神々の捜索1
雨の降る街を傘もささず、フードを目深にかぶった一人の少女が歩いている
彼女はキョロキョロとあたりをうかがい、何かを探しているように見えた
やがて輝く石のようなものを見つけた
「ふぅ、ようやく見つけたぜ。 おい馬鹿兄貴、何やってんだよあんた」
フードを取ってその石に向かって語り掛ける
可愛らしい顔立ちとは裏腹に、口調はまるで粗野な男の様だった
「全く、あんたともあろう者がここまでやられるなんて、一体どんな相手なんだ?」
少女の周りをこの世界の住人と思われる人達が歩いているが、独り言を言う少女に訝しげな顔を向ける者は誰一人としていない
まるでその少女などいないかのように
「とりあえず集めてやるけど、再生はソウレ姉貴に任せるぜ?」
少女の名前は剛力の女神ミナキ
エイシャの姉で、アズリアやシンガの妹
見た目は可憐な少女で、普段はタンクトップスタイルの服にハーフパンツ、動きやすさを重視した服装である
拳には常にナックルグローブをはめており、その拳のみで敵を打ち砕く神々の中でも戦闘に特化した女神だ
そんな彼女は現在兄姉たちの命でシンガのかけらを集めていた
シンガは集合と散在の二人を消滅させるために彼らの元へ向かったが、返り討ちに会い体をバラバラにされ、様々な世界にばらまかれてしまった
ミナキはそのかけらを集め始め、ようやくひとつ目を見つけたところだった
かけらをポケットにしまうと、欠片の飛び散った別世界へと転移するために要請を出そうと通信用の装置を起動した
そのとき、街で悲鳴が上がる
突如として破壊されるビル群に、逃げ惑う人々
見上げると、まるで恐竜のような風貌のビルより巨大な化け物が街を破壊し始めていた
どこから現れたのか、それは人間を掴み、口に運んでいた
グチャグチャと不気味な咀嚼音がし、飲み下す化け物
この世界では怪獣と呼ばれるモノだった
「なんだよ。 今から連絡取ろうって時に。 しゃぁねぇな。 うるさいから倒しておいてやるよ」
めんどくさそうに言うが、それは彼女の本質ではない
ミナキは心優しく、できうる限り人間を守りたいと思っていた
あの時、妹であるエイシャが恋した相手を消滅させたときも、できることなら助けたかった
エイシャのことは大好きだったし、彼女の恋を陰ながら応援してもいた
しかし神と人間の恋は厳禁
それが彼女を思いとどめさせた
「一撃で砕いてやるよ!」
人蹴りで怪獣の頭上まで飛び上がると、拳を振り上げて頭を砕きつぶした
周囲の人々は何が起こったのか分かっていないが、怪獣が倒されたことに歓喜していた
「ふぅ、ひとまずは安心か? この世界はこんな化け物ばっか出てくるのか? こりゃ勇者かヒーローが必要かもしれんな」
怪獣を倒したミナキは転移要請をし、さらにこの世界にヒーローを誕生させることを提案した
提案は受諾され、やがてこのせかいに怪獣と戦うためのヒーローが生まれるだろう
ミナキは満足そうにうなずき、転移していった
シンガのかけらはまだ一つ、先は長そうだ
今回短いです
暑さでばてております