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倒れている兵たちを叩き起こして手掛かりを聞いてみたが、彼らはただこの拠点を守れと言われただけで何も教えられてはいなかった
手づまりだ
手がかりを探し続けたが、何もわからなかった
「くそ! 一体あの子はどこへ連れていかれたんだ」
悔しがるリゼラス
ひとまず兵が集まり始めたのでルーナは二人を連れて飛んだ
向かったのは東都から離れた無人島、完全に人がいないこの島は、猿型の魔物たちが支配しているようだ
簡易の家を建てた後、ルーナは監視の力を発動させた
目をつむり、目の前にモニターのようなものを出現させると、世界中に監視の目を張り巡らせた
少しでも手掛かりを探してみることにしたのだ
数日間かけて世界中を探索
膨大な量の知識は演算の力で処理する
その結果、ほんの小さな手掛かりだが、まゆかが持っていた羽クマのぬいぐるみが落ちているのを見つけた
このぬいぐるみ、リゼラスが手作りしたもので、この世界に一点しかない羽の生えたクマのぬいぐるみだ
それが鹿山という県の街角に落ちていたのだ
ここにいた人もほとんどが消えており、生き残りは皆小坂へと避難していた
「見つけましたよリゼラスさん! ほらこれ、見てください!」
リゼラスが画面をのぞき込む
「これは、私が作ったぬいぐるみ? ということはまゆかはこの辺りにいるということか?」
「まだわかりませんが、可能性はあります」
「じゃぁ俺様が偵察を送るぜな。 隅々まで調べれるから少し待つぜな」
パリケルが4号のスイッチを押すと、胴体部から蜘蛛のような超小型のロボットがあふれ出してきた
「すごいだろ? 俺様が苦心して作った最新鋭の偵察用マシーンだぜな。 蜘蛛にしか見えないよう設計してあるから全く気にされることはないはずだぜな」
何故蜘蛛?と二人は思ったが、どこにでもいてどこにでも入り込めるのでこれなら大丈夫だろうとも思った
まさに蜘蛛の子を散らすように走り始める小型ロボット
背中から羽を出すと、空を飛んで行ってしまった
それから約数時間で鹿山まで到着したようだ
4号のモニターに映像が映し出される
そこには誰もいないはずの街が映し出されていた
熱源探知システムを起動させると、建物内にいくつかの反応があった
それもところどころにである
明らかに誰かが隠れ住んでいるとわかった
「これはあたりかもしれないぜな」
蜘蛛たちを街中に散らすとまゆかを探して動き出した
建物内にはやはり人間がいた
そこにいたのは東都でも見た研究者たちだ
「やはりここのようだな。 まゆかは一体どこだ?」
モニターに映る映像をルーナが処理していく
その中の一つに小さな建物が映った
工場のようで、服を作っていたようだ
そこの熱源が異様に多い
蜘蛛を侵入させて中を調べてみることにした
散らしていた蜘蛛を数体集結させて侵入させる
中を進ませていくと、研究者たちが見えた
彼らは奥の方へ向かっており、地下へと繋がる階段へ降りていった
蜘蛛もそこを降りて進む
たどり着いたのは東都の研究施設と同じような機器が立ち並ぶ場所だった
合成生物のホルマリン漬けもそこにあり、以前より増えているようだ
そこにあの時まゆかが入っていた装置と同じ装置がある
「もしや、またこの装置の中に入れられているのか?」
装置の中を覗き込むと、やはりその中にまゆかはいた
以前よりもさらに合成度が増しているようで、うろこが顔、腕、胸元にまで侵食し、耳には羽毛が生え、うさぎの様だった尾はするりと伸びていた
苦しんでいるのか、培養液のような液体の中でもがいている
体中に付けられた管がそのたびに揺れる
「早く助けないと!」
ルーナは二人とうなずきあい、すぐに支度をして飛び去った
目指すはまゆかが囚われている鹿山県
「待っててね、まゆかちゃん」
ルーナは決意を胸に空を舞った