神々の捜索3
「ふぅ、これで七個目か。 まだまだ足りない。 それに核が一向に見つからねぇ。 一体どこにあんだよ」
あの後からさらにシンガのかけらを集め続けていたミナキ
先ほど降り立ったばかりの世界でも一つかけらを見つけた
しかしその中にはシンガの中心を担う核がない
核が無ければシンガはコミュニケーションをとることもできない
「兄貴、あんたと話したいんだけどな…。 俺はあんたのこと尊敬して…。 いや、説教してやりてぇよ。 神が負けるなんて何事だってな」
ミナキはこの世界から去り、次の世界へと向かった
次に降り立ったのは獣のような種族、獣人が多く、人間種などが少ない世界だった
降り立って早々に獣人たちに囲まれる
「劣等種族の人間がこんなところに何の用だ? フライの魔法が使える人間など見たこともないが、所詮は人間だ。 おい、俺たちに殺されるか、それとも隷属するか選べ」
「あ? お前ら、同じ世界に住む者を蔑むのか? 同じ知性ある生命を」
「何言ってんだこいつ、恐怖で頭おかしくなったんじゃねぇか?」
「まぁいい、ちょうど人間の女を攫って犯したかったんだ。 ガキみたいだがこいつで我慢してやるか」
「はぁ、この世界の神は何してんだ? 全く世界の管理がなってねぇ」
ミナキはまるで道端の石ころでも見るように獣人たちを見た
「相手の力量も推し量れねぇ、多種族は見下す。 教育が全くダメダメだな」
襲い掛かってくる獣人を軽くいなして自らの覇気だけで気絶させた
「なななな、なんだこいつは…。 人間じゃねぇ」
「それすら気づいてなかったのか。 まぁ言動を見るにそうなんだろうな」
ミナキが気絶しきれなかった獣人に近づくと、獣人の男は命乞いをし始めた
「たっ、助けて、もうしない、もうこんなことしないから!」
失禁する獣人の男を尻目にどうでもいいとその場を歩き去った
(兄貴のかけらを手に入れたらこの世界の神に説教でもするかな…。 いや、手間は省けそうだ。 こっちに近づいてきてるな)
ミナキの前に空から光が降りてきた
その光から太っただらしのなさそうな男神が出てくる
「じょ、上位の神様がなぜこのような下位次元に!? まさか、消滅させられるのでしょうか?」
「それは俺の仕事じゃねぇよ。 それよりも、何だこの世界の現状は。 一つの種族が幅を利かせすぎているぞ。 もう少し何とかならねぇのか?」
「もっ、申し訳ありません! すぐに対処いたします! ですので何卒消滅だけは!」
「だから俺じゃねぇっての。 改善するなら咎めねぇよ」
「ありがとうございます! 精進いたします!」
男神の姿が変わった
今ままでのようなだらしない体型ではなく、すらっとした美青年の姿に
「それがお前本来の姿か。 信仰心が減っているのか?」
「えぇ、私の呼びかけにももう反応しない次第でありまして」
ミナキは背伸びをしながら男神の額に手を当てた
「そらよ」
自らの神力をほんの少しだけ分け与えた
「これは、力が戻って…」
「それで何とかなるだろ。 とりあえず俺は先を急いでるから。 あとは自分で何とかしろよ」
「ありがとうございます! これでこの世界も救われます!」
ヒラヒラと手を振り去って行くミナキ
(さて、欠片の気配はこっちか)
大きな城、恐らく獣人の王が住んでいるのだろう
そこから気配が漂ってきていた
「かなり大きな城、力が一点に集中している証拠だな」
ミナキはそのまま城の中へと向かうが、当然のように兵士に止められる
「人間の小娘、ここに何の用だ? ここは我らが獣人の王が住まう居城である。 貴様のような下等種族が来ていい場所ではない!」
「またこれか。 良いからちょっと通せ、中に用がある」
兵はミナキに槍を向けて突きさすが、あっさりとはじかれ壁に叩きつけられた
他の兵も同様にミナキになすすべなく倒されていく
「もっと相手を見てから喧嘩を売れ」
城の中も豪華絢爛
まるで力を誇示しているかのようないでたちで、ミナキはイライラした
中にいる兵たちもミナキの敵にならず、やすやすと王の私室まで突破された
「何者だ貴様、このわしを獣王と知ってのことか?」
「獣王かどうかは知らねぇが、お前がはめている指輪の宝石に用がある。 それは俺の兄貴なんだ。 返してもらうぞ」
「何を言うかと思えば、下等種族の小娘が。 相手を見てからものを言うんだな。 貴様など一瞬でわしの爪垢にできるんだぞ?」
「お前こそ相手の力量くらい測れるようになってから王と名乗れよ」
一瞬で獣王の後ろに回り込むと、足を払って転ばせる
「な!? このわしが、全く見えなかっただと?」
「おら、もうわかっただろ。 お前程度じゃ俺の足元にも及ばねぇんだよ」
「認めん! 下等種族風情が!!」
縦横の爪が迫るが、それを軽く右に傾いて躱し、脇腹に拳をめり込ませた
「グガッ、あ、が」
たった一撃で気を失う獣王
「ふん、まぁここの神も回復したことだし、そのうちよくなるだろうさ。 まずは獣人たちにちゃんと教育をしておけよ」
「は、はい! かしこまりました!」
いつの間にかこの世界の男神が後ろに立っていた
「じゃぁ俺の用事は済んだ。 精進しろよ」
ミナキは軽くジャンプし、城を突き破ってこの世界を去って行った
後にこの世界は力を取り戻した神によって信仰が回復し、獣人族による支配も終わった
人々は繁栄し、種族間の争いは少なくなっていった
「ようやく八個目、次は、あそこか」
狭間の世界で次の世界を確認し、シンガのかけらを取り戻すために彼女は行動する