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キュレスの研究1

「あああああもう! どうしてこうもうまくいかないのよ!」


 叫んでいるのはキュレスだ

 パリケルの研究を引き継ぎ、魂と転生、そして根源から力を得る方法を探していたのだが、パリケルはどうやら資料などを残すタイプではないらしく、部下の研究員に口頭で説明しただけみたいなのだ

 その口頭での説明も、まくし立てるような早口で、興奮気味に教えられたのでいまいち理解できていない者ばかりだった

 そのためか、研究は遅々として進んでおらず、キュレスも頭を抱えていた

 この研究が成功すれば、人は死ぬことなく新たな肉体を手に入れ、自由に自分の設計をできるようになる

 まさしく神の御業が可能になるのだ


「まぁ、普通こんなことできるわけないのよね。 パリケルさんっていったい何者なのかしら」


 調べれば調べるほど不可能だとしめされる研究

 人が神の域に達するための研究

 

「ああもう! イライラするわね! テントラ、息抜きにカフェでも行きましょうよ」


「いいですね。 ちょうどカフェモカなるものを飲んでみたいと思っていました」


 カフェはもともとこの世界にはない

 異世界から来たこの世界の勇者桃が伝えたのだ

 彼女自身が元いた世界のカフェが好きだったので再現してもらったのだ

 出されるコーヒーやケーキはもともとあったので、それを改良してカフェモカやカフェオレなどなども出せるようにしてもらった

 特にカフェモカは人気で、厳選されたカカオ豆から作られたチョコレートが非常によく合うのだ

 コーヒーに溶け込んだチョコレートが香りを引き立て、甘さを加えてくれる


「ところでグリドさんは?」


「あぁ、あの人ならこの世界の住人を鍛えてやるって張り切ってましたよ。 ここでも屈指の実力者であるジェインさんとすごく意気投合して二人で冒険者や兵士を鍛えてました。 あとですね。 これは極秘事項なんですけど、どうやらグリドさん、好きな人ができたみたいでしてね」


 テントラはニヤニヤと笑っている

 彼はこういう風に人をからかうのが好きなのだ

 

「え!? あの堅物グリドさんが!?」


「えぇ、笑えるでしょう? 相手はこの世界の相当な実力者で、確かセリアンさんと言いましたか」


「うっわ、すっごい美女じゃなかったあの人?」


「そうなんですよねー。 いやぁ、びっくりですよ。 長年一緒にいたリゼラスさんにも恋愛感情を抱かなかったあの人がですよ」


「まぁ、いいんじゃない? あのひといっつも切羽詰まってる感じだから、ちょっとはそういうことに目を向けてほしいもんだわ。 あと、お姉さまは私のものなんだからたとえグリドさんでも私が許さないわよ」


「あ、はぁ、そうですね」


 ちょっとひきつった笑みをキュレスに向けるテントラ

 

(ま、まぁ、恋愛は人それぞれだしね)


 キュレスの恋愛には触れないよう話題を変えた


「そういえば、この世界の勇者さんがキュレスさんに聞きたいことがあるって言ってましたよ。 時間があるときでいいそうです」


「あら、何かしら? あとで行ってみるわ」


 カフェまでの道のりを会話を楽しみながら歩き、店の扉をくぐる

 中に入ると、コーヒーの香ばしい香りや、ケーキの甘い香りが鼻をくすぐる

 席に案内されてメニューを見る

 

「私はケーキセット、ミルクセーキね」


「僕もそれを、あと飲み物はアイスカフェモカで」


 しばらくするとセットが運ばれてきた

 今日のケーキはごく一般的なショートケーキだ

 キュレスは子供の様に、というより年相応の笑顔を輝かせている

 嬉しそうにケーキを頬張るキュレス

 テントラもカフェモカを口に含んでもだえるように味わっていた


 店の扉が開く

 そこには勇者が立っていた


「あ、キュレスさん! ちょうどよかった。 話したいことがあったんです」


「キュレスでいいわよ。 あなたの方が年上なんだし。 で、何の用?」


「あ、あのね。 ルーナちゃんやパリケルちゃん、どんな様子だったのか聞きたくて…。 キュレスちゃんがこっちに来てからごたごたしててなかなか聞けなかったから」


「あぁ、そうね。 あの二人ね、恐ろしいほどに元気だったわよ。 私、操られてた時のことは覚えてないんだけど、なんかルーナちゃんの力? あの力だけははっきり覚えてるのよね。 神様すら超えるようなあの力。 あの子、一体何なのかしらね?」


「元気でしたか、よかった…」


「うん、元気元気、ところでパリケルさんってあなたたちといたときどんな感じだった?」


 キュレスも疑問をぶつけてみた

 純粋に気になった

 それに、彼女は大好きなリゼラスと戦っている

 操られていたとはいえ、普段は聞けないリゼラスの様子が聞けるかもしれない


「パリケルさんは、そうですね、発明をこよなく愛す根っからの研究者、みたいな感じでしたね。 ルーナちゃんは…。 どこか悲しそうな顔をいつもしていました。 きっと私じゃ分からないほどの苦しみを味わったんだと思います。 パリケルさんやアル、トロンさんは何か知ってるみたいですが…」


 ルーナはどういう経緯で今の状態になったのかは言っていない

 記憶を取り戻す際に記憶に関する映像を見たので彼女たちは知ってしまっただけだ

 

「で、リゼラスお姉さまはどうだったの? やっぱりお強かった?」


「私は戦ってないのでわからないですけど、今の私でも勝てそうにない感じはしましたね」


「あら、戦ってなかったの?」


 てっきりリゼラスと死闘を繰り広げたと思っていたが、ルーナに一撃で倒されてしまったらしい


「ほんとに、あの子何者なのかしら? この世界の神様もわかっておられないみたいだし」


「パリケルさんは何か知っているのでしょうか?」


「その可能性はあるわね。 まぁあの人にしても凄いとしか言いようがないわ。 私たちの世界でもあそこまでの技術? いえ、力なのかしらね? あんな力を持った人はいなかったわ。 まるで発明をする神様みたいな」


 それは的を射ている

 パリケルの力は神に近い

 まさしく現代に生まれつつある現人神になりつつあるのだった


「はぁ、またあとで資料を整理して実験して、あぁあ、考えるだけでも憂鬱だわ。 もう少し資料を残してくれてたらよかったんだけど。 今はヒントが何もない状態。 目標しかないゼロからスタートよ」


 食べ終わったキュレスは再び研究室へと戻って行った



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