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3-14

 今まで潰してきたどの施設よりも大きなドーム型施設

 入ってすぐに開けた場所にたどり着いた

 その道中にも一般兵や力の強くない戦闘能力者がいたが、誰も彼も先頭を走るルーナの敵ではなかった

 

「ここは彼らが食事をとったりするスペースですね。 戦いやすいように机やいすは片づけられているみたいですが」


 藤子が説明をする

 その直後に壁の一部が砂のように崩れた

 そこから現れる虚ろな目をした里中

 問答無用で攻撃してきた

 それに巻き込まれ幾人かが分解され命を落とす


「離れてください! あの人は私が止めます!」


 里中は操られているためか、一切手加減もなく、ただこの場の全ての人間を殲滅するためだけに動いていた

 容赦なく繰り出される攻撃をルーナが結界によって防ぐ

 

「一旦結界を解きます! その前に後ろに避難しておいてください!」


 ルーナからサニーにシフトする過程でどうしても一度結界を解く必要があった

 いまだ休みなく続けられる攻撃、仲間たちが後ろに引いたのを見届けると、結界を解いてサニーにシフトした

 その際一撃もらったが、驚異の再生能力であっという間に回復する

 

「痛いわね! またこいつなの? まぁいいわ。 それ」


 ほんの少し尻尾を振ると、空気の塊が里中に直撃した

 そのまま激しく壁に打ち付けられ、壁を砕いて隣の部屋へ抜けた

 

「ふぅ、終わったわよ。 おねえちゃん、このままあたしが出ておいた方がよくない?」


(まって、それじゃぁ不意打ちが来た時守れない)


「あ、そっか、じゃぁお姉ちゃん、変わるね」


 そんなやり取りをしていると、避難していた仲間たちが戻って来た


「すごいな君は、味方でいてくれて助かるよ」


 いなみの父が感謝している

 しかし安心したのもつかの間、大量の能力者たちが流れ込んできた

 気絶していたはずの里中も白目をむきながら襲ってくる

 彼らはまるでゾンビのように倒れても倒れても向かってきた


「きりがないぞ。 パリケル、何かいい案はないか?」


「うむ、あるにはあるけど血なまぐさいぜな」


「い、一応聞いても?」


「4号ちゃんのレーザーで薙ぎ払う」


「「却下で」」


 パリケルは少しがっくりしたが、すぐに戦闘に戻る

 

「とりあえず気絶させてください。 私が洗脳を解除していきます」


 すでに里中の洗脳を解き、地面に転がしたルーナは次々に能力者たちの正気を戻していった

 しかし里中は脳を酷使されすぎたせいか、すでに廃人のようになってしまっていた

 回復は見込めないほどに壊れてしまっている


「ひどいことしますね。 まぁかくいう私もこういったことはしてたんですけどね」


 藤子は淡々と里中をそのまま殺した


「な、何してるんですか!」


「何って、このままでは彼があまりにも哀れでしょう?」

 

 さも当然のように言い放つ

 

「お前はやっぱり、人間じゃないよ」


「今のあなたの姿の方がよっぽど人間離れしてますが、それは言いっこなしですね」


 いなみは藤子を睨みつける

 そんな視線も意に介さずにそのまま次の部屋へ

 

 そこは全体的に真っ白な部屋で、扉があるだけで窓もない部屋だった


「ここは戦闘訓練を行う部屋ですね。 ヴィジョンを投影して様々な状況に合わせた訓練を行えます」


 その部屋の中央に、一人の少年が立っていた

 北川だ

 しかし様子がおかしい

 先ほど操られていた能力者たちとは明らかに違う雰囲気


「北川、お前一体どうしたんだ?」


 加藤が近づく


「危ない!」


 いなみが走り、加藤の腕を引っ張ると、今加藤のいた場所が抉れた


「うお、す、すまねぇいなみ」


 抉れた場所からは黒い炎が燃えている

 さらに北川はゆっくりとこちらに歩いてきた

 それを加藤が爆破するが、体を硬質化させて傷一つ負っていない


「何だよあれ、北川は空間能力だけだったはずだろ? 何がどうなってんだよ!」


 爆破能力を何度も打ち込むが、北川には効いていない


「私が!」


 サニーは走ったが、操られた能力者が突如として現れ、行く手を遮った

 

「邪魔よ!」


 気絶させ、洗脳を解いていくが、あまりにも数が多い

 その間に北川がいなみに近づき、どこからともなく現れたドリルのようなものを突き立てた

 いなみは目をつむる

 しかしドリルが自分を貫くことはなかった

 かわりに生暖かい液体が顔にかかる

 恐る恐る目を開けると、加藤の顔があった

 その胸からはドリルの先端が突き出ている


「加藤、くん?」


「無事かよいなみ、ぐっ」


 吐血する加藤

 ドリルが引き抜かれ、ぽっかりと胸に穴が開く

 そこから大量の血液が噴き出した


「加藤君!」


 いなみが彼をかかえる


「いなみ、ごめんよぉ、おれぁ、お前が、家族に愛されてたお前、が、うらやま、しかったんだ。 だか、らお前を」


「いいんだよそんなこと! 喋っちゃだめだよ。 血が、血が止まらないんだ」


 必死で傷を抑えてはみるが、手のひらよりも大きな穴、それに、心臓を傷つけており、出血が激しい

 その心臓もすでに鼓動を止めようとしていた


「俺、お前の役に、たてたかな?」


「うん、うん…」


「そりゃぁ、よか… た」


 加藤は目を閉じ、そのまま息絶えた


「加藤君、加藤君!」


 彼はもう目を覚ますことはない

 少しの間だが、彼とわかり合えた

 最後の最後に、彼と本当に友達になれた

 

 いなみはそっと彼の死体を床に横たえると、北川に向き直った

 北川は笑っている

 彼は操られていなかった

 

「クズが死んだ! やっぱり僕が一番強いんだ!」


 大笑いする北川


「何がおかしいんだよ」


 いなみの雰囲気が変わった

 背中から赤い何かが生える

 それがだんだんと部屋に広がると、一気に縮小され、いなみを包み込んだ


「何!? 何が起こってるのよ」


 サニーは目を見開く

 赤い繭、それが宙に浮いていた


(パリケル! 見ろ! 新しい幼神(ようしん)の誕生だ!)


 パリケルの頭にシンガの声が響いた


「新しい、幼神?」


(あれはじきに神になるぞ。 それもかなり強力な! あれは…。 そうか、子を残していたか!)


「何が何だか分からないぜな!」


(その目に焼き付けろ! 神の降誕である! 我が姉神の子が!)


 興奮するシンガ

 

 眉にひびが入る

 パキパキと音を立てて繭が砕け散った


 中からは美しい翼をはためかせながらうっすら輝くいなみが生まれたままの姿で出てきた

 自らの裸を羽で覆い隠し、その羽は衣となった


「これは、一体、力が溢れてくるみたいだ」


 いなみは北川を見る

 彼は驚いた顔をしているが、まだ自分の敵ではないと判断したのか、飛び上がりながらいなみを攻撃した

 空間を切り裂く

 しかしながらいなみに傷一つついていない

 いなみは手に光を集める

 指でっぽうのように北川を光で打ち抜いた


「うぐっ! この程度の攻撃、僕に聞くと思ってんの? 変化したからもっと強くなったと思ってたのに、正直残念、だ、よ…。 あ、れ?力が抜け、て」


 北川から光の粒子がキラキラと抜け出ていく

 

「あなたの力、消させてもらいました。 あなたはこれでただの人間です」


 父である秀一がいなみを見上げる


「いなみ、お前は一体…」


 ゆっくりと地上に降りたいなみ

 他にいた能力者たちはサニーがすでに無力化していた

 

「嘘だ! 嘘だ! 僕は最強なんだ! そのために力をもらったのに! くそぉおおお!」


 北川はいなみに殴りかかった

 拳がいなみに当たる直前、北川の額を誰かが撃ちぬいた


「かぴゅっ」


 間抜けな断末魔で脳漿を撒きながら倒れる

 ピクピクと痙攣して北川は死んだ


 撃ったのはスナイパーのような一般兵

 その横にこの国のトップである総理が立っていた


「あれを使え」

 

 それだけ言うと総理は奥の部屋へと去って行った


(まずいですね。 私が手に入れる前に使われては計画が…)


 彼は一人思考を巡らせ、打開策を見つけてほくそ笑んだ


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