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エルフの女騎士

 その日、いつものように早朝訓練をしていると、長らく待ち続けていた吉報が彼女にもたらされた

 自らが率いる騎士団の訓練を早々に終え、破壊神の封印された城を監視している部下からの報告を受ける

 

とうとう復活したか、ずっと待っていたぞ破壊神

貴様がねむりについてからというもの私は復讐心のみで強くなった

今では帝国最強といわれるほどにな


 彼女は不敵に笑う

 彼女の暮らすドラグリオ帝国首都ドライセラから封印の城があるエイストラハイムまでは数日かかる距離だが、その前にいろいろと準備を整える

 調査も続行させ、エイストラハイムでの情報も仕入れる

 

 それから二週間ほどたち、破壊神がエイストラハイムにて幸せそうに暮らしているという一報を受けた

 彼女は歯をきしませながら怒りを剥き出しにする

 目に宿る狂気に満ちた復讐心は周囲の部下たちを震え上がらせた


「すぐに向かうぞ、一人たりとも、逃すな、殺しつくせ」


 それだけ静かに部下に伝える

 集めた騎士の数は2000人ほどで、エイストラハイムという小国を滅ぼすには十分な数だった

 

 騎士団がドラグリオ帝国を発ってから数日、エイストラハイムの目の前に来ていた

 一気に攻め込めるが見つからない距離を保ちながら調査につかせた者たちの情報を待つ

 数分後、普通の旅人のような格好をした調査隊が戻って来た


「リゼラス団長!報告いたします!」

「破壊神は現在近くの花畑にて一人で遊んでいる模様です」

「エイストラハイムの住人達は特に変わった様子もなく普段通りです」


「破壊神が花畑だと?」

「何を考えているんだ?」


 しかしそんなことはどうでもいいことで、リゼラスと呼ばれた彼女はただ破壊神を殺せればいいし、それに手を貸すエイストラハイムも滅ぼしたい

 リゼラスは鎧の胸に手を置き、帝国の信仰する神へと祈りをささげる

 願わくば、この手で破壊神を殺せるように、願わくば、破壊神に殺された同胞や家族の魂が味方してくれるよう

 

「行くぞ!全団員突撃!!」


 騎士たちは雄たけびを上げると一気にエイストラハイムへと攻め込んだ

 エイストラハイムは中立国のため軍と呼べるようなものはない

 防衛団というものはあるが、あくまで自衛のための戦力であるため、これほどの騎士を相手にすることはできない

 

 あっという間だった

 ものの数十分ほどで国は落ち、残すは防衛団も所属する結界の守り手たちのみ

 ある程度歯ごたえのある者もいたが数の暴力に押され、一人、また一人と殺されていった

 守り手がいる建物の中には少しは名の知れた魔術師のニニア、学者のドルレリッサ、槍術士ザスティンなどもいた

 彼女ら三人を殺すために騎士も多数やられはしたが、それも問題にならない

 抑え込まれ、拘束された

 そして最後に出てきたのは代表のクリアとそのお付きのミシュハだった

 

 すでに居場所がわかってはいたが彼女らが破壊神をかばうのを確認するため居場所を聞く

 ザスティンがふざけるように封印は解けていないといったことを口ぶいたため殺した

 何のためらいもなく

 

「そこの二人は邪魔だな」

「殺せ」


 その一言でニニアとドルレリッサも頸を斬られて血を大量に噴出させながら死体となる


 ミシュハは何事かを叫んでいたが聞く耳など持ち合わせていない

 そのままクリアやミシュハと何かを話した気がしたがあまり覚えてはいない

 気が付くとミシュハの死体にすがって泣く少女の姿が見えた


「子供?なぜ子供が」

「情報ではこいつに子供はいないはずだが?」


 確かにミシュハに子供はいない

 破壊神が少女の姿をしていることも聞いてはいたが、今見ている少女の姿がかつての自分と重なったため少し動揺してしまった


「まぁいい、こいつも破壊神信者の一人だろう」

「殺す」


 冷酷に切り替えた

 それに、母親の元へ送るほうがこの娘にとっても救いになるはずだ

 そう自らに言い聞かせるように納得させる

 

 剣を振り上げ、少女に振り下ろした


 が、その刃は届くことなく激しい電磁場のようなものにはじかれた


 その光景を見て思い出す

 破壊神に復讐するため情報を集めていた頃、大昔の書物に乗っていた破壊神らしき化け物の話

 それは突如この世界に現れ、世界中に大打撃を与えたものの、異世界より召喚された勇者に滅せられたというものだった

 その描写は自分が見た破壊神と重なる

 まさしくこの伝承の化け物が破壊神なのだと確信した

 伝承にはもう一つ気になる話があった

 化け物は次元渡りという力を使い、あまたの世界を滅ぼしたと自らで語ったらしい

 幸いその技術はこの世界でも研究されており、勇者召喚もその技術の一つだった


 次元渡りの伝承とまったく同じ現象が目の前で起こっている


 そして、少女は消えた


「必ず追いつめて殺す!無様に殺す!」

「次元渡りが貴様だけの力だと思うなよ!」

「追いついて糞尿を垂れ流すまで恐怖と痛みをその体に与えて殺してやる!!」


 そう叫ぶと、すぐに騎士達を連れて帝国へ戻った

 このドラグリオ帝国こそ次元渡りの技術を最も発達させている国で、そのため彼女も帝国騎士となった

 今では騎士団長ともなり、破壊神という危険な存在を倒すために次元渡りの使用許可もすぐに下りた


 先のエイストラハイムでの戦闘の傷をいやすのもそこそこに破壊神の余波をたどり

 リゼラスは別世界へと渡った


続くよ

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