エイシャ動く1
「騎士たちは全員正気に戻ったみたいね。 姉様、やはり私の力ではここまでが限界のようです」
「エイシャ、大丈夫よ。 可愛いエイシャ、もはやあの子たちは必要ないわ。 大丈夫、私やあなたのお兄さん、お姉さん皆があなたのことを守ってあげるから」
アズリアが優しく微笑んでエイシャの頬に手を添わせる
妹のことが愛おしくてしょうがない
この場にいる神々は全員がエイシャを守るために再び集まった
「姉様、私はそろそろこの世界から旅立とうと思います。 奴らはこちらをまだ見つけてはいないみたいですが、時間の問題ですからね」
敵となる兄神や姉神、その中には監視の女神キュカがいる
隠れているとはいえいずれ見つかってしまうだろう
それに、手足となる騎士たちの洗脳が解けてしまった今、この世界に使える手ごまはない
「エイシャ、まだ力は戻っていないのだろう、無理はするなよ」
武具の女神、エイシャの姉神であるシェイナが優しく肩に手を置く
彼女は剛腕の神ほどではないが、戦闘力に特化した神
エイシャの盾だ
「大丈夫ですシェイナ姉様、まだ本調子ではないとはいえ、一つの世界を渡れるくらいには回復してます」
「そうか、だが、危険そうならすぐにやめるんだぞ」
「はい」
小さなエイシャの頭を撫でながらシェイナは武具を味方である兄妹たちに付与した
まだ安定していないエイシャの力の一つ、転移
安定していない状態で次元を渡れば神と言えど危険はある
そう言った危険から守るための武具だ
「ありがとう、姉様」
「お前のことは私が命を懸けても守る。 だから安心して力を使え」
姉の愛を感じながらエイシャは力を行使した
光り輝く神々
一斉に別世界へと転移した
そこは人間が自らの手で進化した世界だった
体を機械にする者、体を捨てて電子の世界で暮らす者、特殊な薬で強制的に体を様々な環境に適応させた者
その全てがネットワークによって繋がっていた
この世界の神は既に忘れ去られ、力を失い、人間たちは暴走していた
「これはまた、特殊な世界に来てしまったみたいだね」
生命の男神ラルフレオが地面に手を置いてこの世界の状況を確認した
「生命、と言っていいのか分からないけど、生き物はほとんどが機械やネットワークに自らの魂を移しているみたいだよ」
「何と嘆かわしい。 神を忘れ、神の域に到達しようなどと、何とおこがましいことなのでしょう」
「でも、操りやすそうです姉様。 ネットワークを介してこの世界を乗っ取ります。 マキナ姉様、手伝ってください」
「オッケー、了解したよん」
電子の女神マキナが敬礼するように手を額にかざして了承した
二人は電子の力を発動させるとこの世界のネットワークをあっという間に掌握してしまった
「できたよん。 エイシャちゃんもだいぶ操作速くなってるじゃない」
「まだまだ姉様の足元にも及びませんよ」
照れながら答えるエイシャ
マキナはそんな妹を抱きしめて再びネットワークの操作に戻った
「うっし、こんなところかな。 これであとは転移装置を作ればこの世界の住人を送れるようになるよん…。 あ、まって、ここゲートがもう作られてるね。 あ、でもこれはこの世界でしか使えないワープゲートか。 ちょっと仕組みを変えたらいけるっぽいよん」
マキナは設定を変え、機械を動かしてゲートを作り変えた
「はいできたー! 簡単簡単、姉さん、これでいけるよ~」
「ありがとうマキナ、少し休みなさい」
「んー、まだまだいけるけど、姉さんが言うならそうするよん」
展開していたたくさんのウィンドウを閉じると、すでに作り出していたAIに後を任せて休んだ
「私たちはこの世界の有能そうな人間を集めてきます。 さぁエイシャ、行きましょう」
「はい、姉様」
アズリアはエイシャを連れてこの世界を見て回った
この世界はすでに戦争はなく、人々は現状に満足していたが、洗脳して強制的に働かせることにしたのだ
神から見放されたこの世界ならば敵である神たちに気にされることもないだろう
隠匿の男神キリカゲに自分たちの神の気配を消してもらうと、この世界の人々を操りゲートに送り込んだ
ルーナからエイシャの力を奪い返すために