パリケルとシンガ
気が付くと手の中に光り輝く宝玉があった
これは一体何なのだろうか
そう思ったパリケルに玉から声がした
「久しぶりだな。 まさか核がお前に拾われるとは思わなかったぞ」
「誰だぜな? 俺様に話しかけるのは」
「お前の持ってる玉だよ。 俺だ。 シンガだ」
「はい?」
パリケルは時が止まったように固まった
思考も停止して心なしか白くなっていく
「おい、俺の話を聞けパリケル。 おい、固まるな。 とりあえず戻ってこい、おおおい!」
玉から呼びかけられるが、パリケルはそのまましばらく固まっていた
それから数分後、ようやく回復したパリケルは玉と話し始めた
「どういうことぜな? シンガ様そんなにコンパクトでしたっけ?」
「うむ、これには事情があってだな。 あの時お前の世界に来た二人組の異様な少女を覚えているか?」
少し考え込んで思い出す
「あぁ、あれはたしかに異様だったぜな。 まるで感情がない人形が感情を演じているかのような」
「うむ、その認識で間違ってはいない。 でだ、俺はそいつらにやられてこのざまというわけだ」
「はぁ、なるほど、バラバラになったというわけですね」
「恥ずかしながらな。 そこでだ。 お前にもかけら集めを手伝ってほしい」
「な! 俺様…。 私の故郷を滅ぼそうとしている神様の手伝いをしろと?」
「まぁそう言うな。 俺は別に滅ぼしたくてやっているわけではない。 仕方ないこともあるのだ。 神々の総意では俺には覆せん。 だが長引かせることはできる」
「長引くだけでは解決になってないぜな。 何か助かる道はないのですか?」
「ひとつ、あるにはある。 大神様の命令ならば兄上たちも聞いてくれるだろう」
「どうやってその大神様にやめさせるよう言うぜな?」
「それは俺にもわからん」
はっきりと言われ、パリケルはまた固まった
「まぁ案ずるな。 大神様はいつも世界を見ていてくださっている。 我らが行動を起こせば聞き入れてくれるかもしれぬ」
「なるほど、ということはまずはシンガ様を復活させなければいけませんね」
「あぁ、すまないがそうしてくれ。 必ず俺がお前の助けになってやると約束しよう」
そこで目が覚めた
何だ夢か
そう思ったが、手のひらに温かい何かが握られているのが分かった
そっと手を開くと、そこには輝く丸い宝玉があった
「シンガ様?」
声をかけてみるが反応はない
しかし、その宝玉は確実にシンガとわかる神聖さがあった
宝玉を丁寧に包み、お守りのように首から下げると、寝床から抜け出して服を着替えた
「おはようぜな」
ルーナ達に挨拶をし、用意されていた朝食をとってからこれからの作戦を聞いた
宝玉のことは話さない
シンガが最後に話さないで欲しいと言ったからだ
(シンガ様を助ければ必ず好転するはずぜな。 みんなのためにもかけらを集めて恩を売っておくぜな)
心の内でそう思い、藤子が立てる計画を頭に叩き込んだ
これから激戦があるはずだ
自分の力を役立てるために頭をフル回転させてこれから発明するものを考えた
(それにしても、あの根源を覗いてから俺様には今まで考えもつかなかったことがスラスラ出るようになったぜな。 ルーナ、神々、大神様、そしてあの異様な二人組、この世には俺様では理解の及ばないことがたくさんあるぜな。 でも、根源はその中でも最も分からないものだぜな。 シンガ様にもう少し話を聞いてみればよかったぜな)
今は話さなくなった首にぶら下がるシンガの宝玉を見、ため息をついた
(これから大変そうだぜな。 故郷に帰ったらゆっくりと何も考えずに休みたいぜな)
パリケルはこれから自分がどうなるかを知らない
既に自分の体が神格を帯び始めていることを知らない
それは、根源の気まぐれによるもの
根源の意志は大神すらつかめず、大神以外は意志があることすら知らなかった
話しを進めるための幕間です
短いし面白みもないです