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3-3

 森に分け入り、少し開けた場所に出た

 そこには壁面の壊れた小屋があり、中には農具などが入っていたが、もう何年も使われていないようだった

 

「ここなら雨風くらいはしのげそうですね」


 ルーナは少し前に使えるようになった空間収納から大き目の布と毛布を取り出した

 さらに掃除用具を取り出し、ほこりや蜘蛛の巣を払っていく

 小さな小屋だったので、1時間ほどで何とか住めるくらいにはなった


「私は何か食料がないか周りを見てくる。 動物でもいればいいのだがな」


 そう言ってリゼラスは外に出ていった


「俺様はこいつを改良するぜな。 あとその辺にある川で水でも汲んできてくれないか? 浄化装置を作ったからどんなに汚い水でもきれいな飲み水にできるはずぜな」


「じゃぁ私が水を汲んできますね」


 そう言ったところで森に入った時に感じた気配が近づいてくるのが分かった

 かなりの魔力を宿しているようで、それを隠すでもなく駄々洩れにこちらに迫ってきていた


「これは、まさか魔物? それもかなり強力な」


「いえ、悪い気配はしません。 でも、どこか怒りと悲しみを抱えているような…。 そんな気配がします」


 とりあえずパリケルとルーナの2人は戦闘態勢で外に飛び出した


 そして出会った


 雪のように真っ白な姿になぜか学校指定のような体操着姿、その背中からは蝶のように可憐な羽が生えている

 儚げで息をのむような美しさの少女

 その少女は困ったように眉をひそめている

 

「まさか人がいるなんて…。 でも、ここで止まるわけには」


 その少女はルーナに向くと


「ごめん、気絶しててもらうね」


 と言って襲い掛かって来た

 しかし、あっさりとルーナに腕を掴まれて無力化されてしまった


「うそ、なんでこんな女の子に?」


 切羽詰まったような少女は驚愕し、ルーナの顔を見ている


「いきなり何ですか? どうしたんです?」


「くそ! 放してよ! 僕は行かなきゃいけないところがあるんだ! お母さんの敵を取りに行くんだ!」


 暴れるが、ガッチリと掴まれて全く身動きが取れない

 

 ひとまず少女を落ち着かせると話を聞いた

 少女の名前は明神いなみと言い、超能力を覚醒させ、そのせいで政府に目をつけられて母親を殺されたのだという

 今はその復讐のために母親を撃った男を追っているのだそうだ

 

 ルーナは明神いなみという名前に聞き覚えがあった

 それは数日前に街のビジョンで流れたニュースで見た名前

 超能力者と覚醒し、政府が探していた少年の名前だ

 しかし今ここにいる明神いなみはあの時の映像で見た顔と全く違う

 

「ニュースで見た時と姿が違いますが、どういうことなのですか?」


「分からないんです。 普通超能力者はただ力を得るだけなんですけど、僕はなぜか繭になって羽化したんです。 それに、ただ筋力が高くなっているだけでどういった力が使えるのかも全く分かんないんです」


 その状態で復讐をしようとしていたことに驚いた

 ただ筋力が強いだけでは確実に無理だろう

 地球と似たこの世界には当然銃もある

 囲まれて撃たれればいくら普通の人間より力が強かろうが殺されて終わりだ


「この世界も相当な闇を抱えているのですね」


「全く、ろくなところがないぜな。 魔王だの欲望におぼれた政治家だの」


 パリケルはぶつくさと文句を言っている

 そこにリゼラスが大きな猪を抱えて戻って来た


「得物、獲れたぞ。 ん? その子は?」


 リゼラスにも事情を説明し、いなみの紹介をした


「ふむ、一人では確実に無理だな。 やめておいた方がいい」


「でも! 僕は、お母さんを…。 お母さんの敵を討ちたいんだ」


 話しを聞いてルーナは既に決めていた

 この世界の制度はおかしすぎる

 命令に忠実な超能力者は優遇されるが、反発する者は洗脳されたり処分されたり戦場の最前線へ派遣されたりと、非人道的な行為が行われている

 

 そもそもこの世界の超能力者は非常に少なかったのだが、30年前から爆発的に増え始め、今では世界総人口の実に1億分の1が超能力者となっていた

 そう聞けば少ないかと思われるが、この世界の総人口は約80億人、80人に一人が超能力者ということだ

 現在も増え続ける彼らは今では国家ごとの純粋な戦闘力となっており、強力な超能力者は一国を滅ぼせるほどだ

 この国にも当然強力な超能力者はおり、特にこの国で最も強いとされる者は世界的に見ても5本の指に入るほどである

 

「私たちも協力します。 この世界の在り様はおかしいです。 みんなどこか余裕が無くてびくびくしてます」


「この世界?」


 いなみはその言葉に疑問を覚えた


「はい、私たちは別世界から来ました」


 ルーナが変化を解除する

 全身に柔らかな毛が生え、頭から角が伸び、背中からは翼が開き、長い尾がシュルリと飛び出した


「す、すごい、ほんとに異世界の人なんだ」


 ルーナを見て少し驚いたが、今の自分も似たようなものなのでそこまでの驚きはなかった

 それに、彼女はどこか神々しさがあり、不思議と落ち着いた


「私たち、こう見えて強いんです。 きっと力になりますよ」


 まだ会ったばかりの相手だが、いなみは信頼した

 それは彼女の世間知らずなところも手伝ったが、それ以上にルーナの人柄は信頼できるほどによかったからだ

 

 ただ、ルーナには思うところがあった

 イナミから感じる気配、魔力を多量に纏っているのは分かった

 しかしそれだけではない

 彼女から神力も感じるのだ

 一体それが何を意味するのかは分からない

 しかし彼女には何かある

 そう思った 

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