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3-7

 現在地は以前危険な超能力者が暴れ、廃墟街と化した街の一番小さなビルの前

 情報によると、この辺りでレジスタンスの姿が確認されたらしい

 里中は部下に内部の様子を確認させて突入の準備をする

 殲滅のための準備

 一人も生かして返す予定はない


「さて、政府に逆らう反乱分子どもを駆逐しましょう。 子供だろうと一人たりとも逃がさないように」


 感情なく淡々と命令する里中

 それに対しておびえながらも命令をこなす部下たち

 少しでも口答えすれば一瞬で消されてしまうとわかっていたからだ

 現に数日前も少し意見しただけで一人分子レベルで分解されて殺された

 里中の能力は分解

 自分の目に見える範囲のものならば近距離遠距離関わらず分解できた

 彼は世界でも片手の指に入るほどの強さを持っていた


「隊長! ここには誰もいないようです。 しかしながら近くに能力者の気配があるようで」


「ではそこに案内しなさい」


「はっ!」


 部下の中には周囲1キロの生物の有無を判断できるサーチ能力者がいる

 そのためこの街程度なら網羅できる

 

 気配のするビルに突入する戦闘班

 そこにいたのは少女がたった一人だった


「来たわね。 それっと」


 少女が手を広げると景色が一変した

 そこはどこか遠い荒廃した荒地

 周囲に人の気配はなく、思いっきり戦っても問題なさそうだ

 

「後は頼んだわよ。 木下、赤井」


「あぁ、全員ぶっ倒してやるよ」


「あれは、殲滅の二つ名を持つ里中じゃないですか。 これは大物が釣れたものですね」


 冷静に今の状況を分析する里中

 どうやらテレポートの能力を持つ少女にどこかへ連れ去られたようだ

 そこには数百名もの能力者がこちらを取り囲んでいた

 どうやらレジスタンスにはめられたみたいだ

 

「一斉にかかれ! この数なら殲滅だろうとやれるはずだ!」


 号令をかけるリーダーらしき男

 その号令が終わったと同時に里中が能力を発動させた

 たった一回の手の振り

 それで勝負はついた

 後ろに下がっていたサポート以外のレジスタンスはチリとなって消えた


「嘘、一瞬で…」


 テレポートの能力を持った少女は驚愕したが、すぐに次の行動を起こす

 失敗した場合は生き残った者を連れて逃げる手はずになっていたのだ

 少女がテレポートで生き残りを運ぶ

 しかし一歩遅かった

 既に生き残りにも殲滅の魔の手が迫っており、少女は自分を運ぶのが精いっぱいだった






「ここです」

 

 藤子が連れてきたのは廃墟が立ち並ぶ街だった


「なるほど、隠れ家っぽいですね」


 ルーナが子供らしい発言をする

 そしてすぐに探知を発動させた


「ん? この街、一人しか生体反応がないです。 それも、かなり弱弱しい‥‥。 大変です! 今にも死にそうです!」


「遅かったようですね」


 慌てるようにしてその生体反応のあった場所へと駆け付けると、壊れた扉からビルの中へと侵入した

 そこでいなみと同い年くらいの少女を発見した

 その姿はあまりにも無残だった

 下半身がちぎれたかのようになく、腸が飛び出ており、生きているのが不思議なほどだった


「うっ、あ、あぁ、お、ねが、い、殺し、て…。 くる、しい、の」


 息も絶え絶えにこちらに話しかける少女

 血はほぼ出尽くしたのか、血だまりはこれ以上増えてはいない

 

「すぐ治療します!」


 ルーナが駆け寄って再生の力を使う

 見る見るうちに下半身の骨が形成され、肉付き、服以外が元通りになった

 それを毛布で隠し、少女の方を見ると、驚愕の表情をしていた

 

「え? これ、一体どういうこと? もう痛くない。 あれだけ苦しかったのに」


 毛布を腰に巻いて立ち上がる少女


「ありがとう! あなたも能力者? 私は渡辺美智、テレポートの能力者よ」


「あなたはレジスタンスのかたですか? 私達はレジスタンスを助けに来たのですが」


「えぇ、でも、レジスタンスのみんなは、もう…」


 自分以外全員が死んだのは確認している

 慕っていた人も、尊敬していた人も、仲が悪かったがお互い認め合っていた人も、その全てがチリと消えた


「私一人、助かっても…。 もう、革命なんてできない」


「そんなことはないですよ。 このルーナさんがいれば必ず成功しますよ」


 そう声をかけたのは意外なことに藤子だった

 

「お、お前は! 皆さん逃げて! この男は政府の!」


「大丈夫ですよ。 私はこの子に負けて今は協力者です」


 藤子が指さすのは自分を救ってくれた異様な姿の少女だ

 

「え? あなたが藤子を? 私よりも小さいのに?」


 それからルーナ達のことを説明し、レジスタンス再建のために特殊能力者たちを味方に引き入れる算段を話した


「で、本当にこの人信用できるの?」


「はい、嘘はつかない人なので大丈夫です」


 設楽は深くうなずいた

 

「僕はまだ信用できてないけどね。 こいつはお母さんの敵だから」


 深い憎しみがいなみから伝わってくる


「そうですね。 私はいずれあなたに殺されてあげます。 しかし今は政府を、ひいてはこの世界の現状を変えることに集中しましょう」


 藤子はさも当たり前のように殺されることを承諾している

 そんな異様な会話に美智はまた驚いた


「それにしてもテレポート能力者にここで会えたのは幸運でした。 これで楽に特殊能力者たちのところまで行けそうです」


「それは無理よ。 あなたも知ってるでしょう? 国の施設には能力を無効化する装置があるの。 私のテレポートじゃ飛べないわよ」


 それを聞いてルーナ達はがっかりしたが、ただ一人藤子だけは大丈夫だと言った


「確かに装置はあります。 しかし特殊能力者たちの施設には見張りが数人しかいません。 役にたたない能力者ばかりなのでそれほど重要視されていないのです。 装置の作動圏外まではとべるでしょう?」


「えぇ、それは問題ないわ。 でも見張りの目をどうやってかいくぐるのよ」


「それについても問題ありません。 ルーナさん、あなた確かステルスが使えましたよね?」


「はい」


 藤子が言うには、この施設の見張りは能力のない一般兵が多く、察知や探知能力者が一人しかいないらしい

 しかもその能力者も施設外までは見通せない

 ルーナのステルスで消えれば施設に侵入しようが気づかれないのだそうだ

 

 作戦は決まり、ルーナが全員にステルスをかけると美智の能力でテレポートした

 

 ちなみに美智はちゃんとルーナの空間収納にしまわれていたパリケル用の下着と短パンを身に着けた

 


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