3-10
特殊能力者たちを助け出した日の夜
パリケルは夜中にふと目を覚ました
当たりを見ると、寝ていた布団の上ではなく、真っ白な何もない空間だった
「よう、やっと来たな」
「シンガ、様?」
その空間にはシンガが一人で立っていた
「すまんな、少し話したいことがあって呼んだ」
「いえ、お話とは?」
「うむ、実はあのいなみとかいう少女のことなんだが、あの者をどこで見つけた?」
「この世界の住人ですが?」
「そうか、なるほどな。 この世界に流れ着いたということか」
「一体何なのですか? シンガ様、教えて欲しいぜな」
パリケルはシンガの顔を見つめながら疑問をぶつけてみた
シンガはうなずき答える
「あの者はな、神人、そいう種族だ。 人と神の中間で、神の幼体とでもいう存在か。 恐らく神の誰かが産んだのだろう。 それも上位の神だ。 すさまじい神力を秘めているぞ」
驚くパリケルを尻目にシンガは続ける
「どうだ? あの者を育ててみないか? いずれお前たちの力になるかもしれんぞ」
パリケルは少し考える
「いや、あの子にはこの世界に家族がいるぜな。 引き離したくないぜな」
「ふむ、そうか。 良い提案だと思ったのだが…。 確かに、家族は大切だな…。」
シンガは末妹のエイシャのことを思い出す
神々が愛した妹
シンガは未だにエイシャを助けたいと思っていた
本当は彼女と共にありたかった
しかし、責任感が彼を引き留める
「ならばこの話はなしだ。 俺は見守ることにしよう」
そうシンガが言い放った瞬間、周りの景色は一変し、目を開けると朝日が差し込む部屋の一室に戻っていた
胸元のシンガの宝珠を見る
反応はなく、ただキラキラと輝いていた
朝
ルーナ達は会議室のような一室に集まっていた
「昨日も話したと思うけど、日本のレジスタンスはほぼ壊滅、残っているのは非戦闘員のみという最悪の状況よ。 でもまだ希望はあるわ。 海外にも当然レジスタンスはある。 彼らに救援を求めるの」
美智は失った仲間たちのためにも立ち止まらないと決めた
まずは日本に革命を起こし、能力者の現状を変えるのだ
しかし、どうやって連絡を取ったものか
美智には手段がなかった
「少し待っててもらえますか?」
ルーナはそう言うと皆が見ている目の前で消えた
そして数分後、一人の外国人を連れて帰って来た
「え? 誰ですか?」
「はい、海外のレジスタンスのリーダーさんです。 快く救援してくれるそうですよ」
みんながあっけに取られている中、ルーナは翻訳用の力を発動させ、皆が彼女の言葉を分かるようにした
「我々は支援シマース。 このままではワタシタチ能力者はただの道具として使いつぶされて終わりデース」
彼女はアメリカのレジスタンスリーダー
名前はメリル・スミス
戦争ばかりの国によって能力者は常に戦場を駆け、死者は絶えない
彼女の親友も少し前に戦死したそうだ
「ワタシタチ、この世界を変えたいデス。 あなたたちとても勇気がありマス。 ワタシタチ、今仲間どんどん集めてマス。 世界中と連絡とってマス」
彼女の仲間には世界中に発信できる強力なテレパスがいるらしい
日本のレジスタンスはこれまで連絡を取れていなかったのでちょうどよかったのだそうだ
ちなみにルーナは彼女を探知の力によって見つけ出した
テレパスのやり取りを強引に傍受し、さらにはその会話に割り込んで見つけたのだ
「まず日本の能力者解放目指しマス。 どうすればいいデス?」
美智は次に補助特化の能力者を救うことを話した
特殊能力者たちはほぼ全員を救えているが、地方にもいるのでそちらも救わなくてはならない
少しずつ仲間を集め、対抗できるだけの戦力を集めるのだ
「私も、協力します。 戦いは怖いけど、助けてもらっちゃったし」
そう言ったのは羽川恵だ
彼女の炎の力はまさしく戦闘向きで、この先の戦いでは必要となるだろう
「俺たちもできることがあれば手伝う」
特殊能力者の一人、手のひらから植物の種を出せる能力者の木田次郎だ
彼の能力は農業や林業の役に立つかと思いきや、一日に一粒しか出せない
「ありがとうございます。 皆さんには後方支援をお願いします。 食料などの配達や管理ですね」
美智が特殊能力者に仕事を割り振っていく
しかし、この先彼らがの力が重要になっていくことはこの時誰も気づいていなかった