

「その憎しみに、体を委ねなよ」


 その声を聴いているとリゼラスは引き込まれるように意識を飲み込まれていった

 そして、気づいた時にはただただあの少女への憎しみだけが増幅され、その復讐を果たすためにはどんなことでも出来るという気になった

 加えて目の前にいる勇者に恋い焦がれ、抱かれ、その純潔をささげた


 勇者の名はアスト・フェルルシル

 たった数日で帝国を支配した彼はその手を属国以外にも伸ばし始める

 まずは中立国エイストラハイム

 住人は反抗されると面倒なのですべて殺せと命じた

 もちろん大義名分は破壊神を信仰する危ない集団とし、周辺の国が援軍をよこさないようにした


 勇者アストは不敵に笑う

 そこには人懐っこさなど欠片もなく、凶悪さが張り付いていた

 栄華を極め、周辺国からも一目置かれた帝国はそこにはもうない

 あるのは勇者によって掌握された勇者のための国

 彼が何を成そうとしているかは誰もわからないが、確実にこの世界は勇者に侵食されていく…


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