表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/384

2-32

「よかったんでしょうか? 全てを話さなくて」


「あぁ、彼らの罪もすべて私が背負う。 一人洗脳が解けておきながら彼らを止めることができなかった私の責任だ」


 話しているのは七英のことだ

 彼らは操られていたとはいえ、罪のない人間を幾人も殺し、世界を一つ消滅させた

 それが勇者アストに操られ、指示された結果であっても、罪は消えない

 リゼラスは彼らにそのことを告げることなくすべて背負いこむつもりだ

 ルーナはそれを理解し、それ以上は何も言わなかった


 まゆかは相変わらず目を覚まさない

 苦しそうな顔のまま眠りについている

 パリケルがまゆかの症状を4号に備わった装置で治療を施しながら様子を見ている

 健康状態には問題はなさそうだが、彼女が目覚めない理由がわからなかった


 まゆか救出から数日が経過している

 パリケルの放った偵察機にもルーナの監視の目にも久慈川と真藤の姿は発見できなかった

 まるでこの世界から消えてしまったかのように…


「もしかして…」


 ルーナはその可能性を二人に聞いてみた


「なるほど、確かにな。 既に転移装置は完成していたのかもしれん。 パリケル、痕跡を探すような装置を作ることは可能か?」


「任せるぜな。 簡単ぜな」


 早速装置の作成に取り掛かるパリケル

 数時間であっという間に作り上げてしまった

 

「説明しよう! これは異世界の扉を開いた痕跡を探し、さらにその追跡までこなすというすんばらしい装置だぜな!」


 得意げに説明するパリケル

 装置を起動し、痕跡を探し始めた

 ピコーンと音を立てる装置


「む、これは…。 ふむふむなるほど」


 パリケル一人で納得している


「どうしたんですか?」


「うむ、扉が見つかったぜな」


「本当ですか!?」


「ここを見るぜな。 ほら、まゆかが捕まっていた工場から少し離れた場所、ここに大きな反応があるぜな。 恐らくここに扉があるはずぜな」


 意外なほどあっさりと見つかった

 それも潜伏している場所からほど近い

 なぜかすでに兵は引きあげている

 恐らく久慈川の指示なのだろう

 彼はこの世界共通の敵、つまりルーナ達を得たことで急速に台頭していき、この世界のリーダーとなっていた

 その陰では別世界の魔王真藤という、ひと際強大な武力を持っていたこともあったが…

 真藤という名前すら本当なのかは分からない

 パリケル曰く、最後に見た姿は魔の雰囲気を漂わせる異様な姿だったらしい

 確かに人間の姿だが、明らかに人とは異なる異様性を秘めており、恐怖を感じたという


「危うく漏らすところだったぜな」


 冗談ではなく真面目な顔で言うパリケル

 神と対峙してすら恐れなかったパリケルがそれほどまでに恐れていた異世界の魔王

 なぜこのようなところにいるのかは分からないが、危険なのは理解できた


「とにかく、早く追わないと何をしでかすかわからないぜな」


 すぐに工場裏の反応があった場所へと行くと、そこは特に兵に守られるでもなくあけっぴろげにされていた

 

「少し前に調べたときには何もなかったはず。 ということは最近になってここに来たということか」


「みたいですね」


 3人の前には異次元の扉が真っ黒な口を広げて開いていた

 

「私が転移するときに使う力に似ている気がします。 でも、ここからは魔力が一切感じれません。 もしかしたら科学で?」


「科学? なんだそれは?」


「はい、魔法の代わりに発展した力です」


「科学、俺様も興味があったぜな」


「パリケルさんがやってることも科学に近いと思いますよ?」


「ほ? そうなんぜな? なら俺様の研究は魔導科学と言ったところぜな!」


 どこか嬉し気なパリケル

 異世界の扉を調べ、安全性を確認すると3人は一気に飛び込んだ


 眼を開くと、まるで上下左右が逆になったかのような感覚に襲われた

 飛んでいるのかも落ちているのかもわからない

 ここには重力が存在しなかった


「うへぇ、ヤバイヤバイ、目が回るぜな~」


 くるくると回転しながらパリケルが飛んでいった

 その横でリゼラスがすでにグロッキーになっておとなしく漂っている

 ルーナは翼を広げると、姿勢を制御しながら二人を掴んだ

 そのまま光のさす方角を目指す


 光を抜けると、真っ暗な空間が広がっていた

 段々と目が慣れてくると、そこはどこかの部屋だということが分かった

 今までいた場所とは違い、古い城のような建物

 

「ふむ、久慈川たちの姿は見えんな」


「とりあえず外に出てみるぜな」


 3人は部屋から出ると外への道を探した

 長い廊下を進み、階段を見つけ、上へと向かい、やがて大きな扉を見つけた

 そこから空気の流れがある


「開きます」


 ルーナが大扉を開き切ると、眩しい光が差し込んだ

 一瞬目がくらむが、直ぐに慣れ、外の様子が見える

 

 そこは、あまりにも凄惨なありさまだった

 

 街は燃え上がり、そこかしこに無残な死体が転がっている

 あまりにもひどい殺され方をした死体に思わず吐き気が込み上げる3人

 3人はその死体を集め、丁寧に埋葬した

 久慈川と真藤を探し、辺りを捜索するが、二人の姿はなかった

 破壊された街を進み、その破壊の痕跡をたどる

 その先に待つ二人を倒すために


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ