3-13
政府は慌てていた
今までここまで大規模な革命がなされたことはなく、対処が全く間に合わない
それに、無敵だと思われていた里中が震えながら戻って来たことにも驚いた
彼は戻ってきてただ一言
「あんな化け物がなぜ」
とだけ言って引きこもってしまった
相当な恐怖を味わったようで、彼はもう使い物にならないかもしれない
「仕方ない、洗脳しろ。 恐怖を完全に取り除いて施設に向かわせるんだ。 壊れても構わん」
今まで従順に働いてきた里中は哀れにも洗脳され、自在に手足となって働く人形になり果ててしまった
「最高戦力を投入しろ。 北川はもう行けるか?」
「はい、調整は済んでおります」
北川は洗脳された上に別の能力者の能力までも手術によって植え付けられていた
もちろんその元となった能力者は死んでいる
「それでは施設に戦力を集中させろ」
政府のトップ、総理である財津みきおは指示を飛ばす
ところ変わって東京郊外のとある田舎の村
いなみの父親、明神秀一はいなみの祖父である茂三の家へと来ていた
当然ここにも政府の手は伸び、秀一を探していたが、茂三の作っていた地下壕で難を逃れていた
この地下壕には政府から逃れた人が多数暮らしていた
そう、茂三は独自のレジスタンスを築いてる
それは当然秀一も知っており、だからこそ頼ったのだった
「親父、それじゃぁ行ってくる」
「あぁ、必ずあの子を助けて来い」
結局あのあと、いなみを助けるために一旦茂三の元へと向かった
あのときの着の身着のままである自分では手助けになるどころか邪魔になると考えたからだ
だが、今は違う
茂三や、レジスタンスたちの支援を受けて、彼らと共に今革命を起こしているレジスタンスたちと合流する
テレポート能力者数名に東京中心、施設のある場所までテレポートしてもらった
当然見つかることも考えて、戦う準備も万端だったが、現在この周辺一帯に避難命令が出されており、人っ子一人いなかった
「誰もいない、のか?」
秀一はあたりを見渡すが、人の気配すらしなかった
「明神さん、この先が例の施設です」
一人の青年が指さした方向には巨大なドーム型の施設が見えた
そしてそのドームを取り囲むようにいる能力者の兵たち
その前には、ルーナ達率いるレジスタンスがすでに対峙していた
「お前らが今各地を騒がしている革命軍か」
戦闘能力者のリーダーである男、佐藤宏が能力を使うために構えた
里中ほどではないにしろ、彼も戦闘能力ではトップクラスだ
能力はかまいたちのように真空を作り出して切り裂く能力
見えない刃に切り裂かれ、気づいたら死んでいる
「さて、それでは行きますよ」
藤子が真っ先に彼らに攻撃を仕掛けた
「な!? 裏切り者の藤子か!」
破壊の力によって地面が大きくえぐれる
それを済んでのところで躱す佐藤
「佐藤君、油断はだめだと教えたはずですよ」
佐藤の後ろにはすでにリゼラスが回り込んでおり、後ろから刀のミネで佐藤の背中を穿った
メキメキと骨のきしむ音がし、佐藤はそのまま気絶した
それにより周囲の能力者たちがぶつかり合う
「始まったか、俺たちも援軍に行くぞ!」
秀一は走った
自分の子供であるいなみを探すために
そしてその混戦の中にいなみの姿を見つけた
「いなみ!」
彼女が振り向くと、そこには自分の父親の姿が見えた
彼の後ろには援軍と思われるたくさんの能力者
「父さん! どうしてここに?」
「お前を助けるためだよ」
秀一は戦闘をかき分けていなみをしっかりと抱き寄せた
「でも、父さんは能力者じゃない。 危険だよ!」
「分かってるさ。 でもな、お前は俺の大切な子供だ。 身を挺して守ってやるのが親の務めだ」
秀一は懐から銃を取り出すと、いなみに襲い掛かろうとした兵を撃つ
この銃には殺傷能力がなく、撃たれると一時的に能力を失うものだ
能力の発動できなかった兵はあっさりといなみに蹴られ、地面に転がった
「行こういなみ、この国を、いや、世界を変えるんだ」
秀一は銃を右手に駆けだした
いなみは嬉しかった
父親が命を投げ出してまで自分を助けに来てくれたから
湧いてきた勇気を胸に、ルーナの元へと走る
最初の防御陣営はあっさりと突破した
この中には戦闘能力者は少ししかおらず、ほとんどが一般兵だったためだろう
内部にはより多くの戦闘能力者がいる
それに、危険な里中も十中八九いることだろう
レジスタンスたちは内部に侵入し、より一層気を引き締めた